2024.6.7

桐朋学園八ヶ岳高原寮で合宿をしました[Ⅱー392]

 写真はすべて6年八ヶ岳合宿

5月下旬、自然豊かな桐朋学園八ヶ岳高原寮とその周辺で、6年生合宿を行いました。「八ヶ岳で時間を忘れるくらい思い切り楽しく過ごす」という目標を立て、活動(森の中でのかんけりやどろけい、黒曜石で石器作り、清泉寮へハイキング、火起こし体験とバーベキュー、カレーづくりなど)、早朝散歩、夜の自然体験、キャンプファイヤー、自由遊び、大掃除などを企画、実行しました。

夜の自然体験では、川の流れる音、虫や鳥の声を聞いて、人間以外の事物に触れました。黒曜石のナイフ作りでは、実際に削ることを通して硬さに気づき、何回も叩きます。ハイキングでは、去年と同じコースを歩き、声をかけあって「去年より楽に歩けた」と聞きました。今年は、やまねミュージアムや八ヶ岳自然ふれあいセンターをじっくりみて(私は故星野道夫さんのコーナーでも感動)、大きな原っぱでたくさん遊ぶことができました。帰りに大きなヤマカガシも発見しました。友だち、先生らと協力して活動を楽しみ、自他の成長を感じることができました。人間の成長に自然はとても大切で、自らの身体を使って体験することでの気づき、生きている喜びを感じさせられるからです。そうした経験と実感を大切にして、地球環境を守っていきたいと思います。

寮の敷地にツツジやサクラソウ(準絶滅危惧種)が咲き、オオミズアオ(ガ)やノコギリクワガタなど多様な生物と出あいました。樹木の皮がはがれているのはシカの行為か、キセキレイなどの巣作りのあとかなどと想像し、様々な生物がともに生きていることを感じます。かくれんぼで、幅2~3mの大岩や高さ10m程の木々に隠れたりします。ハイキングではいたるところに火山礫があり、その間を通り抜けながら、悠久の自然を感じました。寮内の資料室に、岩は約1万年前の噴火による(推定)ものと記録がありました。はるかな時を経て、今ここに私たちがいる。私たちは地球の歴史に生き、人類の大きな命のつながりのなかで現在を生きています。

<子どもたちの感想から>

★夏も涼しかったけど、春はすごくすごしやすくて、「もうちょっとで夏で日ざしが強くて、でも空気は冬だからちょうどいいんだろうな‥」と思った。その後に活動をした。黒曜石のナイフ作りと火おこしと縄文日記作りである。ナイフ作りは黒曜石が意外と硬くて何回も叩いていた。ビデオの人はプロなんだな~とあらためて思った。火おこしは友だちがすごくけむりを出していて、コツを聞いたら「力を入れることだよ」と言われた。でも力を入れてもけむりが出なくて、もう少し何かもうちょっといい伝える方法がありそうだなと思った。縄文日記は案外難しくて、縄文人はシンプルに物事をとらえるのが上手なんだな~と思った。となると、昔の人は裁判とか上手だったのかな~。

★夜の活動をやった。最初、外に出た時、暗くて怖かった。ライトをつけながら音を聞いていたら、少し明るくなった。自然の音をきいた。川の流れる音、ふくろうの音、いろいろな音がきこえた。きいている時に、私は思った。虫、動物の生活をじゃましているかも。大声を出したり、虫を踏んだり…。虫は苦手だけど、虫もがんばって生活しているから。絶対じゃましないは無理だと思う。できるだけ、虫、動物の生活をじゃましないようにしよう! 東京では八ヶ岳みたいにあまり自然で遊んだり自然の音をきいたりできないから、今日体験できてよかった。

★今日はハイキングをした。「ウサちゃんコース」でけっこう疲れた。あと15分くらいって所で疲れがたまっていた。〇〇ちゃんが「がんばってー!!」って言っていた。〇〇ちゃん疲れているはずなのに、みんなに「がんばってー!!」って言ってくれて、少し体の疲れが減って、がんばろうと思った。元気なんでそんなにあるんだろう?もしかしてつかれてないのかな?とにかくすごい! いつでも元気で明るくて、原っぱで遊んだ時、遊びにさそってくれて、優しくて、司会とかハイキングの話し合いの時にも話をまとめてくれて、すごくいい人、すてきな人だな~~と思った。〇〇ちゃん、係のこと、遊びにさそったり、色々なことをしてくれてありがとう。ハイキングできてよかった。みんなも楽しんでいたと思う!

桐朋学園八ヶ岳高原寮は、1963年、教育活動の一翼を担う野外活動の拠点として開設しました。元理事長、校長の生江義男先生(最後に先生の詩を掲載)は、「この施設が原始の息吹を取り込み、うるおいと感動に満ちた生き方を学ぶ場になる」と期待し、現在もその精神を大切に活動しています。八ヶ岳高原寮をベースにして教育の可能性を感じ、これからもその可能性をひろげていきたいと強く思います。

帰京した次の日、初等部同窓会総会で合宿報告をすると、同窓生は当時のことを思い出し、かけがえのない経験が自身に刻まれていること、八ヶ岳は『心のふるさと』などと語られて嬉しくなりました。

八ヶ岳高原寮50周年(2013年)の際に、卒業生が『これぞ、まさに<センス・オブ・ワンダーランド!>』を記しました。一部引用させていただきます。卒業生の八ヶ岳への思いが伝わります。

 

(前略)この恵まれた環境の中で息子たちは、人が教えるに教えられないものを自ら感じ取っている様である。小一の夏、長男はクワガタ捕りがとても上手な、音楽科の先生の息子さん(小五)に出会い、朝昼晩と寮の森の散策に一緒に行かせて頂いた。その先輩との[素敵な出会い]をきっかけに長男は昆虫や森歩きに魅了されて行った。中略 まだほの暗い早朝に布団から抜け出し、夜は懐中電灯をもっていなくなってしまう。私たちも見知らぬ森より子どもの散策を安心して許すことができる。こうして彼は、毎年森歩きを楽しみながらクワガタを捕り、自宅で産卵させ成虫にまで育て、翌年寮にその昆虫たちを帰す事を今でも続けている。これは彼のライフワークになりつつある様だ。

続いて次男は今<ガ>に夢中である。幅十センチ程もある「イボタガ」を見つけ、胸がゾワゾワ腕には鳥肌が立っている私に、「もっとよく見て。顔と体と羽の模様!」と興奮している。勇気を出して凝視すると、円らな黒目でアレ?案外カワイイ。羽根の模様は非常に斬新でデコラティブであった。管理人さんが、「こんなに美しいガは見たことがない。よく見つけたね。」と声をかけて下さる。標本をつくる!とうれしそうである。

このように子どもたちは何日も寮にいて全く飽きることがないらしい。その姿に思い出すのは、高校時代、大好きだった生物の平林春樹先生から教えて頂いた、女性生物学者レイチェル・カーソンの<センス・オブ・ワンダー>という言葉だ。彼女は、「それは<神秘さや不思議さに目を見張る感性>のことである。子供時代にこの世の美しいものや未知なるものに触れた時の感激は、かけがえのないものであり、それは大人になってからの自分を支える土台にもなり得る。」と言っている。

私が下の子を追いかけている間に、上の二人は、朝、鳥のさえずりに耳を澄ます。鹿の親子やリスに出あうこともある。昼、樹液の豊富な木を見つける。木漏れ日が眩しい。夜、ひんやりとした闇のにおいを感じながら、虫たちとの出あいに期待に胸を膨らませている。八ヶ岳の自然が、高原寮が、彼らに<センス・オブ・ワンダー>を授けてくれている。そのオーラを浴びせてくれるのだ。そう、高原寮は、これぞ、まさに「<センス・オブ・ワンダー>ランド」なのだ。(後略)

生江先生の詩 高原寮に寄せて

いまだ/この地には

 語られざる詩がある/見えざる絵がある/聞えざる歌がある

 

今日この日から

 桐朋学園の若鳥たちは/新しい巣箱をおとずれ

 天然の息吹に/とりくむのだ

 

八ケ岳の山々は/瞬間の美をえがく

高原の草木は/盡く皆物言う

川俣のせせらぎは/妙なる調べをかなでる

 

そうだ

 この地から この空から

 若鳥たちは/原始時代の/あのすなおさを/ついばんでいくのだ

 

そして

 それが/明日への/創造の糧となることを(1963年6月30日)

一覧に戻る