2023.5.9

新緑の中で-遊び考 [Ⅱー344]

しぜんひろばにいると、子どもはすごいなあと思うことがたくさんあります。

ひろばにある大モミジの木の枝に、ある日、緑ロープがかけられました。このロープは、前一本綱ブランコに使用していたものです。現在の青ロープに変えた時に、取り外し、子どもたちが自由に使ってよいことにしました。

今日も緑ロープ、青ロープ(一本綱ブランコ)は人気です。大モミジの木に登り、緑ロープにぶら下がる。勢いをつけてグルっと回りながら跳びおりることで歓声をあげています。

木のぼり名人が、「あの高い場所につけたんだよ」と、名人であってもかなり難しい場所によくつけたという意味を込めて教えてくれました。(大人の方では枝とロープについての安全を確認)枝を軸に、ロープが回転するけれども、そのままだと木にぶつかってしまう。回りながらタイミングよく手を放し跳ぶたのしさを味わっているたくさんの子どもたち。「校長先生もやってごらん。たのしいよ!」と言われて、やってみたいのですが、怪我が心配でまだできていません。

  • 木のぼり名人と緑ロープからのジャンプ!

 

しぜんひろばの池では、舟を浮かばせている6年生と出あいました。風を受けると、舟は勢いよくすすみます。6年生のまわりに集まる人たちもワクワクしてきます。6年生は、放課後にいくつも舟をつくり、しぜんひろばの池で浮かべて走らせてたのしんでいる、試行錯誤をしているそうです。

  • 風をうけてかなりのスピードですすんでいます

 

遊びはとても大切です。私たちの教育の柱に、「子ども時代に、たっぷり遊び、心と身体を耕すことは大切です。遊びを通して、創造力、自立心、連帯、責任感、自主性、選択する力など、さまざまな豊かな力を育てます」、「違いを大切にしながら、集団で学ぶこと、働くこと、遊ぶことを通して、お互いの良さを共有し合う関係を育て、自分らしさを育みます」、「放課後も、ゆったりしたり、夢中になって取り組める時間、空間を保障しています」と書いてお伝えしています。社会に出てからも、遊びを通して培った力を発揮している人たち、仲間とのつながりがたくさんあります。

一方で、どうしても「遊び」に、積極的意味を強調しすぎていないかと感じてきました。子どもの人権や文化について詳しい増山均先生(早稲田大名誉教授)に学ぶと、子どもの権利条約31条の「休息・余暇」の権利を取り上げて、「余暇とは、「価値を問われない時間を保障すること」」「好きなことをするもよし、あるいはブラブラするもよし、何もしないのもよしと、生活と活動を自分で決める時間が保障されているところが非常に重要」と言います。※スペイン語では、「余暇」ではなく、「気晴らし」とする。

神戸大学の赤木和重先生は、「「価値を問われない時間」が保障されるなかで、子どもたちは安心して、何もしないことを含めて、何かを自由に遊びます。その余白のなかで、創造性が発露するのでしょう。」と述べていました。先ほどのしぜんひろばで舟を浮かばせ、試行錯誤している6年生は創造性が刺激されていると考えました。

日本の子どもの現実に対して、国連子どもの権利委員会から「極めて競争的な教育制度が与えるストレスにさらされている」、「その結果、余暇、スポーツ活動および休息を欠如させていることを懸念する」と指摘されています。また、教育制度に限らず、日本の子どもの現実は「余暇」や「休息」「生活と活動を自分で決める時間が保障されている」などの権利が侵害されているのではないかと考えさせられます。

増山先生に学んで、「遊び」は、何もしない時間の保障や生活と活動を自分で決める時間の保障も含めて成立すると考えたいです。「遊び」の意味の中に、子どもの権利条約31条の「休息・余暇」の権利の大切さを込めようと思います。

「遊び」の意味として、「授かった命を活き活きと輝かせる」「総合的、根源的な人間形成力」「今という時を没頭、のめり込んで、夢中で生きる」「楽しい、面白い、心地よい時間を過ごすことは子どもの成長に必要な時間」「魂の活性化」「「溜め」をつくる→子ども時代の遊びで、失敗体験や成功体験、ケンカや仲直りの繰り返しなどで、人間関係の厚みによって深く蓄えられるもの」(増山先生より)などがあることもあらためて考えました。

以下は、子どもの権利条約の日本政府訳と子どもと文化 NPO Art.31からです。

●子どもの権利条約31条 休息・余暇・遊び・文化的・芸術的生活への参加

締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活および芸術に自由に参加する権利を認める。

締約国は、児童が文化的および芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的および芸術的な活動並びにレクリエーションおよび余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。 日本政府訳

●子どもと文化 NPO Art.31

「健康と安心の中で、ゆったりと穏やかに自分と向き合い(休息、余暇)、仲間や自然の中で、頭と体を縦横に使い、のびのび、楽しく活動し(遊び、レクリェーション)、家族や地域の中で、文化や芸術と出あい、人間を知り人間を学ぶこと(文化的生活・芸術への参加)」が、子どもたちが今を生き、明日に向かって育つために、不可欠の権利であると書かれています。

  • 広島で被爆アオギリ二世をいただき、しぜんひろばで育てています。背の高さよりも低かったものが、とても大きくなりました

 

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