2023.10.7

運動会【民舞】 [Ⅱー364]

桐朋小学校の運動会は、前半は体育学習の成果の発表として民舞を、後半は赤白組による二色対抗競技等を行います。

運動会の取り組みを通じて、子どもたちの主体性を育てることを大事にしています。たとえば、開会式のエール交換では、応援係の人たちが考えた応援を1~6年生のチーム全員で行います。司会進行、整列、誘導、競技のリード、用具準備、ライン引き、他にも子どもたちが取り組み、運動会をつくります。4~6年の係の人たちの取り組みや各学年の民舞などをみて、「あっ、自分もやってみたい」など気持ちが動き、憧れを育てることも大切にしています。

 
係の人たちの様子

民舞について紹介します。全学年が発表します。古くから人々に伝えられてきた日本の踊りを表現します。

●一年生「荒馬」 青森県今別町の踊りで、ねぶた祭りの踊りがもとになっています。「ラッセラー!ラッセラー!」威勢のいい掛け声や太鼓のリズムに、一年生がたのしく駆けまわります。

●二年生「花笠踊り」 花笠音頭に合わせて踊る山形県の踊りです。自分たちで飾りつけした花笠を持って、元気な歌と掛け声に合わせて踊ります。

●三年生「桐朋みかぐら」 岩手県大森村に伝わる神楽舞を、踊りやすくアレンジしました。秋の豊作や幸せを願う気持ちがこめられています。日本の踊りがもつ独特の調子を味わいつつ、表現します。

●四年生「ソーラン節」 北海道ニシン漁をもとに創作された力強くキレのある踊りです。自分たちでつくった法被を身に着けて踊ります。

●五年生「エイサー」 沖縄本島や近隣の島々の盆踊りです。祖先の霊を供養し、無病息災を願い、家庭の繁栄を祈念します。桐朋小学校では、長年、沖縄市園田青年会の踊りを取り入れています。太鼓を打ち鳴らし「はやし」を入れながら、大地を踏みしめ、勇壮に踊ります。

●六年生「中野七頭舞」 岩手県岩泉町小本の中野地区で約180年前から踊られています。七つ道具を持ち、農地を開拓していきます。木を切り、畑を耕し、けものを追い払い、豊作を祝い、仕事の苦労をいやすというものです。大変難しい踊りに取り組みます。

 
3、4年民舞の様子

私たちが考える民舞

民舞は、民俗舞踊をもとにして、主に教育現場で教材として踊られてきました。その大もとの民族舞踊とは、日本各地で地域の祭りや盆踊り、神楽の奉納などで踊り継がれてきた芸能です。それらの多くは、日常生活の労働の中で培われてきた身体の使い方が、踊りの元になっています。

民族舞踊は、歴史的に地域の祭りなどの場で踊られ、地域の中で世代を超えて人と人を繋ぐ大切な共有財産、かけがえのない文化でした。人々は踊りを通して、繋がり合い、連帯し、生きる喜び、祈りや願いといった感情を共有しました。労働する農民などが生み出した本来の踊りは、たくましく、躍動感にあふれた全身的なものだったのでしょう。そのような踊りが、代々受け継がれる中で、力を効率よく使うことや合理的な動きになっていき、つまり「最小の労力で最大の効果」を発揮する、自然の理にかなった動きに洗練されてきたと思われます。日本の踊りは地を志向している。腰を安定させ、地に足をつけ、大地に根ざして労働し、生活してきた人々の身体の動きや所作とも関係するでしょう。

現代は、そのような労働が私たちの日常にほとんどなく、環境も生活も昔に比べ大きく変化しました。こうした中で私たちが見失ってきた身体の感覚を問い直す必要があると考えています。また、今私たちが感じる子どもの身体の変化、たとえば「体がかたく、ぎくしゃくした動き」、疲れやすく落ち着きがない、胸が閉じていて呼吸が浅いといったことも無関係ではないのでないかと考えます。

そこで、身体感覚をよみがえらせ、身体を耕していくことが、現代の私たちにとって必要と考えます。身体を耕したり、しなやかな身体をつくっていくために経験させたい動きの一つであり、教材であると考えます。そして、このような踊りを通して、自分を身体いっぱいに表現したり、その楽しさをみんなで共有し、繋がり合い、一つのことをつくっていく経験が、子どもたちの心に働きかけることも大きいと考えています。

長い時間をかけて人々に受け継がれてきた踊り、民舞を、子どもたちと踊ることの意味がここにあります。

*「桐朋小学校 体育集大成 ―民舞―」より

 
3~6年大玉リレー

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