2022.5.23

学習 子どもの育ちと脳について [Ⅱー298]

前回のコラムの最後に、「次は、乳幼児期から児童期にかけて、『生き生きと過ごせる生活で育つこと』を脳の発達という角度から考えてみます。(つづく)」と書きました。今回、「子どもの育ちと脳について」学んでいることを書いてみます。  

神経系の発達について、Scammon の発育曲線によれば、生まれてから8歳ころまでに90%が完成(12歳頃までに全体が完成)します。バランス感覚などは、その時期までにいろいろな経験をして培われると考えるならば、(コロナ禍であっても)その時期と経験を大切にしたいです。園や小学校の人たちは、たくさん遊ぶなかで、しぜんと見事なバランス感覚を培っていると思います。

脳科学と教育などで発言されている小泉英明氏(日立製作所名誉フェロー)は、「乳幼児期は身体系と脳神経系の土台が築かれる時期」とし、「とりわけ神経回路がつくられるのには臨界期があって、一歳くらいまでの時期に、神経回路が発達することがわかっています。その時期に子どもにとって良い環境を整えることが大切」と述べています。小泉氏によれば、子どもにとって良い環境とは「自然からの本物の刺激」があり、「(脳の学習機能のために)発達に応じて睡眠のリズムを正しくつくっていく」、「実体験」が大切で「意識下にまで多くの¨生の情報¨が入り、脳神経を活性化」することなどとなります。※「脳の基本的な能力は三歳までに決まってしまう」などは、科学的根拠がないという発言もされています。

たとえば、赤ちゃんが自分の手で食べ物を口に持っていこうとしているのを、無理にスプーンで食べさせることが続けば、手のはたらきの神経回路は育ちません。また、足が冷たいから、常にソックスをはかせていては、足裏や足指への刺激を遮断してしまいます。/赤ちゃんは、まず自分で手を伸ばして、食べ物をとるときでも自分で触って、その感覚や距離感をとらえます。最初はうまく口に運べないけれど、失敗していくうちに、口の中に食べ物を入れられるようになっていきます。やってみて、その刺激がどうだったのか学びます。このように実体験から神経回路をつくることを、小泉氏は『脳は出会いで育つ 「脳科学と教育」入門』(青灯社)で述べていました。

小泉氏と比べ、神経回路の発達の時期を乳幼児期から児童期と少し長い期間でとらえている中川信子氏(言語聴覚士。氏には、ことばと脳の育ちから学びはじめました)は、子どもの生活やことばと育ち、脳の発達についていくつかの本を書いています。

脳細胞(ニューロン)は、生まれたときに、大脳の表面部分に140億個ぎっしり並べられているそうです。その脳細胞と手や足が神経でつながっています。そして、さまざまな経験を通して、そのつながりが機能し、発達するそうです。それを「神経回路」の形成と述べています。

中川氏は、子どもの育ちと脳しくみを3つの段階で捉えます。

●脳幹 ~神経の束が通っているところ、生命の中枢で、生命を守る役割をします。子どもの成長にためには、脳幹の神経の通りをよくしておきます。そのためには、からだが元気であることが大切です。十分な睡眠、空腹満腹のリズムなど生活が規則的に、リズムが保たれていることです。「寝る子は育つ」「よく遊び、よく学ぶ」です。

●大脳辺縁系 ~「こころの脳」ともいえる場所。本能、情動、感情より少し原始的なこころのはたらきをします。やる気、覚える、本能的価値判断をします。生きる力を駆動するところです。だから「おもしろそう」(記憶をつかさどる海馬のはたらきが高まる)「この情報は役に立つ」などが大切〔たのしい、おもしろい、好き、やりたい意欲を育てる〕で、そうした場面で大脳辺縁系の神経の通りがよくなります。

●大脳皮質 ~脳幹と大脳辺縁系のはたらきの上に、大脳皮質のはたらきが乗っかって、知的なはたらきをします。知識、知性、抑制などのはたらきを通して、うまく生きる、よく生きることができます。

「生き生きと過ごせる生活で育つこと」を脳の発達という角度から考えると、まずからだが元気であることが大切で、それから、興味や関心、好奇心、意欲などを育て、よく生きることができるようになっていくと考えられます。さらに学び続けます。

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