2023年がはじまりました。どうぞよろしくお願いします [Ⅱー326]
この冬休みに読んだ本で、「疎植」と呼ばれる米作りの栽培法と出あいました。それは、「人間が色々手を加えるのではなく、イネが自然に育とうとする力を信じてゆだねるという考え方に基づ」き、「できるだけ自然に近い状態で、風が通り光がたっぷり当たるように、株と株との間を大きく空けて植えてゆく」方法で、「農薬と化学肥料を使わない稲作」ができます。そして、「そこに住む人々と共同体が、森や川が、水田が、100年先も幸福な姿をイメージ」できるものでした。保育、教育においても、一人ひとりが自らを創出する力に依拠して、その力や関係が育つ環境を試行錯誤してつくり、幸福な姿をもとめていきたいと思いました。
1月6日初等部冬季研究会を行い、子ども、私たちが生きる世界、育つ、育てる環境などを考え合いました。講師の小崎悠太さんからは、土、水、植物、虫などが生きる、育つとはどういうことか、人間が生きものであることを意識して自然を活かして暮らす、多様な生きものたちと共に循環の中で生きることなどを深く考えさせられました。また「新しいもの」を「便利」だからとつくりかえ、「消費」することに向かいがちな日常に対して、身近なものを「活かす」「つくりかえる、つくり出す」「循環する」こと、そのための文化伝承に触れました。研究会の中で、藁を編むたのしさ、きれいに強く結んでいく喜びなどを経験しました。今日は、6年生が小崎さんと出あって、どんな学びが生まれ育まれるのかたのしみです(下の写真)。3学期、遊びや学びに夢中になる、もっとやりたいものをつくり出したいです。
いただいた年賀状では、「昨年は、3西で自分のソーラークッカーを作りました。何度も工夫してあつく温まったカレーは、とてもおいしかったです。今年は、たくさん実験して、発明したいです。」と書かれていました。読ませていただいて、ワクワクしました。自然は思い通りにはならないこと、思い通りにならないことで手をかけることから生まれる喜び、豊かさを感じました。幼稚園の生活、小学校の総合で、ものをつくり出すたのしさ、「共生」「循環」をキーワードにもっと学んでいきたいと考えました。その時に大切にしたいことが、「40億年近くのあいだに手に入れた生きものたちの知恵に学ぶ」(中村桂子さん)こと。「疎植」や小崎からの学びもその一つ。「進化によって多様化し、それらが共生するのが生きものですから、そのような生き方を支える技術を開発し、生きものが生きやすい社会にしていきたい」(同上)という考えを大切にしたいです。
世界共通の課題して、紛争、戦争を絶対とめること、地球温暖化、地球危機がすすんでいることを根本からかえること、身近な食糧を安全に必要な分だけ生産することなどがあります。身近なことから、日常の生活や学びと結びつけて取り組んでいきましょう。
2023年、一人ひとりの幸せな子ども時代を願い、どうぞよろしくお願いします。
小崎さんは鹿児島に在住。エネルギー問題への関心から、電気やガス、水道などのインフラは契約せず、できるだけ自分で賄うオフグリッドの生活を実践。また、ソーラーパネルを用いた自家発電や、火起こし、動物の解体といったアメリカ先住民の技術を習得し、講習などを実施。大規模なものづくりにも関心を持ち、知識と技術を豊かに持つ人です。
小崎さんには、2022年夏に桐朋小学校の先生たちが研究研修で学ばせていただきました。また、小崎さんから、「技術が自分自身を養ってくれること」、「自分自身を養い、暮らしをつくること」、「自分でなんでもできるようになっていくための力」、「異なる意見や文化の人とも協力しあえること」など文書で学びを共有してきました。