2024.2.14

新入生保護者会でお話をさせていただきました [Ⅱー380]

こうした会に参加すると、いよいよ小学校での生活がはじまると意識されることもあるでしょう。たのしみがふくらむのは嬉しいことですが、小学校生活に向けてこれができていない、あれをしなければ、となると苦しくなります。

いまを大切に過ごしてほしいと願います。そして、たのしそうな生活がこれからはじまるという気持ちをふくらませていってください。

Ⅰ 桐朋小学校の教育について

教育目標は、

●原点に子どもを → 発達の主体は、子ども(たち)

●自分自身の人生の主人公、社会の担い手になりゆくための根っこを育てる

ことです。

今後、1年生の担任や学校から、1年生の生活や学習で大切にしたいことなどをお伝えし、話し合いますので、今回は、「子どもを原点にした(桐朋小学校ならではの)教育」について、4つのことをお話させていただきました。

1、その人の中での進歩やがんばりを認める

たとえば漢字の「力だめし」で、間違える子がいます。以前に、その子は、全問正解で喜ぶ友だちの姿や自分と比較して、自分のできなさを感じ、荒れたこともありました。今回は、間違えを落ち着いて受けとめていました。こうしたところにも、その子の進歩が見られます。

先生は、「惜しい間違い〇個だけというのは、努力しなければできない結果だから、ほんとにがんばったんだと思うよ。」と、その子に伝えました。努力を認め、励ますことを、私たちは大切にしています。

それから、間違えないでできたことを大事にし、間違えないことが良いという価値観だけではなくて、その人の中での進歩とか、頑張りとかを認められるような学級の雰囲気づくりを大切にしていきたいと考えて取り組んでいます。

2、間違いが生かされる―集団で学ぶことの意味や良さ

みんなの前であっけらかんと失敗して、立ち直れる子どもがいいなと思います。

人前で失敗すると、誰もがやったことを後悔しがちですが、学校での学びはむしろ失敗の中にこそ隠れていると思うことがたくさん。たとえば器械運動で、皆の前で発表する機会があります。ところがうまく行きませんでした。その人は、どこがどうしてうまく行かなかったのかを振り返り、大切なポイントを意識しながらもう一度発表をしました。それを見ていた子どもたち、先生は、失敗してもまたやってみるという気持ちと行動に学び、うまくいかなかったことを改善して取り組む姿を見て、成功への「鍵」をつかんでいくと思いました。

学級では、失敗の中にこそ隠れている学びを大切にするため、恐れず挑戦しようよ、という空気をつくっていきたいと取り組んでいます。

これまでの「歴史」において、誤りを修正することで、物事の理解は深められてきました。それから、知の創造に失敗と誤りはつきものです!

3、集団で共同、協同すること

私たちは、集団のなかで「やりたい」気持ちを育むことを大切にしています。子どもの集団では、「よく分からないけど楽しそう」という夢中が伝染します。異年齢集団のなかでは、思ってもみなかった「やりたい」が見つかるケースが多くあります。

下の写真は、放課後のしぜんひろばの様子です。ツリーハウスをつくりたいという願いがたくさんのクラスから出され、子ども集会で話し合い、5、6年生のしぜんひろば委員の子どもたちがツリーハウスを完成させようと、自治の時間や放課後などに活動をすすめてきました。どの場所にどんなツリーハウスにするかを構想し、必要な木などを買いに行く、木の長さをはかり切る、釘で固定するなど、さまざまな場面で協同し、取り組んでいます。

もう1枚の写真は、去年の4年生八ヶ岳合宿から。マシュマロを焼いて食べる活動で、まず火をつけようと、マッチをこすります。うまく火がついた後に、新聞紙に火をつけるのですが、今度はその火がまきなどにうつらず、何回も試行錯誤を繰り返しました。風の通り道を考えて木を組むこと、小さな火を大きくするすめに扇ぐことなど、友だちと一緒に取り組みました。

 

4、自由、「ブラブラ」が認められる-休み時間、放課後の子ども

自由な時間、空間で、創造がひろがります。いいことひらめいた! が生まれます。

子どもの権利として、「余暇」「休息」「何もしない時間」があります。私たちは休み時間や放課後も大切にしています。かつて、ニュートンがペストが流行し、大学が休校となった際に、自由な時間から重力の法則を発見しました。その自由な時間を「創造的休暇」と呼んでいるそうです。

下の写真は、放課後の工作室、6年生の人たちです。硬くて重い黒檀を一生懸命に磨いていました。磨いている姿がたのしそうで、すてきな作品に仕上げようとしています。磨いたところを触らせてもらうと、刃先の鋭さを感じます。紙をスッーと切って、するどい切れ味を見せてくれました。また、小さいサイズのもの、穴を真ん中付近にあけるなど、こだわり、センスを感じました。友だちの良さに声をあげて、まねしたり、憧れて自身もつくっていくことなどがいいなと思いました。

5、子どもの権利条約(以前の内容に重複します)

1989年、国連総会で採択、日本は1994年に国会で批准し、世界で158番目の締約国となりました。2024年は、批准して30年の年です。子ども権利条約に光があてられることを願っています。

その内容は、

〇「子ども」は、あせらずゆっくりたっぷり自分(たち)らしく子ども時代を過ごそう。

〇「権利」とは、人間として誰もが持っていて当たり前のこと。たとえば、「安心」、「自由」、「自信」など。「安心」とは「心が安らか」で「いのちの危険や病気になっても治療が受けられるなどの不安がな」いこと。「自由」は、「自分の考えが大切にされ、行動できる」こと。「自信」は、「自分のことを価値ある存在として自分自身を認められること」です。

〇「条約」は、国家間で取り交わした約束事のことで、重い意味を持っています。

これまで残念ながら、「国連子どもの権利委員会」より、「「子ども期」、子どもの意見表明権、「子どもの保護」において、国家の責任と義務を再構築すべき」などと、日本政府に求められてきました。

上記の1~4は、「子ども期」「子どもの意見表明権」などを意識しての取り組みです。

 

Ⅱ 大事にしていきたいこと(学校で、家庭で、いっしょに)

今回は、「自己肯定感」を大事にしたいと話しました。私たちは、「自分が自分であって大丈夫」(高垣忠一郎さんからの学び)という感覚を大切にしています。「生きているだけで周りから肯定される感覚」とも考えます。

この「自己肯定感」を大事にしたい、それは前記の4つのことにもつながります。

自己肯定感とは、よいところをほめたり、資質、能力を評価して「自己肯定感」を高めるのとは違います。この続きを今度書いてみます。

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