はぬけきねん日~きのうのぼくと きょうのぼく~
朝の時間。教室。Jくんがはなしかけてきた。
「ねえ、きのうのぼくと きょうのぼく どこがちがうでしょう?」
腕を後ろに組み、私の前に立ってなにやらニヤニヤしている。
「んーーーー?どこかなあ。」
しばらく彼の顔や身体をじっくりと見る私。
「じゃーーーん!こたえは、はが ぬけましたあ~!」
J君は、いーーーという口をして抜けた歯のあたりを見せてくれた。
「ほうほう、いい隙間ができたね。はぬけきねん日おめでとう。
ここから、プリンとかゼリーとかにゅるにゅるだせるね。」
などと応えると、
「うん、うん。」
と言いながら満足気に着席していった。
J君が見せてくれた口のなかには、赤ちゃんの頃からお世話になった乳歯が抜けたあとに、出番をまっていた永久歯が顔をのぞかせていた。
低学年の学校生活では、いろんな場面で「あーーー!歯がぬけたあ。」という場面に出会う。小学二年生、8歳(7歳)の現在(いま)を生きている子ども(たち)にとって、抜ける・生え変わることは、特別なことなのだろう。J君の言葉をかりていうなら「きのうのぼく」と「きょうのぼく」がちがうということ。
そんな現在(いま)を生きている子どもたちと、共にいることが出来ることは、なんて尊いことなのだろうかと思いを馳せる。
金色の折り紙入りの小袋に抜けた歯を入れ、「はぬけきねん日おめでとう」と記す。受け取った子どもたちは、うれしそうにはずかしそうに、にかっと笑う。
すき間のできた口を大きく見せながら、にかっと笑う。
私もつられて、にかっと笑う。