子どもの遊びを考える [Ⅱー355]
『子どもの遊びを考える 「いいこと思いついた!」から見えてくること』(佐伯 胖編著、北大路書房、2023年)を読んだことをきっかけに考えてみたことです。
本書の帯に、「「遊び=自発的な活動」というのは本当か?!」と書かれています。私は、「遊び=自発的な活動」で「=」とは捉えていないものの、遊びの意味として「自発的な活動」があると捉えています。遊びについて、「子どもの自己決定の機会に出会い、実現する喜びを味わう。これはまさに「生きる力」を身につけていくプロセス」と考えて大切にしています。
「=」と捉えていないのは、「自発的な活動」の他に、遊びには授かったいのちを活き活きと輝かせる、いまを夢中で生きる、「何もしない」(ブラブラする権利)ことなどがあると捉えているからです。
本書を読み、あらためて遊びについての理解を深めることができてたのしくなりました。本書において矢野勇樹(本書「第1部「いいこと思いついた!」の理論的背景」を執筆)は、子どもの「いいこと思いついた」場面をきっかけに、「遊び=自発的な活動」と捉えられない見方を示してくれます。
矢野によれば、「それは、その人が生きている現在の状況や文脈、これまでの歴史など、当人を取り巻く関係の網目の総体が少しずつ変容することによって主体に起こる変化の結果、「いいこと思いつく」という現象が浮かび上がってくることと言えるでしょう。いいこと思いつく「わたし」というのは、中動態における主体です。周囲の状況と関係しながら存在する主体であり、周囲の事物との関係があるがゆえに、「コレ」とは指し示せない何かから影響を受け、いいこと思いついてしまう存在なのです。そして、思いついたその瞬間には、その思いつく出来事を実行したくなっている。」118~119ページ と書かれていました。
この一文のなかにも、「中動態」「関係」など大切な見方が示されていますが、この結論に至るまでに、「行為の出発点を私のなかにある意思だと見なす考え」、「遊びを意思と解釈」、「能動―受動の二項対立」など、何回も私自身の見方を問い直されました。とってもおもしろい本でした。
今後も子どもの「遊び」の捉えを豊かにしていきたいと思い、学びます。
*幼稚園教育要領解説には、「自発的な活動としての遊びにおいて,幼児は心身全体を働かせ,様々な体験を通して心身の調和のとれた全体的な発達の基礎を築いていくのである。その意味で,自発的な活動としての遊びは,幼児期特有の学習なのである。したがって,幼稚園における教育は,遊びを通しての指導を中心に行うことが重要である。」などと書かれています。