11月の本だな[Ⅱー370]
3~6年生の校舎に入ると、すぐに図書室があります。図書室前の掲示板には毎月たくさんの本が紹介され、桐朋小の人たちはよく見ています。【11月の本だな】この本よんで! より
『三つの願い パレスチナとイスラエルの子どもたち』
デボラ・エリス作/もりうちすみこ訳/さ・え・ら書房
イマーン・ハミード・ヒジョー4か月、イェフダ・ショハム5か月、ヤマコヴ・アヴラハム7か月、シャルへベット・パス10か月、…。イスラエルの占領に対し、パレスチナの抵抗運動(2000年~2003年)で亡くなった429人の子どもの名前がはじめに書かれています。生きたいと願う尊い命が奪われました。
作者エリスさんは、2002年、イスラエルとパレスチナ人地区で出会った子どもたちに、毎日の生活や願いをたずねました。
「…爆弾のことが、一番こわい。だって、いつどこで爆発するかわかんないもの。お店で靴買ってるときかもしれないし、バスに乗ってるときかもしれない。なんにも悪いことしてなくても、爆弾に吹きとばされるんだから。…」ダニエルさん/八歳/イスラエル人
「…紛争については、みんながいつも話してる。わたし、自分のガスマスクも持ってる。学校に行ってる子はみんな持ってるわ。そのマスクをつけてれば、だれかがガス弾を落としても、息ができるの。…」ギリさん/八歳/イスラエル人
「…銃撃戦は、いつも突然はじまるんだ。いつおこるかぜんぜんわからないから、ものすごくあわてる。だから、四六時中、身がまえていなくちゃいけない。それに、いったんはじまったら、いつ終わるかもわからない。ぼくら、ほっとするときがまったくないんだよ。…」マハムードさん/十一歳/パレスチナ人
「…母さんは、もう長いあいだぐあいがよくなくて、今じゃ、まったく口をきかなくなってしまった。家がこわされるたびに、母さん、ものすごく悲しんで、とうとうしゃべれなくなったの。わたしは家がなくなったことより、母さんの声が聞けなくなったことのほうが何倍もつらい。母さん、わたしに怒りをぶつければよかったのに。…」ワファーさん/十二歳/パレスチナ人
戦争が、子どもたちの心、生活にどんなことを起こしているのか、子どもたちの声からとらえたい。
『カイト パレスチナの風に希望をのせて』
マイケル・モーバー作/ローラ・カーリン絵/杉田七重訳/あかね書房
紛争のヨルダン川西岸地区。同じ土地をめぐって、パレスチナとイスラエルが対立し、敵と味方を隔てる壁がはりめぐらされています。パレスチナの少年サイードは、大好きな兄をイスラエルの占領軍に殺されました。壁のむこうには、パレスチナ勢力に母を殺された少女がいます。
兄を殺されたサイードは話すことができなくなりました。敵を憎むかわりに、オリーブの木の下でカイトをつくり、ちょうどいい風がふいてくるのを待って、壁のむこうへ飛ばします。それを受けとる少女。
ある時、空に数えきれない数のカイトが浮かびます。そして壁を越えて飛んできます。「むこうの連中、カイトになんと書いてきたと思う? 『シャローム』だぞ。やつら、『シャローム』と書いてきおった。信じられるか? 平和って意味だよ。それに、こいつをごらん! ほら!」「カイトのもういっぽうの側には、はとが1羽えがかれていた。」この様子を捉えた記者が、「ここの壁はきっと、子どもたちの笑い声がくずすにちがいない。」と、希望を語ります。
『六号室のなかまたち』
ダニエラ・カルミ作/樋口範子訳/さ・え・ら書房
イスラエル兵に弟を殺された少年サミールは、パレスチナ・アラブ人の一人として、生まれた時からイスラエルへの憎悪と敵対心の中で育てられてきました。膝の手術を受けるため、イスラエルの病院に入ります。不安と孤独で、押し潰されそうになる病院での日々を、毛布の中でおまじないを唱えたり、思い出をたどったりすることで、サミールは乗り越えていきます。イスラエル兵士を兄にもつツァヒの無視にも耐えます。ある日、同じ病室の一人ひとりが粘土で自由に作品をつくり、サミールがつくった作品をルッドミラーは大切にします。また同じ病室のイスラエル人ヨナタンらと言葉を交わし、火星仮想体験で、自由と解放感を味わうなど、友情を育みます。サミールは最後に、「ぼくは、ユダヤ人でイスラエル人のヨナタンと、撃ちあうことなくこうやって、新しい世界にふみこむことができた。」と語ります。そうしたい、そうしていきたい。