2023.10.5

ロマナ・ロマニーシンさんとアンドリー・レシヴさんの来校➃ [Ⅱ-363]

9月22日、『戦争が町にやってくる』(ロマナ・ロマニーシン、アンドリー・レシヴ作、金原瑞人訳、ブロンズ新社、2022年)に関わる人たちが桐朋小学校に来てくださり、6年生との授業をつくってくださいました。ありがとうございました。

参加者は、授業を通していろいろなことを感じ、考えました。

「今回、ロマナさん、アンドリーさんが説明してくれて、僕が一番心に残ったのは、『戦争中でも日々の日常は大事にしたい』という言葉です。/僕は最初、『何でそんなに笑顔でいられるのだろう?』と疑問に思いました。でも2人の話を聞いていると、『確かにいつも通りにしている方がいいな』と感じました。」

「私が一番心に残った言葉は、『あなたたちにできる事は1つ。勉強すること』です。確かに勉強をしていれば、戦争が始まっても、反対の声をあげることが出来ると思ったからです。」(どちらも、前出コラム[Ⅱー361]から)

 東京新聞10月4日夕刊より引用

今回は、読売新聞、東京新聞の記事を紹介させていただきます。

9月26日、読売新聞朝刊 平和な日常の価値 絵本で訴え ウクライナ作家2人来日

今月22日、桐朋小学校(東京都調布市)の平和教育の授業で、6年生の児童61人を前に2人は語りかけた。/授業中、繰り返し使ったのが「日常」という言葉だ。ウクライナ西部の町、リビウで空襲警報におびえながら暮らす日々を語る一方、アトリエのバルコニーで、アイスを手にほほえむ2人の写真を児童に見せた。

ロマナさんは、「戦争が始まってから、平和な日常の大切さを知りました。空襲警報が鳴るまでの間を楽しめるように、家族や友人たちと過ごす大切な時間を作るようになった」と説明した。アンドリーさんは、「『本当に戦争中なのか』と思うかもしれないが、笑顔で頑張らないといけない」と語った。

2人の講演を聞いた児童からは、「ウクライナの子どもはどんな生活をしているの」「私たちに出来ることはなんですか」と、次々と質問が寄せられた。/アンドリーさんが「あなたたちはきっと、日本のリーダーになって、世界から戦争をなくしてくれると思う。しっかり勉強して」と呼びかけると、子どもたちは真剣な表情でうなずいた。Kさん(12)*は、「戦争中でも、楽しみを見つけたり、日常を大切にしたりしているのはすてきだと思った」と話していた。*新聞では、本名が掲載されています。

『戦争が町にやってくる』は、2014年にロシアがウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合した際、「戦争について親子で話すきっかけにしてほしい」と制作した。平和な町に突然やってきた<戦争>を、住民たちが力を合わせて追い出し、復興に取り組む物語だ。/素朴なタッチで描かれた登場人物たちは愛らしく、戦争の無慈悲さを際立たせる。ただ、昨年2月にロシアによる侵略が始まった当初は、何げなく描いた猫の表情が恐怖にゆがんでいたという。ロマナさんは「戦争が繰り返される怒りやむなしさが、絵に出ていた」と振り返る。

今年5月には、『旅するわたしたち On the Move』(同、広松由希子訳)が刊行された。海や山、宇宙まで、何万年もかけて移動しながら、新しい世界を開いてきた<旅>を描く。/「どんなにつらくても、動き続けることで、光のあるところへ行けるかもしれない」。遠く離れた日本へ旅してきた2人は、飛行機から太平洋の大海原が見えたことがうれしかったという。

10月4日、東京新聞夕刊 創作体験からのぞく戦争と平和

絵 子どもたちに安らぎ 

ウクライナ在住の絵本作家ロマナ・ロマニーシンさん(39)とアンドリー・レシヴさん(39)夫妻が9月、東京都内の小学校で講演し、戦時下の日常や平和の大切さを伝えた。「絵本は子どもたちに安らぎを与えてくれる」と強調した2人は日本滞在中、親子連れらに絵を描いてもらうワークショップにも参加。「アートという武器を手に、戦争を終わりに近づけたい」と願いを込めた。

 

ウクライナの絵本作家夫妻訴え 都内

「戦争中でも、野菜や花を育て、なるべく普通の生活を過ごしています。笑顔で頑張っていかないと」

9月22日、桐朋小学校(調布市)の6年生約60人に案ドリーさんが語りかけた。ウクライナ西部のリビウで創作を続ける2人。この日は、現地の生活や街の様子、破壊されたホテルなどの写真を映し出し、1枚ずつ説明。「今も、ミサイルの警報が鳴ると、街の人たちはシェルターに避難しています」と伝えた。

2人は、日本語版が昨年刊行された絵本「戦争が町にやってくる」(ブロンズ新社)の著者。絵本は2015年、ウクライナ南部・クリミア自治共和国へのロシアの侵攻後に制作した。

「日常の大切さ」

「平和な日常の大切さは、戦争が始まって、初めて分かった」とロマナさん。桐朋小の子どもに「しっかりと勉強して、この国のリーダーになって、世界から戦争をなくして」と呼びかけた。授業を受けたyさん(11)*は「日本も平和をかみしめて、生活していかなきゃダメだと思った」と話した。*新聞では、本名が掲載されています。

ロマナさんによると、ウクライナでは今、お気に入りの絵本を心の支えにしている子どもが多いという。「絵本を触り、ページをめくることで気持ちを落ち着かせ、自分の存在を感じ取っているのかもしれません」

2人は翌23日、渋谷区内で開かれたワークショップに参加。親子連れら約75人とウクライナから避難してきた3人が大きな画用紙にそれぞれ行ってみたい場所を描いた。ウクライナから避難中のアリサ・ボイチャクさん(5)は色とりどりのペンでハートマークや動物の絵を描いて「楽しかった」と笑顔を見せた。

黒一色の世界

2人がウクライナで開いたワークショップでは、戦争で甚大な被害を受けた東部マリウポリから避難してきた少年が黒一色の絵を描き、「僕の世界は今、この色です。他の色はない」と話したという。

日本で2人のイベントを主催した国際アートセラピー色彩心理協会の末永蒼生代表理事(79)は「絵には苦しい時に、その感情をはき出せる力がある。戦争の犠牲はいつも子ども。戦争は最大の児童虐待だ」と指摘。アンドリーさんは「日本の皆さんに、ウクライナの現状を直接話すことができて良かった」と話した。

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