2024.5.30

幼稚園保護者の皆さんと「学ぼう会」 [Ⅱー391]

幼稚園の役員さんより、「今こそ考え合いたい『子どもの権利』とは『原点に子どもを』とは ~子どもの権利条約30年の節目にもう一度話し合いたい子どもの権利~」という大きなテーマをいただき、悩み学びながら準備をしてお話をさせていただきました。

役員さんは、「選択肢も多く、多くの判断が迫られる現代の子育てにおいて、自分は何を大切に生きていきたいか。/どんな子ども時代を過ごしてほしいか。/変わらずに大切にしたい原点とは。/こうした経験に基づくその先の視点も交えながら、考えたい。」と話をされました。こうしたことを考えたい、話し合いたいとされていることに、私もいっしょに話したいと思いました。

役員さんは、

★子どもの人権を守るとはどういうことか?  ・子どもらしい時間の流れ ・失敗して学ぶ経験 ・自分が選んで決められる自由 ・好奇心を育み学ぶ楽しさを知る(文字や数との出あい、先取り学習の弊害)  など

★子どもと目線を合わせるとは?  ・子どもも一人の人間であるということ  ・子どもの素晴らしさや面白さに気がつくことができる感受性、一緒に感動できる感受性を親も育みたい  など

そしてなぜこれらのことが大切なのか?  ・幼児期から児童期にむけて、この経験が今後の子どもたちにどう繋がっていくのか

を柱として考えられ、私は受けとり、どのように考えたのかを話しました。

まず、先週6年生八ヶ岳合宿に参加したことから話しました。合宿においても、子どもたちの<参加><自治>~自分たちで自分たちのことを決める。内容、場所、願い、企画、実行~を大切にしていました。桐朋らしく「自治」を大切にした取り組みをしていました。

 写真は八ヶ岳合宿の様子

(1)今こそ考え合いたい『子どもの権利』とは『原点に子どもを』とは ~子どもの権利条約30年の節目にもう一度話し合いたい子どもの権利~ (以下、レジメより)

1989年、子どもの権利条約が国連で採択。日本政府は1994年に批准。今年で30年。

●子どもの権利は、日本の現実にどこまで根付いたでしょう? 

たとえば、「強まるストレスのなか、その抑圧を他者に向けてイジメや暴力行為に走るか、内に向けての不登校、更に自傷行為から自殺にまで至る場合がある」、「統計もこれらの数値が、虐待も含んで、ここ数年上昇傾向」(堀尾輝久先生)があります。

〇こども基本法(2023年4月施行)は、「こどもの権利条約」にもとづいて「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」(第3条第3項)という理念を示しています。この理念を日常で取り組むことが大切だと考えます。

〇国連子どもの権利委員会の勧告(2017年、第4・5回)では、生命・生存・発達の項で「社会の競争的な性格により、子ども時代と発達が害され」「子どもがその時代を享受する」ことが出来なくなっている事への危惧が示され、教育の項で「あまりに競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放すること」を出されました。

子どもの人権を守るとはどういうことか?

➀子どもの権利のための特別な枠組みをとらえましょう。

・人権は、世界にいるすべての人間に保障すべきもの

・人は、条約、憲法で保障されている全ての権利を享受する。そして、国際的にも、国内的にも、子どもの権利保障のために、特別な枠組がつくられている。

・特別な枠組とは、子どもは、自らの身を守り、生活を営む能力がない、低いため、子どもならではの「特別な保護」を受ける必要がある。/子どもは、自律的な個人として生きる能力を身に着ける途上にある存在だから、成長する主体として尊重されねばならない。「大人の権利とは異なる考慮が必要」。権利行使は当人の意思に基づくが、当人の意思に任せるのが不適切な場合もある。当人の意思という原理でなく、児童の最善の利益の実現の原理と規定。(児童の権利宣言第2条)何が子どもの最善の利益かを慎重に考え、それを実現するために保護と教育を実施しなくてはならない。(木村草太さん)

「子どもは、自律的な個人として生きる能力を身に着ける途上にある存在だから、成長する主体として尊重されなくてはならない」ので、役員さんが言われている「子どもらしい時間の流れ」「失敗して学ぶ経験」「自分が選んで決められる自由」「好奇心を育み学ぶ楽しさを知る」などが大切なのだと考えます。

  写真は園庭の様子から 

子どもと目線を合わせるとは?

➀「子どもの最善の利益」(権利条約の7つの条項で繰り返す)

1959年 子どもの権利宣言でも使用。

〇成人への発達中の状態にあることを前提に、その状態の中から子ども自身のほんね、内面にある意図、分別をよみとる能力を、この条約のもとで責務を果す大人に求めている。子どもの身になって考える。(大田堯先生)

〇子どもが幼くて、自分でものごとについての判断力を十分に充分にそなえていない場合を考慮し、その意図を責任あるものが代行するばあいの気くばりのあり方として。

*「大人たちは子どものうちに大人をもとめ、大人になるまえに子どもがどういうものであるかを考えない」『エミール』ルソー/「おとなは、だれでも、はじめはみんな子どもだったはずなのに」サン=テグジュペリ

「子どもには子ども特有の感じ方、考え方、成長のしかたがある」ルソー「子ども」発見

 

「意見の表明」権(12条)

「自分の意見をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について、自由に自分の意見を表明する権利を保障する。その際、子どもの意見が、その年齢および成熟度に従い、正当に重視される」(12条) ⇔ 意見表明のための成熟、学習の必要

ことばに限らず、あらゆる形でのその子の意思の表明権、子どもの意思(語らない、行動で示すなど)、それらを大人自身が読みとる能力を。(大田堯先生)  

鴻上尚史さんへインタビュー。「一番大切なことは、『自分の頭で考えられる』児童を育てること」を学ぶ

(鴻上さんは演出家。桐朋芸術短大名誉教授)略

➄子どもの立場に立って、大人社会のあり方をかえよう

第一次世界大戦 ⇒ 「子どもの権利に関するジュネーブ宣言」(1924年)=「人類が子どもに対し最善のものを与える義務を負う」とい精神、「子どもたちの正常な発達保障」「搾取からの保護」など。平和な世界への期待 ⇒ 第二次世界大戦[子どもに再び最悪なものを] ⇒ 「世界人権宣言」(1948年)=「教育への権利」「母と子どもとは特別の補助および援助を受ける権利」など。道徳教科書に掲載、桐朋小6年で学ぶ。「子どもの権利宣言」=「発達の保障」 ⇒ 「子どもの権利条約」

子どもの命や健全な発育こそが、社会の関心や能力の最優先課題でなければならず、子どもはいい時代、悪い時代にも、通常のときにも、緊急事態のときにも、平時にも戦時にも、繁栄時にも不況時にも、この原則が確実に守られなければならない

この原則を政治的、経済的変化の中に根づかせることができれば、文明それ自体が大きな進歩を遂げることになる。文明の核心は弱いものや未来を守ることにある。子どもは環境と同じように弱く、しかもそれ自体が未来なのである。子どもの心身や情緒面での発育を守ることができないと、人間が抱えている困難がさらに手に負えないものになり、問題が解決されないで恒久化されることになる。成人の世界の誤りや失敗から子どもを守るための特別の手段をとることが、人類が抱えるもっとも基本的な問題の多くを究極に緩和するための第一歩となる」(『世界子ども白書』1990年) 

そしてなぜこれらのことが大切なのか?

・自身の人生の主人公へ

・参加、自治の経験 ~社会の主人公へ

 幼稚園では、信頼感や肯定感を育み、子どもがやりたいことを自分(たち)で決める、さまざまな参加の仕方が認められている、自分たちの願う環境構成をするなど、小学校では、「みんなの願いの木」「しぜんひろばづくり」など、子どもの権利〈自治、参加、意見表明〉を大切にした取り組みがあります。

つづく

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