2022.11.11

子どもたち、豊かに育て! [Ⅱー320]

調布市私立幼稚園協会の研修会を桐朋学園ポロニアホールで行いました。調布市の約90名の保育者が参加されました。対面での実施は3年ぶりでした。会場に来られなかった約50名は、後ほど録画した内容を学びます。

調布市私立幼稚園協会の研修会は、何十年と続いてきました。初等部創設メンバーの大場牧夫先生によれば、「1968年調布私幼としての出発があったのだろう」「自然領域をめぐっての調布の環境調査と、題材調査という立派な仕事をやってのけた」「調布市の公私立の保育所の先生方に声をかけて、とにかく研究会を一緒にやりましょうということで、かなりの保育所の先生方が参加して下さるようになって、(中略)私立幼稚園の研究会で、幼保一緒になってやっているのは殆どありません」「考えるという部分を軸にやってきたこの研究会が、今日まで持ち続けてきたことの大事さを私たちはもう一度考えてみる必要がある」「つまり、実技講習にながれなかったという事に、実践者としてのプライドを持ってほしいということです」「こういう地域の研究会と園内研とをしっかり固めていくということが、私達のこれから、子どものためにやるべきことなのだろうと思います」(すべて『原点に子どもを』調布市私立幼稚園協会研究部保育実践問題研究会、1991年より引用)などの大切にしてきたことがあります。

そして、私たちは大切にされてきたバトンを引き継いで、現在、未来に実践、研究、研修をすすめていかなくてはならないと受けとめています。大場先生より研修会で学んだ方が現在園長先生をされ、その園の保育者が研修に参加して学び合うなど、調布市からよい保育、教育を発信し、広げようとしています。

今回の研修会講師は、大妻女子大学の久保健太さんでした。久保さんには、桐朋幼稚園の共同研究者として、初等部研究会講師として、7年間学び、たいへんお世話になっています。

 秋、プラタナスなどの葉に囲まれています

久保さんと保育者の皆さんとで学んだ子どもの育ちについて書きます。本コラムをみてくださった方とも共有したいと思いました。

はじめ、保育園の子どもたちが、段差があってなかなか動かすことのできないリヤカーを何とか動かそうとしているビデオを見ました。そして、子どもの様子や保育者のかかわりについて考えました。子どもたちが力を合わせ、試行錯誤する、保育者がほどよい距離で見守る、子ども(たち)が育つ環境について、などのいろいろな視点から考えました。ビデオを見て、保育者同士で意見を聞きあい、グループからの発表を久保さんが受けとめて話してくださいました。

〇子ども(たち)の「やりたい」という主体的な学びを大切にする。

〇子ども同士の協働を大切にする対話的(ことばだけでない姿なども)な学びを大切にする。挑戦、失敗、試行錯誤を繰り返す中で、子どもたちは様々なアイデアをやりとりしている。

久保さんは、ビデオを見た保育者の学びを整理し、さらにエンゲストローム(フィンランドの教育学者)の理論から、学びの深さを

➀教えられた通り、いわれた通りの仕方で問題を解決しようとする。

➁自分たちで状況を把握しながら、問題を解決しようとする。

③自分たちの状況把握、問題解決の仕方すら問い直しながら、新たな解決方法を編み出す。

と話されて、ビデオと繋げて➁や③を深めてくださいました。

話を聞いて、私自身、学びに対して、➀の教えられた通りいわれた通りということが染みつき、なかなか抜けだせないことがあると振り返りました。それから、子どもたちには、➁や③を大切に育ってほしいと願い、日常の保育では待ってみることを大切にしようと考えてみました。

久保さんは③について、「アイデアを出し合って、新しい方法を編み出し合うことは、それが「やりたいこと」であれば、楽しいはずであるし、そうして自分たちの引き出しを増やしていくことは、「生き方の幅」を増やしていくことにもなるはずだ。それは「自分(たち)は応答してもらえる存在なんだという信頼感」「自分(たち)のことは自分(たち)で決めるという自己決定」「自分(たち)の世界は自分(たち)でつくるという主体性」を中身とした民主主義の実現でもある。そのための種は、人間の中に埋め込まれているので、まずは日常の一瞬一瞬において、その種が開花するようにかかわってやることをしようと思う。」(『生活経済政策』№269、2019年、「日常生活と民主主義と教育をつなぐ理論」)と述べています。大切にしたいことです。

それから、子ども同士の協働の意味、大切さについて触れます。

別のビデオでは、紙パックの飲み物へストローが挿せない子とまわりの子、保育者の関わりを見ました。その子は、できないから保育者にやってと言いました。その子が保育者に対して、これまでの関わりにおいて応答される安心感が感じられました。その場面で応答した保育者は、向かいにいる子に頼んでみることを促し、一緒に頼みました。そして頼まれた子はストローを挿して渡してあげました。このような子ども同士で応答されることによる安心感や信頼感を育てたいと学びました。

子どもたちは、応答されることによる安心感や信頼感をもつことで、相手に対する信頼感と自分は他者に応答してもらえる大切な存在という自分への信頼感を育てていくと考えます。

それから、自分でやってごらんという段階は、保育者との関わり、子ども同士の関わりで応答されることによる安心感や信頼感が育っていることがあって、この段階にすすんでいくことを学びました。

年長の人たちは、秋の遠足で多摩動物公園へ行ってきました。

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