2024.9.3

ICT教育について、なぜさまざまな国で見直しが起きてきたのか [Ⅱ-400]

台風が、各地で大雨、河川の氾濫、土砂崩れなどの大きな被害をもたらしました。心配、不安な気持ちで、辛く苦しい生活をされている方がたくさんおられることを考えての2学期のはじまりです。

皆さん、2学期もどうぞよろしくお願いします。

              左 職員室前の花壇 右 理工室の水槽。生きものを子どもたちが大事に育てています。

夏に学んだことからです。「作文と教育」2024年8・9月号(日本作文の会編、新読書社)に、「世界で広がる、『ICT教育の見直し』-先進各国の失敗経験と課題から学ぶ」(大阪教育文化センター事務局次長 田中康寛)が書かれており、それを読んで考えさせられました。

この間の私の問題関心の一つは、「GIGAスクール構想」による「一人一台端末使用」の活用で、そのことが子どもの書きことばの獲得、発達にどうかかわっているのかを知りたい、これまで端末でない場合と同じなのか違うのか、どう影響しているのかなどを捉えたいと願って探究をすすめています。

 

以下、「作文と教育」誌に田中さんが書かれたものからの引用を中心としますが、田中さんの原稿は4ページで、田中さんが論じた背景にある、調査、論文などを確かめる必要があります。それは今後の課題です。

文科省は、「端末の利活用状況調査」を実施しています。その内容は、「授業の活用率」、「家庭への持ち帰り率」、「教師と児童のやりとり率」、「児童同士のやりとり率」などを調査し、都道府県別に比較して、その「率」をあげるように通知したといいます。

海外では、モバイルデバイスの「学校での使用禁止」がひろがっていることを指摘されています。その理由として、「授業への集中、対面での交わり、健康、心理的、社会的に悪影響、依存性、中毒性」をあげられていました。禁止した国(地域)、時期は、

〇フランス2018年9月、〇イタリア2022年12月

〇フィンランド2023年6月、〇イギリス同年10月教育省・新指針、〇スウェーデン同年12月新政権協定で決定

〇オランダ2024年1月、〇オーストラリア2024年新学期から全ての州で

〇アメリカ、スペイン、ポルトガル等では各州で実施

とありました。*「ドイツでは、科学者が、デジタル化の一時停止を呼びかけ」「24年現在ドイツでは、連邦政府と16州の各教育大臣との間で激しい交渉が続いています。」

2023年7月、国連「ユネスコ」報告の研究成果として、ICT教育について分析「2023年グローバル教育モニタリングレポート」を発表。「400ページを超える報告書は、世界各国の利用実態と問題点、課題を明らかにするとともに、「具体的な証拠」をもとに各国政府の「適切な管理と規制の欠如に対して、警鐘をならしています。その中で重大なのは、「デジタルテクノロジーは変化したが、教育を変革したわけではない」「教育におけるデジタルテクノロジーの付加価値についての確固ため証拠はほとんどない」と指摘」。「国際学力調査『PISA』によって提供されるような大規模な国際評価データでは、過度なICT使用と生徒の成績の間に負の関連があることを示唆している。教育テクノロジーは、不適切または過度である場合には有害な影響を及ぼし得る」などが指摘されているそうです。

*田中さんは「歴史地理教育」2024年6月号に「いま、世界で問い直される「教育DX」を執筆され、参照しました。

田中さんは、スウェーデンや他の国々を取り上げて、端末の使用禁止をみていきます。スウェーデンでは、2010年から一人一台デジタル端末を導入し、2014年に実現したそうです。紙の教科書からデジタル教材や学習ツールに移行されました。そして、現在はデジタルからアナログへとなった(「小中学校でのスマートフォンの使用が禁止され、完全にモバイルフリーにすることが合意」)そうです。教科書は印刷された教材と定義し、教科書への生徒の法的権利が明確化。紙の教科書の配布などとありました。(日本では『デジタル教科書 今春本格導入 「学び」は変わる?』朝日新聞「時時刻刻」の記事)

変更の背景には、PISA、PIRLなどの国際学力調査で、スウェーデンの生徒の数学や読解力などの学力が急激に低下。デジタル化、スクリーンの数が増え、本の数を減らし…。などがあると言います。そして、デジタルデバイスの幼児教育への導入を義務付けた教育庁の決定を撤回、6歳以下の子どもに対するデジタル学習を完全に撤廃したとも。「デジタルメディアが生徒に利益をもたらすのではなく、害を及ぼすことに疑いの余地はない。インターネットで資料を検索する生徒は従来の教科書よりも明らかに劣る」、「教室内でテクノロジーを使用する最も良い方法を見つけるためにはさらなる調査が必要」などと書かれていました。

「スウェーデン国民会議、教育法改正案の説明」も紹介されています。それは、「蓄積された科学的権利が経験データと実証済みの経験は、人間関係能力、注意力、集中力、読み書き計算能力などの基本的なスキルは、アナログ活動を通じて最もよく習得できることを示しています。したがって、生徒が紙と鉛筆を使って勉強できるようにすること、そして何よりも、教科書やスタッフのいる学校図書館にアクセスできることが重要です。つまり、低年齢層では紙の本に重点を置くべきであり、デジタル学習ツールは、明確な科学的裏付と文書化された教育的付加価値に基づいて選択的に行われることを条件に、年齢が上がるにつれてのみ使用でき、良い効果を生み出すことができます。デジタル学習ツールは、生徒の学習を促進し、阻害しない年齢になるまで、教育に導入しないことが重要です。したがって、デジタル学習ツールの使用は慎重に、注意深く行う必要があります。」

今後も各国の情報をつかんで、私たちはどうするのかを検討していきたいと思います。そして、自分の課題について学び、まとめます。

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