11月20日、創立記念日に [Ⅱ-208]
桐朋学園は、1941年に創設された山水中学校、山水高等女学校を引き継ぎました。戦後、関係者の懸命の努力で東京文理科大学、東京高等師範学校の指導と協力を得て、1947年、教育基本法、学校教育法の施行と同時に再発足した学校です。「桐朋」の「桐」は、両校の校章に由来します。「桐朋学園がこの教員養成の総本山ともいうべき学校・大学とともに戦後の新しい教育のあり方を探究していきたい、との希望がそこにこめられていたと思われます」と、中野光先生は『初等部誕生物語』に書かれていました。現在も目の前にいる子どもとその未来を大切に、「新しい教育のあり方を探究していきたい」という思いを引き継いで園、学校づくりをすすめています。
1年生 どんぐりで遊ぶ・学ぶ(総合)
桐朋学園の初代理事長、校長は、東京文理科大学学長の務台理作氏で、戦後の教育改革で教育基本法を生み出した教育刷新委員会の中心メンバーでした。「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。」(1947年制定教育基本法第2条)を教育実践の場で大切にし、教育基本法の精神である「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長するという、ヒューマニズムに立つ「人間教育」」を桐朋の教育理念の基本に据えました。私たちはその精神を大切にして、子ども一人ひとりを主人公とする園、学校をめざして取り組んでいます。
5歳児 多摩動物公園遠足・自分たちが行きたい場所へ
このような保育、教育の実現を目指し、社会にひろげていきたいと考えますが、困難な現実があります。たとえば、2017年度、児童相談所で対応した児童虐待件数は過去最高の13万3778件(前年度より約1万1千件増)です。子どもの生きづらさがひろがっています。2016年度虐待による死亡は77人です。2019年1月には、千葉県小学4年生栗原心愛さん(10歳)の虐待死がありました。「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり起きているときにけられたりたたかれたりされています。先生どうにかできませんか。」という心愛さんの悲痛なことばを受けとりながら、周りの大人が力を合わせてその命を救うことができませんでした。滋賀県立大学福井雅英教授は、「子どもの言葉はどのようなプリズムを通って屈折したものであれ、その子の光です。その子の発する光はいのちそのものです。子どもの言葉は心の響きだと受け止めなければならないと改めて思いました。」と述べています。あらためて、子どもの表現をどう捉えるかが個の尊厳を守ることにつながると考えました。
6年生 インフルエンサー中嶋涼子さん(卒業生)をお招きして。「車椅子に乗ってみる」「押してみる」(トピックス)
子どもの権利条約を批准してから25年がたちましたが、柱の〈生きる権利〉、〈育つ権利〉、〈守られる権利〉、〈参加する権利〉が尊重される社会づくりはまだまだです。子どもは自分に関係あることについて聴きとられ、意見が言え、社会の主人公となりゆくために、子ども時代から経験し学んでいきます。一人ひとりが感情や意思を持った人間として尊重され、可能性が最大限に伸ばされるようにしていかなくてはなりません。その努力をしていきたいと思います。