『桐の輪』会 [Ⅱー345]
5月1日、桐朋幼稚園で『桐の輪』会を行いました。前年度に退職された先生がいらして、旧・現職員に呼びかけて集いました。これまで桐朋幼稚園をつくり、支えてこられた皆さんが参加してくださいました。
一人ひとりの自己紹介、創設からの歴史、子どもと保育の様子、園舎や園庭の様子などを話し合いました。園舎と園庭見学を行いました。たのしい一時でした。
初等部創設時の職員であった大場牧夫先生、中野光先生らの話、長い間勤められた竹林実紀子先生や鈴木忠彦先生、いろいろな先生の話をしました。大場先生については、今年度『今、大場牧夫に再び出会う』という研究会の企画を考えています。「桐朋幼稚園創設時から、園の保育理念や実践の礎を築いた大場牧夫氏について、今、改めて注目したい。/音楽教育に関わる保育の歴史を研究している白梅学園大学のN先生という方が、大場牧夫氏も研究対象としており、大場先生の実践に関わる桐朋幼稚園保存資料を提供している最中である。/今、改めて大場牧夫の理論や実践に出会い、学びたい。研究会として企画したい。」と、年間の研究計画に掲げています。どこかで書きます。
中野先生は、初等部開設の中心的な役割を担った方です。『桐の輪』会後、中野先生がお書きになった『初等部誕生物語』(初等部ブックレット№1)を再読し、創設当初のこと、先生の願いを改めて学びました。初等部創設の教育理念として、「ただ、設立当初の教育理念が『無』であったことは言っておかねばなるまい。『無』―禅問答にあるような言葉だが、これは『何も無い』ということではない。その底にあるものは既成の教育概念や空虚なイデオロギーを認めることをしないという自負であったはずである。それがあるかぎり、日々新しい教育を創り出す試みを重ねていくことができるということである。換言すれば『無』とは、すなわち『創造』であり、『改革』であり、『試行』であるべきであった-そういうことである。」という生江先生のことばを、中野先生は大切に紹介されています。そして、私たちに「日々新しい教育を創り出す試みを重ね」『創造』『改革』『試行』をしていくことを願っています。
そして、中野先生は、桐朋学園について「教育の『質』を研究的に問いつづけるほかに発展の道はない」と、桐朋の存在理由を言います。「質」について、「ここで学んだ者のすべてが『桐朋に学んでよかった』と思うことができる学園であってほしい、と願うものです」と述べ、「『いま』を大事にする教育」の大切さを言います。それは、「『私のやっている教育は果たしてこれでいいのだろうか』と疑う教師がいる学校、『もうすこしましにならないものだろうか』とみんなで問い直すことができる学校だ、と考えたい」と言うのでした。こうした歩みを桐朋学園初等部はしてきて、これからもめざす園や学校であってほしいと、中野先生は述べていました。
『桐の輪』会には、元園長・校長の齋藤孝先生が参加され、先生は「桐朋幼稚園の果たしている役割を子どもの人権を確立する世界的な歩みの中に位置づけて考える」と、ご発言をされました。「『あなたはあなたのままで生きていく価値があるんだよ』と、その存在をまるごと抱えられ安心と自身と自由を保障してくれる人間関係」を大切にしようと言います。それは、「受容的応答的な人間関係の大切さ」でした。「子どもは自らの要求が聴き取られあたたかく応答される人間関係の中でこそ成長することができます。」、「受容的応答的な人間関係」は、子どもの尊厳と成長発達を実現するための不可欠な条件なのです」と述べていました。
また、「子どもの権利条約」12条「意見表明権」を取り上げ、「子どもが自由に自己の意見を表明する権利を保障し、それに対して大人はその子どもの年齢及び成熟に応じて適切に考慮する義務が規定されています。」「これは子どもが要求を表明する力をもち、それを行使することができることを子どもの基本権として社会的に承認し、それに対する受容的な応答義務を媒介として、子どもが身近な大人との間で日常的に『受容的・応答的な人間関係をつくる権利』を保障したものです。このことは家庭、保育所、幼稚園、学校、施設の全てに必要なこと」と話されました。こうしたことを大切に桐朋幼稚園で保育をしていってほしいと語られていました。
全員の先生のことをここで紹介することはできませんが、お一人お一人が桐朋幼稚園の子ども、保育を大切にされ、そのことがいまも生きていると感じました。
再会をたのしみに、『いま』をだいじに保育、教育を行っていきます。
最後に、『桐の輪』の歌詞を紹介します。
♪おおきな のぞみを― むねいっぱいに ぐんと のびるぞ あおぞらたかく うでくんでかたくんで きりのはなの わをーつくろぅー
♪つよーい ちからでー あしなみそろえ ぐんと すすむぞ あのやまこえて うでくんでかたくんで きりのはなの わをつくろぅー
子どもたちと歌い続けています。