暖かな日差しの下︑木々の花が色づく季節になりました︒正門の紅梅がみなさんの晴れの日を彩っているようです︒第60期のみなさん︑この度はご卒業おめでとうございます︒卒業生のみなさんは︑私の学年が5年生になった時の新入生であり︑パートナー学年であるわけですが︑こうして前に立つとあれから5年も経ったのかと時の流れが不思議に思われます︒ さて︑今日のように年長者が後輩の節目に言葉を贈る際︑たいてい﹁様々なことに挑戦してみなさい﹂﹁どんな遠回りをしても全て自分のためになる﹂﹁これから先︑どんどん自由になるけれど︑その自由にはいつも責任がついてくる﹂というようなことがよく言われがちだと思います︒実際に5年前︑みなさんのように小学校卒業を迎えようとしていた私自身︑そのような言葉を周りから多くいただきました︒正直なところ︑大人はそろいもそろって似たようなことしか言えないのかと飽きてしまうほどでした︒しかし︑この立場になって今一度考えると︑ああ︑あれはこういうことだったんだなあと大人はなぜ同じことを言うのか︑それは年月を重ねないと実感できない大事なことがあることを私たちに伝えようとして下さっていたのだなあと思います︒ 例えば小学生の頃の私は︑自分のことを目立つのが嫌いで︑人をまとめるタイプではなく︑日陰でひっそりとしていたいタイプだと思っていました︒しかし︑中学︑高校生活の中で私以外の人が委員会などを動かしているのを見ていると﹁私のほうがもっとうまくできるのに﹂﹁私が代わりに委員になりたい﹂などと思っている自分に気がつきました︒きっと︑それまでのように周りに言われて淡々とやっていたのではきっと気がつかなかったことだと思います︒ 馴染みのある小学校を離れ︑中学校で人間関係を築き直すことに不安な人も多いかと思います︒しかし︑環境が変化すると︑それまで気づかなかった自分自身に出会うことがあります︒その機会を増やすために新しいことにどんどん挑戦してください︒もしかすると︑色々なことを試しているうちに自分が何をしたかったのか︑これからどうなるのかわからなくなってしまうことがあるかもしれません︒でも︑むしろそれはチャンスだと思ってください︒それまで当たり前に見えていた居場所や目標︑夢を見失ってから︑自分が本当に一番大事にしたいことが見えるようになるのは決して珍しい話ではないです︒今まで選んで歩いてきた道が︑大きくうねっていることはあっても途切れることはありません︒そしてまた︑自分の人生がどんな形をしているかは今の私たちが知り得ることではなく︑後から振り返ってみて初めて見ることができるものだと思います︒ この先どのような経験を積んでいくかは︑みなさん一人ひとり自分次第です︒自分次第だと言う自由には責任がついてきますが︑これは自分が納得していれば︑みなさんがどうあろうとするかは他人にどう言われようが好きに決めて良いということです︒桐朋小の卒業生は良くも悪くも﹁出る杭﹂だなと思います︒周りに合わせることが良いと思っている人たちからは疎まれたり︑心ない言葉を投げられたりすることもあるかと思います︒でもどうかそんな周囲に負けずに自分自身の声を大事にしてください︒桐朋生は︑いつまでも﹁よい子︑つよい子︑桐朋っ子﹂︒これから女子校に通う方︑男子校に通う方︑そのほかにも様々だとは思いますが︑この小学校で過ごした日々は︑勉強︑部活︑委員会で必ず力になります︒先輩は皆でみなさんと会える日を楽しみにしていると思います︒最後にもう一度︑本日はご卒業本当におめでとうございます︒﹁桐朋っ子は出る杭﹂〜パートナー学年の卒業式によせて〜大久保ゆりかさん︵55期︶●卒業メッセージ39
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