なんとかして戦争や紛争を終わらせたい [Ⅱー369]
10月、6年生と広島へ行き、戦争の被害と加害の歴史を学びました。平和資料館では、ぼろぼろの衣服や持ち物、炭化したご飯、ひしゃげたビンや時計、あまりに酷い状況でシャッターを切ることができなかったという写真などを見ました。「助けて」「水をちょうだい」「苦しい」などの呻き、「助けてあげられなくてごめんなさい」などの悲しみを受けとめました。爆心地すぐ側のお寺では、お墓の石のすべすべしたところとざらざらしたところに触れました。ざらざらは、高熱で一瞬にして溶け、固まったものでした。現地で、戦争の悲惨さをあらためて感じました。
すべてを破壊し、生命を奪い、不幸にする戦争はしてはいけないと思います。
13歳(中学1年)で被爆し、ご両親を亡くした笠岡貞江さんより、当時の様子を聞きました。大久野島で、山内正之さんより、国際条約違反の毒ガスを製造し、使用した加害の歴史を聞きました。お2人は、戦争の事実とその悲惨さから「2度と戦争をしてはいけない」と語りました。笠岡さんは、亡くなったお母さんの子ども(自身やごきょうだいのこと)を思う気持ちを思い出すと話が止まってしまうと言っていました。こうした苦しみを、もう誰にも味わせたくない、と。
10月、「ガザで少なくとも2千人の子どもが死亡した。負傷者も多数に上る」、「空爆にあっても身元が分かるよう、自分や子どもの手に全員の名前を書いた」などの新聞記事。泣き叫ぶ子どもの姿、子どもの遺体を抱く家族の姿、破壊された町が何度も映されます。それでもイスラエル、ガザ地区で命が奪われ続けています。このような〈世界〉は間違っています。おかしい。ヒロシマで戦争による被害と加害を学び、2度と戦争をしてはいけないと学んでいる私たちは、この現実を生きています。
9月22日、ウクライナから絵本作家のロマナさん、アンドリーさんが桐朋小に来て、なぜ絵本をつくったのか、現在のウクライナについて話をしてくれました(*)。2人は、ウクライナでの戦争を体験し、親子で戦争を考え話し合える本『戦争が町にやってくる』をつくりました。絵本を6年生と読みました。「心に残ったことは『残念ですが、すべてがなおるわけではありません』という文です。戦争が終わって町の風景がよみがえっても、心の傷は治らないという事なんだな」など、感想を共有し、さらに戦争を考えています。
お2人から直接話を聞いて、6年生はいろいろなことを感じ、考えました。「作品をかくとき辛くなかったですか」と聞くと、「悲しかったり、心が痛くなったことはよくありました。友だちもこの戦争で命を落としました」「命はもとに戻せない」と話してくれ た。お2人との出あいから、さらに考えます。
*授業は、読売、朝日、東京、毎日小学生新聞などに掲載されました。
私たちは、平和を願う声を交わし合い、どうすればいいのかを話し合いましょう。この事態をおかしいと思い、その解決を考え、声をあげましょう。間違っていることに対して、声をあげ、いろいろな人と話し合っていきましょう。命を、平和な〈世界〉を取り戻すために。
最後に、平和な〈世界〉をつくろうと声をあげる高校生、大学生のことを。長野の高校教員の小川幸司は、高校生について「危機のなかで生きることに慣れてしまい、危機をとらえる感性が擦り減っている大人よりも、危機の克服のための歴史認識(「出来事のメシア的停止」)をとらえる鋭敏さがある」と言います。高校生や大学生が声をあげて平和をつくる、その取り組みに励まされます。私たち大人はどうすべきかを問われています。