2021.11.22

何が育っているのか考える [Ⅱー282]

毎日しぜんひろばで活動する子どもたち。子どもに何が育っているのだろうか。

目に見えるもの、すぐに表れるものとして、何かの力を獲得しているということを言うのは難しいのかもしれない。それから、1つの活動を継続して行っているのではないため、獲得しているものをはかることの難しさを感じる。

私は次のように考え続けている。子どもたちが活き活きと命を輝かせている場面に出あい、私もワクワクする。ある日、しぜんひろばの排水溝が落ち葉などで詰まり、水が溢れそうになった時に、「たいへんだ」と知らせに来てくれ、行ってみると必死になって水を掻き出している子どもたちがいた。その後も、夢中になって排水溝や池の掃除をする子どもの様子から、ひろばを大切にしてくれていることを感じた。しぜんひろばでの活動を通して、子どもたちの興味、関心、好奇心が育まれ、大切な場所となっていると思う。

育っているものをいくつかあげてみる。(多様性や協働などは別の機会に)考え続けてきたいくつかのことを。

感性(からだ全体で感じて判断。情報を前頭葉に伝える前に瞬時に判断。創造力の源)がある。それから、太陽の暖かさ、風の匂いを直に感じる。寒い時期に氷の冷たさを感じるなどの五感。また自由な活動、あそびでの想像力の開発。からだの機能としては、心臓や肺など内臓を丈夫にする、体温調節や血圧のコントロール、ストレスに耐える能力の向上。自律神経の働き、ホルモン分泌の能力の向上。これらは、からだを調整する働きをする。暑さや寒さをからだが覚えることで、暑いと汗をかくというからだの調整機能が働くようになる。スポーツでは、体力の中の特化したものを鍛えるが、あそびはからだ全体を育む。筋力、心肺機能、持続、敏捷、バランス感覚などが育まれている。

※「子どものからだと心・連絡会議」(代表 日体大野井真吾教授)へ調査に学ぶ。また、『汐見先生の素敵な子育て「新体力の基本は遊びです」』など著書からも学ぶ。

脳の発達について。前頭葉の発達が促される。前頭葉は、感情やそのコントロールを司るところで、あそびや活動での興奮と抑制を繰り返し経験することで発達が促される。故正木健雄先生、現在は野井教授(前述)らの「子どものからだと心・連絡会議」の全国調査結果に学ぶ。

神経系の発達について。しぜんひろばの中で、夢中になり、繰り返し、上下動やでこぼこの道を走りまわるなどのたのしい活動は、神経系の発達をすすめる。文科省や研究者が取り上げる「スキャモンの発達、発育曲線」によれば、「神経系統は生まれてから5歳頃までに 80%の成長を遂げ、12歳でほぼ100%になり」、「この時期は、神経系の発達の著しい年代で、さまざまな神経回路が形成されていく大切な過程」である。神経系は、1度その経路が出来上がるとなかなか消えない。「この時期に神経回路へ刺激を与え、その回路を張り巡らせるために多種多様な動きを経験させることは、とても大切なこと」と言われている。

山内農園さんでの柿もぎ。何年もかけて何種類もの柿を園児の背で収穫できるように育てたそうです。

最後に、現代を「曖昧なこと、無駄に見えることに耐えられない社会」として捉える時に、〔曖昧さをものともしない柔らかい存在〕に育っているのではないか(川田学さんからの学び)。夢中になるなど、瞬間瞬間に生きていてよかったと実感する機会をもつことが出来ているのではないか。

付記。保育、教育は、「いのちの営み」であり、その価値は決して数値化できるものではないとも考えています。

「世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を」(レイチェル・カーソン)と願います。

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