ともに考え合う平和教育➀ [Ⅱ‐383]
PTA編集部の方から「ともに考え合う平和教育」を提案していただき、座談会を開きました。その様子を3回にわたってお伝えします。3月発行、PTA機関誌『わかぎり』より転載させてもらいます。
5・6年生と先生で、しぜんひろばにツリーハウス(土台)をつくりました。
桐朋小の理念でもある平和教育。学校生活を通して平和の大切さを学んでいる子どもたちですが、その全貌はなかなか保護者にはわかりません。
さまざまな学年の子どもを持つ編集セクションのメンバー(【編集】)が、樋口先生(【樋口】)にコーディネートしていただき、中村校長先生(【中村】)と近藤先生【近藤】にお話を伺いました。
桐朋の考える「平和教育」とは?
【中村】1947年に桐朋学園として「第2の出発」をし、学園の教育理念として、1947年制定教育基本法の精神を据えました。この教育基本法は、日本国憲法の民主主義と平和の理念の実現を「根本において教育の力にまつべきもの」と宣言しています。ですから、桐朋学園は憲法の掲げる恒久平和の実現を目指して教育を進めています。このような歴史と意義を踏まえて、私たちは教育活動を行っています。
【近藤】学園創立当初から、子どもたちと平和の問題を考えたいと戦争や平和を扱った文学作品を教材に取り上げ、学んでいました。PTAでは、桐朋小の保護者の戦争体験を集め1冊の本として出版し、各家庭に配っていました。修学旅行で、朝鮮の人たちの強制労働によってつくられた長野の松代大本営跡地に行って、学んだ時もありました。広島に行くようになったのは 1996年からです。
【編集】井の頭公園の彫刻園に、北村西望が長崎の平和祈念像を制作したアトリエがあって息子とも行くんですが、彼の中ではまだまだ平和という概念と結びついている感覚はないようです。
【中村】戦争の事実や戦争に関わる作品に学ぶ機会を大切にするとともに、日常の中で、子ども同士でうまくいかないこと、意見の違いが出ること、遊びなどでぶつかること、…様々な場面でその違いを話し合ったりして、相手の気持ちや考えを理解し合って、相手もかけがえのない存在なのだ、と学んでいく。そうしたことが、実は大切な「平和」教育と思っています。
桐朋小は一人ひとりが自分自身の人生の主人公に、社会の創り手に育っていくことを教育目標の一つとし、その実現のために平和の創り手としての根っこを育てていくことを大切にしています。
【樋口】6年の先生から、平和教育は5、6年生にスポットがあたりがちだけれど、1年生の時から様々な教科で取り組んで、教科だけじゃなく、放課後だったり自治の活動だったり、いろいろな所でだんだんと点が結びついて、線になっていくようなイメージでいる、という話が届いています。息子さんが今は結びついてないとお話がありましたが、こういうベースになるものがあって、高学年になった頃に具体的につながっていくのかな、と思います。
【編集】低学年は日常生活のコミュニケーションで相手の気持ちを思いやるということを知っていき、そこから平和、日本とかだんだん興味が大きくなっていく、という感じでしょうか。
【中村】6年生の授業で、友だちの言ったことが自分では思いつかない考えだったりした時に「それいいね」「なるほど」って自然に言える。新しい視点に触れ、考えを膨らませることができますし、素直に口にできるのも素敵だと思いました。
【編集】子どもたちがお互いを認め合っているのを感じますね。否定しないのが素敵だなって思います。
【近藤】それをすごく大事にして育てているので、そこが桐朋小のよいところですよね。学校の役割は、「きっかけ作り」だと思います。2年生に『トビウオのぼうやはびょうきです』や『ちいちゃんのかげおくり』などを紙芝居で読み聞かせたのですが、そのあとすぐ、「日本はアメリカと戦争をやったの?」と、質問されました。戦争の歴史をわかりやすく話すと、初めて知ることなので、子どもたちは真剣に聞いていました。そして、高学年になると、自らも学ぶことによって関心も強くなり、感受性も豊かになり、考える力がぐっと伸びます。そういう時に、書物だけでなく、いろいろな人に出会わせることや、身体で感じられる具体的なものにつなげていくことが学校の仕事だと思います。 6年生の夏の研究の戦争レポートはとても充実した学びになっています。身内の方の戦争体験を聞くことができたり、親子で一緒に戦争の歴史を学ぶ機会になっています。それをクラスの皆で読み合い共有しています。
【編集】6年生の娘と調布飛行場によく行くので、夏休みの戦争レポートは調布飛行場の特攻隊の話を調べたら? と思ったのですが、娘は「動物が好きだから、戦争の時に動物がどうしていたかを調べたい」と。探してきたのが兵器として使われた動物の話で、私も初めて知ることがたくさんありました。彼女の中で学びをつかんでいたな、という気がします。自分の興味からというのは大事だなって思いました。
【編集】私の祖父が軍医をしていて満州に行っていた写真や、新聞で満州の状況を伝えている記事を低学年の息子に見せたら身近に感じて、知りたいという思いを抱えているので、そういうところをルーツと一緒に探っていきたいです。
【編集】息子たちは昨年、地球市民の時間でウクライナのご家族と交流させて頂きました。「子どもの自分でも人を殺してはいけないと分かるのに、何で大人たちはやるんだろう」という意見や「ウクライナの立場だけじゃなく、ロシアの話も聞くべきだ」と感想を書いたお子さんがいて、そういうことを考えられるんだ、と感動しました。子どもは決して幼いから分からない存在ではないですね。
3学期、いろいろな発表が行われています。芸術短期大学生の学生、先生と学びあって劇をつくったクラスも。