2021.4.30

日本の子どもを考えて、目の前の子を理解したい [Ⅱ-259]

2020年2月27日、全国一律休校要請が出され、3月から休校とし、再開後も時差、分散登校などを続けた。未知のコロナ感染が拡がり、入院、死者が増え、治療法が確定せず、ワクチンの開発の目途が立たない中だった。 

この間、休校時を振り返った。休校を伝えた時、子どもの声を聴いて考え合いたかった。休校に入るまでの準備期間を持ちたかった。国連子どもの権利条約には、「子どもたちの意見が聴かれかつ考慮される機会を提供すること」「意思決定のプロセスにおいて子どもの意見が聞かれ、かつ、考慮される機会を設けること、子どもは現に起きていることを理解すべきであるし、世界的流行への対応としてなされる決定に参加していると実感できるべきである」という「参加の権利」がある。大切にしなくてはいけないと思う。

2020年5月、日本小児科学会は「休校による感染拡大防止効果は乏しい一方で、子どもの心身に及ぼすデメリットが大きい」などの報告をした。10月、「新型コロナ・民間臨時調査会」がコロナへの政府の対応を検証した報告書を発表した。その中に、専門家会議関係者の「子どもは感染源にほとんどなっていない。疫学的にはほとんど意味がなかった」などの証言も記されている。

2021年、文科省より「子供の健やかな学びの保障や心身への影響の観点から」、「一律に臨時休業を求めるのではなく、地域の感染状況に応じた感染防止策の徹底を要請」されている。現在、変異株が拡大し、子どもの感染も増え、たいへん心配な状況である。

 1年生の人たちの様子を中心に

■休校中、休校明けの子どもたち

学校に行けない期間、学校再開後の子どもたちはどうだったのか。本校では、子ども一人ひとりから、からだ、心、学習、言いたいことなどを聴いた。

日本体育大学体育研究所、子どものからだと心・連絡会議の「子どものからだと心に関する緊急調査」(小学1年生から中学3年生までの子どもとその保護者2423組)の自由記述を読む機会があった。休校中に困っていることでは「宿題」「ケンカ」「運動不足」(子ども)、「宿題」「勉強」「運動不足」(保護者)が頻出し、休校明けに困っていることでは「遊べる」「マスク」「感染者」(子ども)、「学校」「宿題」「疲れやすい」(保護者)が頻出していた。

調査結果と分析より、からだの状態で「お腹がいたい、頭がいたい、胃がいたい、吐き気、からだがつかれる、頭がぼんやりする、めまいがする」という項目で、休校中よりも休校明けに「高い訴え率」が示されている。「目が疲れる」が、休校中24.8%、休校明け23.1%となっている。「休校による影響か定かではないものの、ネット依存傾向者が1年前の調査と比べて、男子で20%前後、女子で10%前後も急増しました。」という指摘もされていた。また「休校明けは日中の眠気感、からだの不調の訴えが増加する様子もみられました。」とあった。心の状態では、「いらいらする、なんとなくムカつく、怒りっぽい、集中できない、やる気がでない、頑張るのがむずかしい、泣きたい気分だ、落ち込んでいる」という項目で、休校明けよりも休校中に「高い訴え率」が示されている。

私たちの学校の子どもたちも、この調査結果と重なるところがある。

■生活の変化に目を向けて

<コロナ×こどもアンケート>に学ぶ。国立成育医療研究センター社会医学研究部・こころの診療部を中心としたオンライン調査〈コロナ×こどもアンケート〉では、コロナ下での子どもと保護者の生活と健康の現状を明らかにすること、問題の早期発見や予防・対策に役立てることを目的としてこれまで4回の調査を行った。いくつか特徴的なことを引用させていただく。

○「2020年1月と比べて、お子さまが「1日あたり」テレビやスマホ、ゲームなどを見ている時間は変わりましたか?(勉強は含みません)」(保護者)9月~10月3回目調査

3~5歳:かなり増えた(+2時間以上)9%、増えた(+1~2時間)35%、変らない50%

小1~3年:かなり増えた10%、増えた35%、変らない50%

小4~6年:かなり増えた15%、増えた38%、変らない42%

中学生:かなり増えた19%、増えた37%、変らない36%

高校生:かなり増えた17%、増えた25%、変らない49%

⇒小4~6年、中学生では、かなり増えた・増えたと答えたが50%を超えている。休校中は、視聴が増えていると予想したが、学校再開後も増えた状態が続いている。

○「去年(コロナの前)とくらべて、夜ねる時間(じかん)は変わりましたか?」(こども)「2020年1月(コロナ流行前)と比べて、お子さまの就寝時刻は変わりましたか?」(保護者)9~10月3回目調査

小1~3年:あまり変わらない78%、1時間程度遅い13%、2時間程度遅い1%

小4~6年:あまり変わらない63%、1時間程度遅い21%、2時間程度遅い5%

中学生:あまり変わらない54%、1時間程度遅い21%、2時間程度遅い6%

高校生:あまり変わらない56%、1時間程度遅い15%、2時間程度遅い6%

⇒小4~6年、中学生では、遅くなったが25%を超えている。増えた子どもは、テレビやゲームなどによって増えたのだろうか。

○「あなたの家庭の暮らし(経済状況)は、2020年1月時点と比べて、どうですか?」(こども、保護者)11~12月4回目調査

小1~3年:変わらない74%、今の方が苦しい21%、わからない・答えたくない2%

小4~6年:変わらない70%、今の方が苦しい22%、わからない・答えたくない5%

中学生:変わらない65%、今の方が苦しい23%、わからない・答えたくない8%

高校生:変わらない62%、今の方が苦しい20%、わからない・答えたくない14%

⇒小学生、中学生、高校生の20%以上が、今の方が苦しいと答えている。

 コロナ感染拡大で、テレビ、スマホ視聴、ゲームをやる時間増、就寝時刻が遅くなった子どもが増えている。暮らしの変化(「苦しさ」)を感じている子がいる。現在もコロナ感染が拡大しており、子どもの生活の変化を捉えていく必要がある。そうした理解の上で、目の前にいる子たちに接していきたい。

■コロナと子どもの気持ち

国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」より。ここでも、本校の子どものことを考え、学んだ。

■「もし自分や家族がコロナになったら、そのことは秘密(ひみつ)にしたい」(こども回答)11~12月4回目調査

小1~3年:しない36%、少し16%、まあまあ11%、かなり29%

小4~6年:しない26%、少し32%、まあまあ13%、かなり22%

中学生:しない25%、少し25%、まあまあ21%、かなり25%

高校生:しない33%、少し26%、まあまあ15%、かなり20%

※選択肢の記述を以下のように変更した。全くあてはまらない→しない。少しだけあてはまる→少し。まああてはまる→まあまあ。かなりあてはまる→かなり。 

⇒少し、まあまあ、かなりを合わせ、秘密にしたいと捉えると、どの年齢も5割以上が秘密にしたいと考えている。コロナの不安が子どもたちに大きな影響を及ぼしている。

■「コロナやそれとかんけいがあることをかんがえながらこたえてください。さいきん1かげつのあなたにいちばんちかいものをえらんでください。」(こども回答)11~12月4回目調査

小1~3年 <コロナのことを考えるといやなきもちになる> →なかった39%、ごくたまに(1かげつに2かいくらい)23%、ときどき(1しゅうかんに1、2かい)17%、かなり(1しゅうかんに3、4かい)11%、ほとんどずっとあった7%

小1~3年 <すぐにイライラする> →なかった44%、ごくたまに(1かげつに2かいくらい)22%、ときどき(1しゅうかんに1、2かい)15%、かなり(1しゅうかんに3、4かい)7%、ほとんどずっとあった10%

■「【この7日間】次のような問題にどのくらい頻繁(ひんぱん)に悩まされていますか?それぞれの症状に対し、あなたの気持ちにもっとも近いものを選んでください。」(こども回答)11~12月4回目調査

(1)気分が落ち込む、ゆううつになる、いらいらする、または絶望的な気持ちになる

小4~6年:全くない49%、数日29%、半分以上9%、ほとんど毎日12%

中学生:全くない36%、数日40%、半分以上6%、ほとんど毎日17%

高校生:全くない40%、数日36%、半分以上10%、ほとんど毎日15%

(3)寝つきが悪い、途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる

小4~6年:全くない60%、数日26%、半分以上6%、ほとんど毎日8%

中学生:全くない50%、数日25%、半分以上7%、ほとんど毎日17%

高校生:全くない52%、数日22%、半分以上12%、ほとんど毎日13%

(5)疲れた感じがする、または気力がない

小4~6年:全くない52%、数日28%、半分以上8%、ほとんど毎日12%

中学生:全くない23%、数日41%、半分以上12%、ほとんど毎日25%

高校生:全くない33%、数日33%、半分以上11%、ほとんど毎日22%

⇒不安やストレスを抱えた子が多くいると捉えた。そうした子どもたちが日常を過ごし、学校に来ている子のなかにいる。

■自由記述

・だんだんマスクや検温や消毒しないとならない場所が増えてきて楽しくない。どこへも行く気をなくす。(男児/小5/北海道)

・コロナになったらいじめられないかな(女児/小5/福岡)

・コロナになって悪口や差別されている人がいる(男児/小5/宮城)

・学校でコロナをテーマにポスターを作ろうとか、今年1年の思い出を聞かれて「やっぱりコロナだね!」って叫ぶヤツ、どんだけコロナのことばっか考えてるんだよって思う。もっと大事なことあるだろ、コロナコロナうるさい。(男児/小6/北海道)

・コロナのせいで休み時間まで勉強しなければいけない(男児/小2/愛知)

・びょうきじゃないときに、しょくよくがないときがある。きもちわるくなったり、よなかにめがさめたりする。(女児/小1/千葉)

(他多数あり)

子どもたちのことをもっと知りたいと考え、2つの調査と分析に学んだ。まだ読み込みが浅く、分析もできていない。今後も、たいへん貴重な調査に学び、子どものことを理解し、私たちはどんな取り組みが必要なのかを考えたい。 

 今年もたくさんの梅の実が育っています

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