桐朋小だより

2020.4.25

全学年

一人でいながら 

朝の散歩に出かけてみました。

ある幼稚園の傍をとおりかかると、大きないちょうの樹がありました。やわらかい黄緑色の若葉がうまれたての青空に手を伸ばしているようです。この前まで桜の花が咲き、そして風に舞っていたのに、季節は新緑へと移りつつあるのだなあと見上げました。大きな樹を見上げる、その視点からの風景にどこか懐かしさを覚えます。

どこからなんだろう?散歩しながらあれこれ心も散歩しはじめます。
見上げる樹、いちょうの樹。

そうだ。
私は、子どもの頃ぼおーと一人時間を過ごすのが好きでした。自宅の玄関前には大きないちょうの樹があって、そこでよく過ごしていました。地面やいちょうの樹の表面にいるアリをムギュ~と力を込めて押してみる。そうすると、アリの動きが速くなる。(ようにその当時の私には思えた。)それが不思議で何度も何度も同じことを繰り返していたことを思い出します。また、夏の日、夕方。畳の上に寝転がり、蚊取り線香の煙の行方をみつめながら、自分の指でその煙の行く先や形を変え、その緩やかな変化の様子に心奪われていたことも。
 なんてことのない、本当になんてことのない 思い出の一片。なんてことないのに、大人になってもそんな「一片」が、心の中にどこかあたたかい温度を伴ってちゃんと残っています。なぜなんだろう?
誰にも邪魔されず、一人の時間を見守ってもらえる安心感。一人でいながら、何もせず考えていないようにみえながら、実はあれこれ感じ考えていたのかなあ。

見上げる樹、いちょうの樹。桐朋小学校にも低学年校舎玄関近く、水道のあたりにもありますね。そのあたりで泥団子を無心に作っている子どもたちの姿を毎年見つけます。一人で無心に。その安心感。

子どもたちの 一人のぼおとしながら過ごす時間が、いつか大人になったときに、なにかの支えや温かみとなりますように。

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