新年度を迎えて [Ⅱ-257]
新年度を迎えて ―桐朋学園で、私たちが大切にしてきたことー
1941年、第一山水中学校(国立)、山水高等女学校(仙川)(「教育こそ永遠である」山下亀三郎氏のご寄付をもとに)として学園が開設。2021年、創立80周年を迎えました。あらためて、学園の存在意義と今後を<1947年制定教育基本法と桐朋>という視点から考えたいと思います。
桐朋学園として第2の出発は、1947年教育基本法を原点としています。
一人ひとりの人間とその個性を大事にし、その人その人がもっているよさや特徴が十分に発揮されるような教育を行おうとしてきました。桐朋学園の教育理念は、「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長する、ヒューマニズムに立つ人間教育」です。
そこには、戦争の反省と戦後の願いが込められています。教育勅語にもとづく教育の反省、画一的に上からの統制を行い、従わないものには「非国民」という烙印を押す自由のない教育の反省のうえに立ち、一人ひとりの人間を大事にしよう、その人その人の個性を尊重する教育を行おう。教育への国家の介入、統制はできるだけなくし、教育にあたる一人ひとりが責任と良心にもとづいて自由に教えることができる、学ぶものも学びたいものを自由に学ぶことができる、という考えにもとづくものでした。
1947年教育基本法前文には、「われわれは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきである。われわれは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」と書かれています。私たちが願う現在と未来を、保育、教育において実現する、そのような保育、教育のなかみを桐朋学園は試行錯誤しながら行うことを決意したのです。
現在の日本は、教育の自由や独立性が心配な状況が見られます。また、「男女平等 日本120位/156カ国」「ミャンマーでは多くの市民(子どもの命が奪われている)が国軍側の武力行使で殺されている」など問題があります。そして、「深刻な地球緊急事態」(地球温暖化、生態系破壊、パンデミックへの対応など)に直面し、「地球の安定性と自己回復できる経路」(「グローバル・コモンズの責任ある管理」が必要)へ大きく舵を切らなくてはならない「人類史上の岐路」にいると考えます。
桐朋学園の原点は、時代がかわっても大切なことを示しています。私たちが生きている時代がどんな時代なのか、どういう課題があるのか考え話し合い、学園の原点を踏まえ、未来を創っていきたい。
※「教育基本法と桐朋教育」は、『学ぶこと、未来へ』小柳敏志前理事長の著書に学ぶ。「グローバル・コモンズの責任ある管理」は、『世界』2021年5月石井菜穂子論文、j・ロックストローム論文などに学ぶ。
写真はすべて桐朋幼稚園(4月12日)