2022.12.23

幼小で「主体的・対話的で深い学び」をつくり、育ち合おう [Ⅱー325]

子どもたちには、《幼小時代に異年齢でかかわることの楽しさを味わう》《主体的に人生を切りひらく経験をする》《協同してつくる世界の面白さを味わう》などを大切に過ごしてほしいと思います。そのための幼稚園、小学校にしていきたいです。

ここ数年、保育、教育では、「主体的・対話的で深い学び」が語られ、広がっています。保育要領、学習指導要領(文部科学省)など、「『生きる力』を育むため」この学びを大切にしています。私は、現在と未来に、一人ひとりが社会のつくり手となるために必要な学びと考えます。

【幼小で「主体的・対話的で深い学び」をつくり、育ち合おう】

12月、2年生からゆり組(年長)に郵便が届きました。「どんぐりみゅーじあむ ぜひきてください」というお誘いでした。当日、ゆり組のみんなで小学校絵画室へ行き、2年生といっしょのグループに座りました。はじめの集まりで2年生から「ようこそ、どんぐりみゅーじあむへ。まちにまった会です。いろんなものをつくりましょう。やさしく教えるから」と話しました。その後、2年生がドングリでつくったこまや剣玉、マラカス、アクセサリーを近くで見せてくれて、幼稚園の人に、好きなものを選んで、いっしょにつくろうと誘ってくれました。

絵画室でドングリゴマやドングリ剣玉などをつくった人たちが、早速、幼稚園のテラスに行って試します。ドングリ剣玉は、紐を通したドングリをカップの中に入れることが難しい。何回かやっているうちに、紐が外れて飛んでいってしまうこともありました。直すには、絵画室に爪楊枝を取りに行き、紐を爪楊枝で押しながらカップの穴に入れて、反対の中側から引っ張って結びます。穴から抜けないように結び目を大きくするなど、1つ1つが難しい作業のようでしたが、ゆり組の人から頼りにされた2年生がゆり組の人のためにがんばっていました。

上の写真のように、幼稚園の人の「どんぐりをカップに入れたい」気持ちに火がつきます。ところが、入れたいけど入らない、入らないけど入れたい。自分なりのやり方で失敗、2年生のやり方を見て試行錯誤をします。カップを持つ手で投げる方向を試し、2年生のからだの使い方などを見て工夫していました。また、紐が長いと難しく、2年生さえも「長すぎてムズイ」など、入れるのに苦労していました。これまでの研究では、保育者の「やってごらん」という「声かけ」よりも、他の子の「できた!」という「姿」の方が、「やりたい!」に火をつけることが多いと言われています。今回もそのように感じとれました。何回も何回もやって、入った瞬間の喜びは大きなものでした。私もいっしょに喜びました。

終わりの集まりで、何人か感想を話してくれました。「どんぐりでこんなに遊べて楽しかった」とゆり組の人が話したり、「今日から友だちだよ!」と2年生が話していました。2年生にとっては、事前の準備をし、年長者として教える経験を積みます。当てにされる、頼りにされる自身を大事にしてほしく、教員からもここがよかったね!と声をかけます。

共同研究者の久保健太さんによれば、主体的な学びは、学習者本人のやりたい!という気持ちからはじまる学びです。そうした学びをたくさん経験してほしい。対話的な学びは、子ども同士の協働から生まれる学びです。久保さんが「挑戦し、失敗する。試行錯誤を繰り返す中で、子どもたちは様々なアイデアをやりとりし、仲間たちのアイデアにもふれ、自分の学びとします。」「試行錯誤の中で、子どもたちは知識・技術を発揮したり、結びつけたりしています。そこに子どもたちの「学び」がある」と言っていました。今回、やりたい気持ちに火がつき、やってみるが思い通りにいかない中で試行錯誤し、お互いの姿を通した、ことばだけでない豊かな対話的な学びが生まれていました。深い学びは、知識・アイディアを相互に関連づけることで生まれる学びですが、今回の様子では、腕やからだの使い方の探究、紐の長さの調整、幼稚園の人がいろいろと試す中で後ろにまわす技を2年生が発見し、新たな技を探究するなど起こりはじめていました。

もう一つは、2022年度から3か年程度を念頭に、文部科学省から『幼保小の架け橋プログラム』として、「子供に関わる大人が立場を越えて連携し、架け橋期(義務教育開始前後の5歳児から小学校1年生の2年間)にふさわしい主体的・対話的で深い学びの実現を図り、一人一人の多様性に配慮した上で全ての子供に学びや生活の基盤を育むことを目指すもの」という提起にかかわります。今後、この方向で幼保小の連携がすすむことを願っています。初等部では、これまで主体的・対話的学びが展開されるための環境づくりをすすめてきました。たとえば、しぜんひろばでの幼小の交流、畑の虫や草花を通しての交わり、幼稚園の人が1、2年生や音楽の教室に行き、小学生の様子を知ることなどです。このプログラムのねらいの1つに「幼児期から児童期の発達を見通しつつ、5歳児のカリキュラムと小学校1年生のカリキュラムを一体的に捉え、地域の幼児教育と小学校教育の関係者が連携して、カリキュラム・教育方法の充実・改善にあたることを推進」することがあります。ぜひ実現させていきたいです。

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