2024.11.23

私たちが使う「地球市民」「地球時代」 [Ⅱー409]

桐朋小学校は、「地球市民の時間」を創設し、実践をしています。今回は、「地球時代」「地球市民」ということばについて、教員間で学習している内容を述べてみます。

➀「全世界の国民」 ―日本国憲法、1947年教育基本法 前文から

教育について考える際に、立ち戻るのが日本国憲法、1947年教育基本法です。教育基本法の精神を桐朋の教育理念の基本に据え、今日まで受け継がれています。

日本国憲法 前文

…日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。… 下線は、中村。以下も同様

1947年 教育基本法 前文   *日本国憲法と両輪  *桐朋学園の教育理念

…われらは、さきに、日本国憲法を確定し民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示したこの理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。/われらは、個人の尊厳を重んじ真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。…

「日本国民」だけではなく、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」(同上)、「世界の平和と人類の福祉に貢献」(同上)と、世界中の人々、「地球市民」として実現させていくこと。実現のために保育、教育を「普及徹底」すること。不断の努力をすることを、私たちは大切にします。

➁「地球時代」という捉えについて、堀尾輝久さんより学びます

堀尾さんは、「地球時代」を「地球上に存在するすべてのものが一つの運命的な絆によって結ばれているという感覚・認識が、地球規模で広がり、共有されていく時代。第二次世界大戦が終結した1945年を起点とする現代認識」と定義をしています。

参考『地球時代の教養と学力―学ぶとは、わかるとは』『未来をつくる君たちへ 地球時代をどう生きるか』堀尾輝久著

堀尾さんは2つの著書において、「地球時代的感覚が成立するのは、第二次世界大戦が核爆弾をもって終結した1945年です。もう一度戦争が起きたら地球自体が消滅する。そういう危機意識が広がり、地球規模で本当の平和の時代を考えようという感覚や思想が芽生え共有されていく。その意味で、1945年を歴史の大きな結節点」と述べています。

堀尾さん以外にも、国際政治の坂本義和さんが『地球時代の国際政治』(1990年)で、1945年を「地球時代とグローバル・デモクラタイゼイションの一つの起点」として捉えています。

いつを結節点とするかは検討課題と考えますが、現在において、「深刻化する地球の環境問題」「戦争、紛争」など世界の課題に直面している私たちは、現在を「地球時代」と捉え、取り組んでいくことが必要だと考えます。

➂地球の課題に、私たちは「地球市民」として取り組む

「深刻化する地球の環境問題」「戦争、紛争」など、世界(地球)の課題に直面する私たちは、その解決に取り組んでいかなくてはなりません。ではどのように取り組むのか。たとえば理科専科Nさんの机には、気候変動、環境についての本がたくさん置かれています。理科では、こうした本にも学び、実物を通して「自分ごととして」、「深刻化する地球の環境問題」に向き合おうとしていることをPTA『わかぎり』座談会で学びました。

Nさんの机にあった『プラスチックのうみ』(ミシェル・ロード作、ジュリア・ブラットマン絵、川上拓土訳*小学5年生、小学館)を読みました。

「いま うみで なにが おこっているのか」

ごみです。/ぼくたちがすてた ごみです。」 

⇒「さかなです。/ぼくたちがすてた ごみのなかで およぐ、さかなです。」

⇒「アザラシです。/ぼくたちがすてた ごみのなかで およぐさかなを たべる、アザラシです。」

⇒「あみです。/ぼくたちがすてた ごみのなかで およぐさかなを たべるアザラシに からみつく、あみです。」

⇒「ぎょせんです。/ぼくたちがすてた ごみのなかで およぐさかなを たべるアザラシに からみつくあみをすてた、ぎょせんです。」 

⇒「グルグルまわる うみのながれです。/…」

⇒「ウミガメです。/…」

⇒「プラスチックです。/ぼくたちがすてた ごみのなかで およぐさかなを たべるアザラシに からみつくあみをすてた ぎょせんをゆらす うみのながれにのって およぐウミガメに ひっかかる、プラスチックです。」 ⇒「まいにち まいにち おおきくなっていく ごみのうめたてちです。/…/ごみのうめたてちです。

⇒「にんげんです。/…ごみのうめたてちに ごみをすてる、ぼくたち にんげんです。」…… と続いていきます。

たくさんの命が育つ海、私たちとつながる海、世界の海で起きているプラスチック問題に着目します。私たちが起こしている問題が、世界の海の問題として描かれていました。絵本そのものや絵本に描かれているものなどを教材として、実際に触れるなど、実体験を大切に取り組んでいます。  

 

世界的な気候危機、深刻化する気候変動と対応など

2020年気候変動枠組条約26締約国際会議で、温室効果ガス「目標1・5℃」に抑え、地球の危機を減らすことを目指していますが、実現は大変難しい。(「日本国内のみならず、世界各国から気候変動に伴う甚大な気象災害が頻繁に報告されています。実際、多くの科学者が警告したように気候変動は激しさを増しており、2023年には既に産業革命時から1.48℃の上昇が報告されるなど、パリ協定が掲げる産業革命以降の温度上昇を1.5℃以内に抑えるという目標の達成が危機的な状況にあります」『今こそ、まっとうな日本の気候政策を創ろう(2024年)』)私たちと世界のたいへん深刻な問題です。 

私たちは、経済(成長)を支えてきた大量生産・大量消費社会で生きてきました。「気候変動は、裕福な生活様式の過剰消費と密接に結びついている」と捉えています。

裕福な生活様式により、二酸化炭素を多く排出しているのは、先進国の富裕層や先進国の人々、私たち。

二酸化炭素の排出によって、多くを排出していない人たちが気候変動の影響を強く受けています。

私たちの身近にある<スマホ、ノートパソコン、デジカメ、車>。こうしたものを動かすには、リチウムイオン電池が不可欠です。リチウムイオン電池は、レアメタルを大量に使用します。レアメタルのリチウムを、チリが多く産出。先進国の気候変動対策のため、石油の代わりに別の資源が採掘、収奪されている現実があります。たとえば、車については、ガソリン車は二酸化炭素を排出するので、気候変動対策として、電気自動車の普及などが言われました。

コバルトもリチウムイオン電池に不可欠です。コバルトをコンゴ民主共和国で多く採掘。採掘には、奴隷労働、児童労働が蔓延しています。賃金は1日あたり1ドルということも。また、トンネルで採掘作業をすることで、有害物質を吸い込みながらの作業となり、からだを壊し、精神疾患も。子どもの死傷者も出ている現実があります。

堀尾さんは前掲書において、「先進国の富がその裏側に貧困を蓄積しているという国際経済の構造把握を媒介にしながら、日本の子ども、世界の子どもが重なってくる、そういうとらえ方が重要」と述べています。そして、「憲法の『日本国民』の含意と表現が問い直さねばなりません。民族的自覚とともに、国際市民さらには地球市民としての自覚も求められています。」(前掲書)と課題を指摘しています。

私たちの生活と環境危機への取り組みがどのようにつながっているのか、環境危機への取り組みによって、他国ではどのようなことがあるのかを捉えることが問われています。地球の課題を自分ごととして向き合っていく必要があると考えます。  写真1枚目は、11月20日に見学をさせていただいた長野大日向小学校。写真2枚目は、大日向小学校の裏山。写真3枚目は、大日向小学校校舎から前にある山を撮りました。写真4枚目は、朝4時半過ぎに自宅を出て大日向小に向かう時に駅前で撮りました。 

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