2020.1.30

命について考えていこう ―始業式で読んだ作文 [Ⅱ-218]

  赤ちゃんが生まれる

          小4 浅野 ゆうき

 「ゆう、早よう、手つだって。」

テレビを見ているとお母さんがあわてて、よびました。

「なに。」

とふしぎに思いながら行きました。

 台所の近くで、犬のスーザンが赤ちゃんを産みかけていました。スーザンは、足のとっても短くて、どうの長い、ダックスフンドです。だから、おなかの大きいスーザンは、足がおなかに、めりこんだように見えます。

 スーザンは、血をぽたぽた落としていました。わたしは、赤ちゃんは、頭から出てくると思っていたら、足から出てきたので、びっくりしました。さか子で、おしりから先に出てきました。お母さんが、どうを持ってひっぱるので、(そんなにがいにひっぱって、だいじょうぶやろうか。)と不安に思いました。何回かひっぱって、やっとすうっと出てきました。(よかったあ。)とほっとしました。

 タオルでくるんで、へそのおを、糸でくくって、はさみで、のこった先を切りました。タオルでこすって、あたためました。

「クウ、クウ。」

と赤ちゃんが、お母さんをさがしながら、泣いています。目は、閉じたままです。心配に思ったスーザンは、赤ちゃんをなめに行きました。

 次に三十分ほどたって、また、赤ちゃんが生まれそうです。

 次の赤ちゃんもさか子でした。スーザンは、少し力を入れるけど、なかなか赤ちゃんは、出ません。とうとう、りきむのを、止めてしまいました。ぐっと力を入れて、ひっぱるけど、出てきません。頭がひっかかったままです。体をひっぱるので、(頭がのく。)と思って、こわかったです。スーザンは、ぐったりして、ふうっと、力をぬいていて、ぜんぜんりきまないのでこまりました。(このままじゃ死ぬ。どうしよう。)と思いました。

「お母さん、だいじょうぶでねえ。」

と泣きそうな声で聞きました。

「わからん。ぜんぜんりきもうとせんき。」

と、こまった声で言いました。わたしは、

「スーザン、りきんで、お願い、りきんで。」

と何度も言いました。ときどき、クーとりきむけど、すぐに、止めてしまいます。

 ずっとひっぱりました。

 やっとすうっと出た時は、

「やったあ。」

(スーザンよかったねえ。長い時間、ずっとがまんしたねえ。)とうれしく思って喜びました。お母さんも、

「がんばったねえ。がんばったねえ。」

とうれしそうに言っていました。

 でも様子がおかしいです。ふつう、だかれると、小さな声で、クウクウ泣くけど、ぜんぜん泣きません。それに、ぐたあとしています。それは、長い間おなかの中にいたからです。お母さんが、

「ゆう、タオルであたためて。」

と、あわてて、おこったように言いました。かた手で、だいて、かた手で、タオルを持ってあたためます。

 それでもだめでした。

「いやあ、死なんとってえ。」

と泣きそうな声で言いました。すると、お母さんが、子犬の鼻に口をあてて、つまっている水を、

「ズーズー。」

とすい出しました。

(うわあ。犬の鼻に口をつけて、病気にならないのかなあ。気持ち悪い。)と思いましたが、お母さんが必死なので、(すごい、がんばれ!!)と心の中で、さけんでいました。

 一分ほどすい出すと、子犬が、

「クックッ。」

と声を出しました。箱に入れると、さっきのがうそみたいに、バタバタしていました。わたしは、死にかかった子犬を、ここまで元気にしたお母さんのことを(犬のお医者さんみたいだなあ)と思いました。お母さんは、とってもうれしそうに、にっこりしていました。

 それからまた、赤ちゃんが生まれそうです。もうだいたいなれたのか、あまり思いっきりひっぱらなくても、出てくるようになりました。

 全部で四ひき生まれました。赤ちゃんは、元気で、よく、スーザンのおっぱいを、ちゅばちゅばすっています。

 二、三日たつと、子犬は、一回り大きくなりました。みんなとちがって、体の小さな子犬は、犬用のほにゅうびんで、だいて飲ませました。ほにゅうびんのちくびのところを、自分の力ですわせます。こつのわかってきた子犬は、それをくり返し飲みました。

 ねる時は、みんな重なって、ぎゅうぎゅうづめで、ねていました。そんなところを見ると、本当に、みんな死なないでよかったと思いました。あの、死にかかっていた子犬も、他の子犬と同じぐらいの大きさに、育ちました。歩く時は、ばたばたと、おもいっきり、足をうごかして、今は、どの子犬だったかも、わからないほど大きくなりました。

 

 始業式で読んだ作文(『子どもと読みたい100の児童詩』村山士郎編著より引用)です。新年、みなさんと命の大切さを考え合いたいと思い、選びました。ぼくは、特にスーザンとお母さんの行動に感動しました。

 かけがえのない命を大切にする学級、学校、社会にしたいと思います。

(写真上 おもちつきの様子。写真中左 広島よりいただいてきた被爆アオギリⅡ世の植樹。写真中右 同窓会のみなさんによる枝垂れ桜の植樹。写真下 1月29日の園庭の様子)

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