2022.5.16

乳幼児期から児童期にかけて大切にしたい育ち [Ⅱー297]

土曜日は、園、学校説明会へご参加くださり、ありがとうございました。そこでお話させていただいた内容に少し付け足したものを掲載します。

 写真は、いろいろな方にお世話になっている日常の様子から。永野農園(卒業生)に行くと、竹がすごい早さで成長していて驚きました。

小学校案内の「入学考査について」には、「私たちは、小学校入学考査のための準備教育を望ましいものではないと考えます。幼児期から知識を詰め込んだり、他者から評価に縛られたり、できる、できないということにとらわれすぎることは、子どもたちの発達にマイナスの作用を及ぼします。」―①、「幼児期において、ゆったりとした時間を楽しみ、たっぷりと遊ぶことを大事にした、その子にとって生き生きと過ごせる生活を送ってほしいと願いします。」―➁と書いています。

この2点を深めることが、乳幼児期から児童期にかけて大切にしたい育ちにつながると考えました。

 幼稚園3歳の人たちを見守ってくれている小学5年の人たち

①子どもたちの発達にマイナスの作用を及ぼすこととはどういうことだろう?

信頼感や安心感を持てない、自己決定できない、自己を肯定することができない、自信をもてないなどです。もう少していねいにいうと、

おもしろそう、やりたいという気持ちの芽生えや、やりたいけれどもできないことでの試行錯誤や失敗の経験がたっぷりとされていない。

〇「自分なりのやり方」を大事にされていない。(大事にされることによって「他の人のやり方」とどう違うかを考えられる。)

試行錯誤や失敗を引き受ける経験、できる喜び、満足した喜びをもてない。

この3点は、その子の育ち、「人権」が大切にされていないことだと思います。他に、やや具体的なこととして、 

〇習い事でやった、インターネットや図鑑で調べて知った、すぐに調べてわかった、「知ってるー」でとまってしまう。知りたい気持ち、自分の感覚、実感、満足感、もっと知りたい気持ちなどと結びついていない。

〇できないからやらない、諦めてしまう。やっても無駄、としてやらない。

などです。汐見稔幸さん(東大名誉教授)は、『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出新書)で、「早期教育」について次のように述べています。

プロセスを邪魔するものであり、妨害してしまう可能性が大きい」

「幼い間にたくさんの言葉を覚え、計算が速くできるようになったとしても、自分が嫌いだと思うことを嫌だと言えなくなってしまったり、自分がやりたいことに没頭できなくなってしまったりすることが多くあります。自分なりに『世界はこうなっているんだ!』と価値づけることができず、世間の『これがいい子だ』という論理だけをひたすら覚えてそれに従っていると、後になってその人の心の深部にある、その人の人間としての不満や苦しみが必ず外に出てきます。」

汐見さんは、子どもの発達に大切なこととして、プロセスの豊かさや自分がやりたいことに没頭する大事さをいいます。

話はずれますが、アメリカの発達心理学者ゲゼルの研究では、乳児期に訓練(積み木の操作や階段のぼり)をした子どもの優位さは一時で、思春期まで追跡調査した結果、「自分で判断しなければならない状況や課題に直面したとき、乳児期に訓練を受けた子どもたちは、おとなの顔色を見て、その指示を待つような行動がとても多かった」そうです。(内田伸子著『子育てに「もう遅い」はありません』冨山房インターナショナルより。ゲゼルの論文で確かめることはできていません。)

また、幼児期にことばを暗記してたくさん覚えた子と、自分なりにいろいろと想像したり身近な体験と結びつけてイメージを浮かべたりしてなんとか答えようとした子どもたちでは、小学校高学年になったとき、暗記によって解ける課題には正答できましたが、自分で考えて答えを出さなければならないような課題では、自分なりのイメージを描いて答えようとした子どもたちに比べてずっと成績が悪かったそうです。(同書で、内田さんが発達心理学者野村正吾さんに学び書いてあること。野村さんの論文を確かめることはできていません。)

 つつじが丘消防署の方に教えていただきました。

②ゆったりとした時間を楽しみ、たっぷりと遊ぶことを大事にした、生き生きと過ごせる生活で育つこととは何だろう。 

それは、①に関わっています。応答されることによる安心感や信頼感を育てている、安心感、信頼感のうえで、自己決定することができる、自己を肯定する、自信をもつことなどです。もう少していねいにいうと、

おもしろそう、やりたいという気持ちの芽生えが大切にされて、やりたいけれどもできないことでの試行錯誤や失敗の経験をたっぷりとする。

■「自分なりのやり方」を大事にされる。(大事にされることによって「他の人のやり方」とどう違うか考えられる。)

試行錯誤や失敗を引き受ける経験もして、できる喜び、満足した喜びを得る。などです。

 調布市郷土資料館の方より詳しい説明を受けました。

次は、乳幼児期から児童期にかけて、「生き生きと過ごせる生活で育つこと」を脳の発達という角度から考えてみます。(つづく)

一覧に戻る