2021.6.7

幼稚園保護者のみなさんとの学習会② [Ⅱ‐263]

園庭の旗

[Ⅱ-262]の続きです。保護者の方から、・園として今大切にしていることは何ですか ・3学年それぞれの発達段階で大切にしたいこと(Ⅱ-261) ・子どもの権利について ・子どもの心が社会の中でどう育っていくのか ・子どものやる気をどう育てていくのか ・子どもがこの状況下(コロナ禍)でどう感じているか ・今後子どもの社会性が変わってくるのか ・個性とわがままの違いについて 考え合いたいという願いが出され、私も学んで参加しました。今回は、「、子どもの権利について」です。

プレイルーム前、みんなの願いの木を掲示してくれた6年生

(1)子ども、子供 ~なぜ【子ども】を選ぶのか 

大人や社会に従属した「子供」ではなく、一人ひとりの「こども」が人権の主体であること、社会の担い手、主権者であるという子ども観(子どもの見方、味方)をもちたいと思います。。

辞書的な意味では、子供の供は、お供をするなど、従者という意味があります。

詩人 小森香子さん 「子どもは 神様への お供え でも/大人たちのお供 でもない/一個の人格をもった 人間です だから/子供と書かずに 子どもと書きましょう…」と教えてくれました。

(2)子どもの権利について 

①児童憲章(1951年~、今年で70年)

桐朋幼稚園では、まず指導や教育ありきではなく、子どもの権利という側面から、児童憲章(51年)、児童権利宣言(59年)、子どもの権利条約(89年)の精神を大切にしてきました。

児童憲章には、「児童は、人として尊ばれる」「児童は、社会の一員として重んぜられる」「児童は、よりよい環境のなかで育てられる」「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」「すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる」など、「子どもの権利」という記述はありませんが、子どもの権利の内実が書かれています。それが、初等部の「原点に子どもを」という考え、実践の根本にあります。

②「子どもの権利」について、りんごの木の会発行の「特別通信」(20212月発行)を読んでください。(今回は略)

③幼児期の子どもの権利を大切にするとは 

上記の特別通信に、林大介さんがドイツの保育園見学のことを書いています。「ベルリン市は、公園改修のために日々の利用者である保育園児にヒアリングを行いました。略 4歳児一人ひとりに、握りこぶし大の緑の球・赤い球がついた長い棒2本を持たせ、公園を散策。行く先々で子どもが「緑の棒(心地よいと感じる場所)」か「赤の棒(変えたほうが良い場所)」を地面に挿し、「砂場の砂がさらさらしていて気持ちいい(緑)」「階段のわきに滑り台があるといいなあ(赤)」「昔は水遊びができたみたいだけど犬が入るから遊べなくなった(赤)」など4歳の子が話す内容をベルリン市の職員が聴き取り、公園の改修につなげます。「子どもは〇〇と思っているに違いない」と決め付けるのではなく、子どもも市民・主権者と位置づけているのです。」学び実践したいと思います。

③休園、休校の子どもたち

2020年2月27日、前首相による全国一律休校要請(法的根拠や科学的裏付けがない)が出され、日本のほぼすべての自治体、教育委員会、私学は休校にしました。2020年3月から5月まで休校の人がたくさんいました。再開後も時差、分散登校などが続きました。未知のコロナの感染が拡がり、入院、死者が増え、治療法が確定せず、ワクチンの開発の目途が立たない中でした。

要請に対して、私たちはどう対応したのかを振り返りました。本校では、休校を伝えた時に子どもの声を聴き、考え合うことができなかったと思います。休校に入るまでの準備期間を持てませんでした。国連子どもの権利条約には、「子どもたちの意見が聴かれかつ考慮される機会を提供すること」「意思決定のプロセスにおいて子どもの意見が聞かれ、かつ、考慮される機会を設けること、子どもは現に起きていることを理解すべきであるし、世界的流行への対応としてなされる決定に参加していると実感できるべきである」という「参加の権利」があります。こうした権利が十分に尊重されなかったという反省が私にはあります。

休校は子どもにとってどうだったのか。2020年5月、日本小児科学会は「休校による感染拡大防止効果は乏しい一方で、子どもの心身に及ぼすデメリットが大きい」などの報告をしました。10月、「新型コロナ・民間臨時調査会」がコロナへの政府の対応を検証した報告書を発表しました。その中に、専門家会議関係者の「子どもは感染源にほとんどなっていない。疫学的にはほとんど意味がなかった」などの証言も記されていました。2021年に入り、文科省は、幼、小、中、高などに対し、「子供の健やかな学びの保障や心身への影響の観点から」、「一律に臨時休業を求めるのではなく、地域の感染状況に応じた感染防止策の徹底を要請する」としています。

子どもの感染についてによく学ぶこと。本園、本校には公共交通機関を使用している人が多く、不特定多数の人と接触する機会が多いこと。子どもたちの育つ権利、守られる権利、参加する権利、学ぶ権利、仲間と成長する権利など大切に考えてすすめていかなくてはならないことなどを大切にしていきます。

幼稚園の様子から。左 手足が自由に使え登ることが楽しい 右 枇杷をとろうと集まる子どもたち

(3)子どもの権利の歴史に学ぶ ~『エミール』の読み直し

ルソーによれば、子どもは「弱く生まれる」。「弱く生まれる」から、発達の可能態(性)が大きい。豊かに育つ存在である。

豊かな感性が理性を育てるという視点も書かれている。ルソーの「理性と感性」の捉えについて、「まず豊かな感性の開花、それが理性を支える」といいます。大切にしたいことです。

『センス・オブ・ワンダー』(レイチェル・カーソン)では、「「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性は、この種子をはぐくむ豊かな土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。」につながります。

人間の成長全体をルソーは『エミール』で書き、「教育とは、無駄をすること」「ゆたかな、たっぷりした時間」など大切なことを述べています。  

また、乳幼児期に育てる大切な内臓感覚(この内臓感覚を基本に脳の活動をしているー快不快のメッセージを出せる身体、身体のメッセージを捉える脳))、脳科学の知見(健康に身体を育て、身体中で感動し、身体中で自然のものを吸収していく。そして脳にきちんと情報を伝達し、精神の根底をつくり出していく。その過程が大切で子どもの心がつくられていく)にもつながるととらえました。(共同研究者の久保健太さんからの学びも含む) しぜんひろばで園児たちがたのしみました

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