地球を守る取り組みを [Ⅱ-399]
毎日、猛烈な暑さが続きます。今夏、「酷暑日(日最高気温が40℃以上、日本気象協会)」の予報が出た地域がありました。8月18日東京新聞で、目加田説子さんが「米航空宇宙局(NASA)によると、世界平均気温は今年の6月まで13カ月連続で記録更新されており、7月22日に世界平均気温も観測史上最高を更新した。日本でも先月は1898年の統計開始以来、最も気温が高い7月だった」と書いていました。さらに、「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える『パリ協定』の目標を達成するうえで、地球の大気が許容できる二酸化炭素の排出量は2024年時点で、残り約2千億㌧とされる。世界は今、年間400億㌧排出しており、このままでは5年で達する」と、「危機に瀕」していることを述べていました。
私たちは、体調を崩す(命を脅かす)ほどの暑さを過ごしています。ますます酷くなる可能性を予測する中で生きています。個人個人で気候変動対策をしていかなくてはなりません。気候変動に向き合って、保育、教育をすすめていきます。家庭や社会、さまざまな人たちと協同して気候変動対策をすすめていかなくてはならないと考えます。
8月、八ヶ岳高原寮に行って、森を歩いてきました。
1、地球環境を守る
(1)気候変動 -危機の進行
2018年公表の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告に、「1.5℃目標は速ければ2030年ころに突破されてしまう」とあります。そして、「工業化以降の全球平均気温は現在約1℃上昇しているが、今後『パリ協定』において世界共通の長期目標として設定された2℃まで上昇したと仮定した場合、日本国内での猛暑日の年間発生回数は現在の1.8倍になると推定された。これは、我々が過去にほとんど経験したことのないような頻度で猛暑の発生が増加することを意味している」(気象研究所、東大大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チーム、2018年)などを予測しました。現在の「酷暑」は、「過去にほとんど経験したことのないような頻度で猛暑の発生が増加」している現実を生きていると考えます。
2019年9月、日本学術会議会長より、『「地球温暖化」への取組に関する緊急メッセージ』が出されました。はじめに、「私たちが享受してきた近代文明は、今、大きな分かれ道に立っています。現状の道を進めば、2040 年前後には地球温暖化が産業革命以前に比べて『1.5℃』を超え、気象・水災害がさらに増加し、生態系の損失が進み、私たちの生活、健康や安全が脅かされます。これを避けるには、世界の CO2排出量を今すぐ減らしはじめ、今世紀半ばまでに実質ゼロにする道に大きく舵を切る必要があります」と呼びかけられました。「人類生存の危機をもたらしうる『地球温暖化』は確実に進行」しており、「『地球温暖化』抑制のための国際・国内の連携強化を迅速に進めねばなりません」とありますが、その取り組みは十分ではありません。
2023年、気象庁は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第6次評価報告書統合報告書の公表。それは、「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した。世界全体の温室効果ガス排出量は増加し続けており、持続可能でないエネルギー利用、土地利用及び土地利用変化、生活様式及び消費と生産のパターンは、過去から現在において、地域間にわたって、国家間及び国内で、並びに個人の間で不均衡に寄与している(確信度が高い)。」とありました。また、「大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている。人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている。このことは、自然と人々に対し広範な悪影響、及び関連する損失と損害をもたらしている(確信度が高い)。現在の気候変動への過去の寄与が最も少ない脆弱なコミュニティが不均衡に影響を受ける (確信度が高い)。」などと書かれ、危険がさらに増していることが報告全体から伝えられました。
(2)地球環境を守るために
(1)気候変動危機の進行を、私たちは話し合い、取り組んできたのか。自分自身の反省を込めて、今からでも、私たちができることを最大限取り組みたいと考えます。
➀初等部として(ひろがることを願って)
子どもには子ども時代を謳歌する権利があります。そのための環境が大切です。
私たちは、幼児期、児童期の子どもたちに、地球環境のすばらしさを実感してもらい、大切にする気持ちを育てていく課題があります。園、学校、地域、都内、八ヶ岳(今回の3枚の写真は、八ヶ岳高原寮です)などで豊かで多様な体験を生み出し、その体験から自分(たち)で環境の大切さや意味をつくり出していくことを励ましていきたい。
そのための幼児期、児童期の保育、教育はどうあるべきか、園、学校の役割が問われています。中高学年では、地球環境(危機)を教育課程に位置づけ、学習、具体的な対応、行動をしていくことが必要と考えます。
初等部から、地球環境を守る取り組みをひろげていくことが大きな課題です。
➁地域と共同、地域への呼びかけを
初等部がある調布市は、「調布市ゼロカーボンシティ宣言」として「調布市は2050年『二酸化炭素排出実質ゼロ』を目指しています」。そのために、調布市の「二酸化炭素排出」の割合を「工場が少ない調布市は約8割が住宅やビルなどの『建物』からの排出」、「調布市民一人当たりに換算すると、家庭部門での二酸化炭素排出は年間約1300kg。その重さは深大寺そばに換算するとなんと約4300人前!」と示しています。
取り組みの紹介では、「地産地消(輸送時には多くの二酸化炭素が出ます)」「節電・節水(暖房・冷房のつけっぱなしなど、多くの二酸化炭素を出します)」「移動手段を考えよう!(公共交通機関に)」「リユース品の活用(製品の製造、廃棄の際にも二酸化炭素は排出)」を呼びかけています。市の取り組みとして、「環境に配慮した物品等の選択」「新築のZEB Ready化(50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物)」「公共施設への100%再エネ電力導入」「公用車の電気自動車への切替」が示されています。*現時点での排出量(と削減)はどれほどか? *取り組みによる変化については? など学んでいきたい。
子どもたち、私たちが住んでいる自治体の取り組みを学び、交流して考え合いたい。そして、こうした呼びかけに対して、初等部、さらにひろげて共同していけるように話し合いたい。
今後、家庭や地域との共同も視野に入れた学習と運動をひろげていきたい。その取り組みを初等部通信、外部の方向け掲示板などで知らせていきたい。*その先に、「桐朋学園(初等部)地球沸騰化への取り組み 緊急メッセージ」として、「桐朋学園初等部では、地球沸騰化に対して、…」という取り組みを知らせたい。こうした願いをいだいています。
研究で行った奈良教育大学前の交差点では鹿が歩いていました。
➂気候変動の進行は、人権侵害という捉えもされています。たくさんの人と協同して対策に取り組みたい
「気候危機がもたらす猛暑や水害の増加で命や健康が脅かされているのは人権侵害です」。日本弁護士連合会に人権救済申立てがされています。人権救済を申立てたのは、市民団体「気候訴訟ジャパン」で、水害で家族を亡くした人、高温や豪雨で農業被害にあった人、気温上昇した未来で生きていくことができるのか危機感をもつ人などが、日本政府の不十分な気候変動対策、気候変動による災害、農業被害などで多くの人命、暮らしが奪われていることに対するものです。「政府による強固で具体的な気候対策」「災害や熱中症による被害を人権侵害と定義する法律の整備」「気候変動が人権侵害だとする訴訟の原告になる資格を広める」などを求めています。
世界に目を向けると、オランダ環境NGOが政府に温室効果ガス排出量の削減目標引き上げなどを求め提訴。2019年、オランダ最高裁判所は「未来のリスクではなく現在の危機であり、差し迫った命と人権の問題」とし、政府に温室効果ガス削減の強化を命じています。ドイツでは、ドイツ連邦憲法裁判所が政府の気候保護法が将来世代の権利を侵害していると判決を出し、気候保護法の改正案が閣議決定されました。他にもあります。
私たちは地球市民として、地球環境危機に向き合い、協同して向かいたい。山本良一さんは、『気候危機』(岩波ブックレット)で、「現在の気候危機は、人間活動が原因の温暖化ガスの大量排出が主原因」「地球温暖化により、熱波、豪雨、干ばつなどの極端気象の増加、激化が起こっていること」などを述べた上で、人間活動において世界のCO2排出量を今すぐ減らし、2050年までに実質0にする必要があると述べています。山本は、仮に実質0にしても地球温暖化が続くことから、「人間活動起源の温暖化ガスによる地球温暖化はたとえ排出量をゼロにしても1000年は継続することを考えると、ただちに全員で排出量を削減」することを訴えます。
オランダの気候訴訟では、市民が石油企業に勝利したという報道がありました。2021年5月、ハーグ地裁はNGOの訴えを認め、石油企業に対して、「同社グループのバリューチェーンで排出されるCO2排出量を、30年末までに19年比で45%削減することを命じる判決を下していた」(日経ESG)というものです。この判決は企業に数値目標を示してCO2削減を命じたことに加え、気候変動を人権問題として削減義務を認めたことで世界に衝撃を与えました(が、日本では大きな報道となりませんでした)。人権と命の大事さを訴えての結論に、私は励まされました。
繰り返しますが、私たちは地球環境における「危険」をつくり、健康と命を脅かしています。それを変えていく取り組みをすすめ、地球の現在と未来を大切にしていきましょう。(続きは、別の機会に)