2019.6.19

先生のあゆみから、私たちの教育活動で大切にしたいことを考える [Ⅱ-195]

 初等部から短期大学部までの全体歓送迎会がありました。3月まで勤務された先生の話をさせていただきました。K先生は、「桐朋学園の教育活動に学びつつ、私も力いっぱい教育実践を行なってみたい」と願い、担任として、また国語教育や平和学習などに力を注いでこられました。K先生のあゆみから、私たちの教育活動で大切にしたいことを考えてみました。

 K先生は、紙芝居、たくさんの絵本の読み聞かせを学級のホームルーム、昼食後、読書の時間などに位置づけ、子どもたちにいろいろな文学作品を出合わせてきました。大切にされたのは、「文学に触れることで、心の中に様々な人間を住まわせ、そのことで子どもの内面がより深く、確かに、豊かになっていく」ことでした。数多くの実践、作品が本校の財産となっています。(桐朋小学校は、「子どもの発達にあわせた教育課程の自主編成教育」を大切に行います。私たち自身が芸術や科学の成果を大切に学び、実践をつくり出していきます。)その実践の根底に、「読むたのしさをすべての子に」という願いが込められ、友だちや社会に目をひらく、人間っておもしろい、人間の内面を深くとらえるなどが大切にされています。

 先生の特色ある教育実践から。子どもたちが教室に持ち込むものを大切に、生き物や作物をだいじに育ててきました。昨年の実践「アゲハチョウが本物のさなぎになってる」では、子ども一人ひとりにさなぎを見せます。子どもは、「うわあすごい」「角みたいにとがってきている」と驚いた感じで見たそうです。黄緑色が濃いさなぎが、色が少しずつ変わり、羽化していくのを楽しみにします。

 それから約一週間後、「さなぎからアゲハチョウがかえります」。籠のなかで静かに羽を乾かしているのを発見。(先生は、まだ飛ばないでと願いながら)一人ひとりの子どもたちの目の前に持って行き、よ〜く見せます。子どもたちは、「うわあ。かわいい」「きれ〜い」などと、怖がらずよ〜く見ていました。その時、「あっ おしっこした」と発見した子どもたち。おしりからおしっこをしました。K先生は、さなぎからかえったチョウは、からだの水分を出すことを伝えます。「チョウのおしりってどこ」「あっ、おしりの穴があった」と、子どもたちは近くでよく見ていたそうです。4時間目の途中、前に置いていた虫かごのチョウの変化を見つけて、「あっちょうが飛んだ」と気づいた子が教えてくれました。早速テラスで放してあげます。みんな、窓辺から身体を乗り出し、しぜんひろばの方に飛び立っていくチョウを手を振って見送りました。

 K先生は、毎年毎年たくさんの作物を子どもと育ててきました。2018年度は、サツマイモ、ミニトマト、きゅうり、レタス、ブロッコリーの苗などを植えました。 ピーマンを収穫した時には、簡単にいためて、できたてを子どもたちと味わいます。周りの子たちのおいしい発言にひかれて、苦手な子も小さいものをぱくっと食べ、「おいしい」と心を動かしていました。つくり、育て、食べることをたくさん行いました。(真に豊かな生活とは何かを考え、教科、総合などで実践します。)

 K先生は、子ども一人ひとりを大切にし、その子その子の表現をもとに学級づくりをされてきました。(子どもはかけがえのない存在です。一人ひとりの子を主人公とした学校でありたいと考えます。)一人の子の作品を紹介します。

 さむがり

 あのね、せんせい。Y(作者)と一緒に勉強している時、Yのじいじは、Yが寒くないのに、「寒い」って言います。でも年寄りは寒がりだけど、若い人は寒くないんだよ。K先生は、Yたちと勉強をしている時、寒くないでしょ。K先生は若いから寒くないんだとYは思うよ。

 いつまでも若々しく、これからもいろいろと教えてほしいです。桐朋だけにとどまらず、日本の子どもたちと保育、教育のため、発信してほしいです。36年間、いつもお世話になり、ありがとうございました。 

 K先生とともに初等部をつくってこられたE先生にもたいへん感謝しています。E先生についてあらためて書きたいと思います。

 写真は、上・3年生がかいこを育てています 中・6月19日より机、椅子が新しくなりました。「きれい」「椅子の座り心地がいい」など、子どもたちの声。下・6月18日、たくさんの方が机、椅子の搬入をしてくださいました。お世話になりました。

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