2023.4.16

「人として尊ばれる」ことに[Ⅱー340]

桐朋学園の教育理念は、「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長するというヒューマニズムに立つ『人間教育』」です。1947 年教育基本法の精神をもとにしています。この法は、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」(前文)としたものです。日本国憲法で掲げた理想を保育、教育で実現したいと思います。そのために、不断の努力をしていきます。

  写真はすべて入園式の様子から 
2022 年度、保育現場の虐待(園児を叩く、きつい声かけをするなど)が報道され、「不適切保育」が話題となりました。厚生労働省の調査によれば、「不適切保育」とは、「子ども一人ひとりの人格を尊重しない関わり」、「物事を強要するような関わり、脅迫的な言葉がけ」、「罰を与える、乱暴な関わり」、「子ども一人ひとりの育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり」、「差別的な関わり」と例示されました。そのことを本園、本学には関わりのないことと決してせずに、1947 教育基本法の精神を教育理念とする学園として、初等部ではどうかを問い続けていきます。(2023年4月4日には、「不適切保育 つかめぬ実態  基準なし 指導も調査も後手」朝日新聞に記事掲載)
「不適切保育」を社会の問題として考えれば、「(子どもの数と保育士の数の国の配置基準に対して)基準通りの数では、命を預かる仕事はできない」という現場からの声があがっていることや、教員の長時間過密労働(「教職員勤務実態調査 2022」によれば、「校内での時間外勤務(4週間の平均):71 時間 40 分⇒10年前調査より2時間超増加」「持ち帰り含む時間外勤務の合計:86 時間 24 分」「時間外勤務の上限(月 45 時間)についてみると、59.2%が超えている」「年代別では、30 歳以下の若手の先生たちが最も過酷な勤務実態」「小中では、平日1日あたり3時間以上の超過勤務をしている教職員が約半数」)を改善するなどしていかなくてはならない課題があります。玉川大学の大豆生田教授(保育学)は、「保育士が余裕を持って子どもに関われるような配置基準の見直し」と「保育の質をより高めるための意識や風土」「子どもを尊重する保育にしていく」ことで防ぐこと。また保護者との対話や信頼関係について「子どもを真ん中に置き、園同士で高め合って、親とともに安心して育てられる環境を社会でつくっていくべき」だと述べていました。(朝日新聞2023年 2 月 5 日朝刊)

桐朋幼稚園では、「児童は人として尊ばれる」「社会の一員として重んぜられる」「よい環境のなかで育てられる」「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」など、児童憲章を大切に実践をすすめてきました。あらためて、保育、教育で大切にされているかを考えていきます。

保育、教育活動をすすめるうえで、教育理念や児童憲章、保育、教育目標と大切にしたいことを土台にし、子どもたちとの日々を大切に過ごしていきたいと思います。

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