新しいものや未知なものにふれたときの感激を
「子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。」
「幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。
そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。」
これは、生物学者レイチェル・カーソンの著書『センス・オブ・ワンダー』より抜粋した文章の一部です。
子どもたちには、書物等だけでは得られない、実物を使った実体験を通して、「もっと知りたい」「学ぶことは楽しい」と思えるような感情が揺さぶられる経験をたくさん積んでほしいと思っています。
その経験により得られた学びや知識こそしっかりと心に刻まれ、この先子どもたちが成長していく過程のどこかできっと活きていくことと考えます。
今回ご紹介するのは、5・6年生の団活動についてです。
団活動とは、高学年の自治活動の一つで、子どもたち自身がつくりたい・やってみたい団の呼びかけを行い、人数や活動等を調整し、団を成立させて活動していくものです。
先日の”鉱物実験団”では、「魚のからだのしくみに迫りたい!」ということで、カタクチイワシの煮干しの解剖をしました。
「煮干しでしょ?それで何かわかるの?」
なんて最初は言っていた子どもたちも、思わず黙り込んでしまうほど集中して、解剖を進めます。水でふやかした煮干しからは、ピンセットで様々なからだの部位が取り出せます。
「この、くしみたいなものは何?」
最初に目にしたのは、鰓とさいは。
なぜこのような形態になっているのか…魚の命を支える鰓について、実物を通してその重要性を知ります。
「頭から出てきたのは脳みそ?」「心臓って、こんなに小さい三角形なんだ!」
その後も、興奮する声が理科室に響き渡っていました。
そして、本日のスぺシャルチャレンジとして、生のアジとイワシが登場します。
魚屋で仕入れたものですが、ぜひやってみたいと言った人が、なんと多いこと…。
少しのレクチャーを受けただけで、専用の解剖ばさみなどを使いながら、臆することなく解剖を進めていく姿に、もはや頼もしさすら感じます。
同じ臓器でも、煮干しとはまた違う形や状態に感動しながら、あっという間に時間が過ぎていきました。
最後は、学びのための題材となった生命に感謝して。
タイムアウトのためできませんでしたが、ある子のつぶやきの中に…
「胃の中身を調べたら、その魚の食べている物がわかるんじゃない?」
「もしかしたら、(今海洋の環境問題にもなっている)マイクロプラスチックが出てくるとか?」
これこそ、「もっと知りたい」気持ちが芽生えた瞬間であり、また新たな課題へと繋がっていきます。
今度は、胃内容物を顕微鏡で見てみたい!と子どもたちと一緒になって大人も思わず、興奮してしまいました。
”学ぶことは、やっぱり楽しい!”