主体的な意思、意欲を育もう [Ⅱ-252]
しぜんひろば
水がある。坂がある。花がある。葉がある。土管がある。虫がいる。貝がある。…幼稚園の人たちにとっても大切な場所にしていきたい。ずっとずっと…。
渡ってみたくなる
池にある石。小さな石に移り、反対側に渡りたい。両方から渡る。(あっ、どうしよう)じっと見合う。引き返す(人もいる)。途中のやや広い石で交差する(人が増える)。お互いに落ちないように工夫する。うまく渡れない時には手をつく。失敗して落ちることも。小学校の人たちは、素早く上手に渡っていく。5歳の人も小学生みたいに渡ろうとする。ゆっくり、慎重に渡る人もいる。慣れてきて、トントンとリズムよく渡ることができる。
池にある広い島。小さな石を渡れるようになったら、(大きな島にも行けるんじゃない。)(行ってみたいな。)大きな島までは、途中に一つ石があり、距離が長くて島に渡るには勇気がいる。渡れなくて、どんなふうにするか見ている人もいる。小学生は、真ん中の石を使わないで、大きな島までひとっとびでとんでしまう人もいる。(すごい!)
乗ってみたくなる
一本綱手製ブランコ。乗る場所の高さは、多くの5歳の人には高い。一本綱でゆらゆらしていて乗りづらい。自分で一本の綱を持ち、飛び上がって両足ではさむのも難しい。友だちが乗るところを支えてもらって乗れる人もいる。だんだんと、ジャンプして自分でできる。
乗ったら、友だちに押してと言う。ゆっくり、おもいっきり、綱がかかっている木にぶつからないように。揺れると怖いと感じる人もいる。友だちと押し合った後で、「園長先生、押して!」ということもあり、「絶対に手を放しちゃだめだぞ。」と伝え、おもいきり押す。
《おもしろそう》。それは、人間の「根源的探究心」。
しぜんひろばは、時間をたっぷりかけ、身をもって挑戦できる場である。人と交わることができる。憧れを育てる。自分を認め、友だちを認めることができる場である。
- DreamLog
2021年2月、初等部同窓会寄付1)と桐朋学園女子部門特別教育基金2)から、想像(夢)を実現(形)にするLogをいただく。
「先生、一緒に遊ぼう。」「お家に入って。」と誘われた。家に入ると、「お兄ちゃんになって。」「ここは台所。ここは冷蔵庫。」と案内され、おいしいご飯をいただく。お父さんに(なった人に)「もう時間よ。会社に行ってらっしゃい。」犬(の人)には、「お散歩に行くよ。」と連れ出す。まわりを一周して帰ってきたら「ご飯よ。」そして「お休みの時間。」しばらくして突然の揺れ。「地震だ。みんな気をつけて。」「柱を持ってね。」ということや、次の日、「木を植えたい。(その様子を見ていた人が)じゃあ私が持っている。ちょっと待ってて。スコップをとってくる。」など協働しての植栽が始まる。隣のテーブルではいろいろな食べ物がつくられ、並べられている。
3歳の人たちの世界に誘ってもらい、その人なりに友だちに声をかけて入る工夫や仲間とうまくいかなさ(どうしてうまくいかないのかな?)などを知る。ああ、この人とこの人はこんな関わりをしているんだという発見もあった。
5歳児が創り、一週間使ってみんなで遊ぶ。週末解体し、次の週新築する。5分の1サイズのK-Logで設計し組み立て遊ぶ。何度も何度も作って崩していろんな形を試し、遊びこもう。
-主体的な意思、意欲を育もう―
自分のしたいことがしっかりあり、それを主張できる子へ育ってほしい。没頭する体験が多いほど、興味、関心がひろがり、主体性が育つと考える。
主体的な意志、意欲が育まれるのは、自分のやりたいことができる、自分の願い、意思が尊重された経験を持ち、あるがままの自分が認められたということを自身が持てたとき。「親和的承認」(愛情に基づく無条件の承認-山竹伸二氏より学ぶ)を実感できる経験を持てたとき。また、感情や思考が理解され、共感されたとき。自分が認められることで他者も認めることができるようになる。
こどもの幸せを考えると、自由にのびのびと生きてほしいし、そうした生き方の中で、周囲の人たちにも認められ、自分らしさ、かけがえのなさ(価値)を感じられる人生を送ってほしい。
1)初等部同窓会は、会員相互の親睦と母校である桐朋幼稚園、桐朋小学校の発展に協力することを目的に創立30周年にあたる1985年に設立。毎年寄付を受け、大型積木やDreamLogなど購入。
2)桐朋学園女子部門特別教育基金は、桐朋学園女子部門各学校(桐朋幼稚園・桐朋小学校・桐朋女子中学校・桐朋女子高等学校・桐朋学園芸術短期大学)の教育活動を援助することを目的として設立。