「みんな」がいて「わたし」になる [Ⅱ‐446]
2025年11月、創立70周年を機に、初等部ブックレット№6『「みんな」がいて「わたし」になる』(桐朋幼稚園 編)を刊行しました。2018年度よりはじめた3歳児保育、3年保育の実践を中心にまとめました。1学年の人数を40名から26名にすることで、子ども同士が関係をつくり、ともに育ちあうことを充実させました。また3年保育による異年齢での子どもの育ち合いを育んできました。

目次
第1章 園生活のはじまり 応えてもらえる自分を信じる
第2章 3歳児① ~泥・水・砂・光・風 遊びの世界~
第3章 3歳児② ~経験を通して学んでいる3歳児~
第4章 4歳児① 「自分の」から「自分たちの」へ ~「秘密の種」の栽培活動から~
第5章 4歳児② からだ・こころ・あたまをつかって
第6章 5歳児① 信頼をもとに、開花する自主性 ~年長児の『映画作りから』~
第7章 5歳児② みんなでつくる表現活動
第8章 異年齢まじわり 「ある日の遊び 異年齢の交わりで広がる・生まれる」
第9章 言葉を通じて心豊かに
第10章 創造性を育てる教育
第11章 文化を手渡す
第12章 幼小のつながり① 家のワタシと家のボク
第13章 幼小のつながり② 幼稚園と小学校でともに育ち合う
第14章 「手のことば」から始まる学び
共同研究者である今川恭子さん(本書第10章)と久保健太さん(本書第14章)には、たくさんのことを教えていただき、学んできました。そのうえ、本書で執筆までいただきました。ありがとうございました。
本書は、桐朋幼稚園、桐朋小学校の子どもたち、保護者の皆さん、保育にかかわる皆さんによって保育がすすめられ、それをもとに生まれたものです。皆さん、ありがとうございました。

本のタイトル「「みんな」がいて「わたし」になる」には、次の思いを込めました。
今はできなくても、がんばれば、いつかできる。
自ずとそう思える人になっていくことを願っている。
できる自分も、できない自分も、
受け入れて応えてくれる子どもや大人がいる。
周りの人や自分を信じて、
「わたし」はありのままに「わたし」でいられる。
「みんな」と共に生活するなかでいろいろなことに出会い、
心や身体から「する」や「しない」が湧き出てくる。
自分で「する・しない」を決めることは、
わたしの「意思」を育んでいく。
誰かに期待されてできることはたくさんある。
けれど「する・しない」をわたしが決めたなら、
たとえ「できない」になったとしても、
それも「わたし」として引き受ける。
わたしの意思は、みんなのなかで、
つながり、ひろがり、ふくらんでいく。
自分ができないことを誰かに頼ったり、誰かができないことを
自分が助けたり、それは「応えてくれる」と信じているから、
自ずと「お互いさま」になる。
そうやって「わたし」は「わたしたち」にもなって、
励まし合い、「いつか」へ向かって、繰り返し、やり直し、
挑戦し、願いを叶えていく。

桐朋学園では、「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない」(1947年制定教育基本法第二条)という精神をもち教育実践を創造してきました。
桐朋幼稚園、桐朋小学校(初等部)は、1955年に創設しました。当初から、一人ひとりの子どもを大切に「子どもを原点に」おいて保育、教育をすすめています。子どもの姿を軸に、「私たちの保育、教育はこれでよいのか」と問い、お互いの授業や活動を学び合っています。
私たちは「日々新しい教育をつくり出す試みを重ねていく。『創造』、『改革』、『試行』であるべき」(生江義男元校園長)という精神を大切にこれからも歩んでいきます。