『子どもを信じること』 [Ⅱー411]
題名は、最近読んだ本(『子どもを信じること』*田中茂樹著、さいはて社、2011年)からいただきました。お世話になっている先生より、著者の田中茂樹さん(医師・臨床心理士)を紹介していただきました。*構成は、Ⅰ 診察や面接で気がついたこと Ⅱ 親子の関係 Ⅲ 子どもとのコミュニケーション
田中さんの本を読むと、ご自身の子育ての戸惑いや悩み、診療、面接などを通して、
「本来子どもが持っている力を信じる」
「子ども自身が、自分が幸せになるために、なにをどうするのが最も望ましいのかを、自分で感じ、考え、そのこととしっかり向き合えるようになる」
「子どもに小言を言わず、やさしく接する」
などを大切にされてきたことがわかりました。私がこれまでに失敗、葛藤してきたことにも通じる内容で、学ぶことがたくさんありました。
6年生 平和ポスター 「子どもたちは、それぞれに修学旅行や平和学習を通して感じた思いから、訴えたくなったことをポスターとして表現しています。」
先日、卒業生(桐朋幼卒、現在、桐朋中学生)より、研究『様々な生物を骨格から学ぶ ~トノサマガエル、ワニ、ニワトリ~ 』について話を聞きました。研究誌もいただいて、皆さんにその内容をお伝えしたいと思いました。
彼は、小学5年生の八ヶ岳合宿ハイキングで、川辺で一本の骨と歯(3本くっついて)を拾い、シカの骨ではないか、「本当はなんの骨か」と問います。大学の「いのちの博物館」へ行って骨格標本を調べ、持ち帰った骨と比較すると、予想通りシカの(中足)骨でした。歯もシカのようで、よく食べたからすりつぶされて、茶渋のように着色したことがわかったそうです。
標本を見ていたら、頭骨がかっこいい、生き物によって骨格がこんなにも違うものなのかと圧倒され、すっかり骨が好きになってしまったそうです。
そして、トノサマガエルの骨格標本、ワニの手の骨格標本、ニワトリの骨格標本を作ります。
例えば、「トノサマガエルの骨格標本を作る」では、お兄さんが高校でカエルを解剖すると聞き、うらやましがっていると、お兄さんが生物の先生に何体かいただけないかと相談してくれて、実際に解剖することができました。お尻からメスを入れて腹部、胸部まで広げ、筋膜と皮の間にメスで外し、部分的には自分の指で押し広げる感じで皮を剥いでいくなどをしました。そして、「手の指が後ろは5本、前は4本であった。」「太もも、ふくらはぎの筋肉が発達していた。」「上あごの歯が思っていた以上にギザギザで一列だった。」などを「発見」します。「考察」では、「上あごの歯が思っていた以上にギザギザで一列だったことから考えると、カエルは餌を丸呑みするイメージが強かったのだが、ミミズなどをガシッと咥えることがけっこうあるかもしれない。(中略)歯は獲物をかみ切るためではなく、餌を逃げないようにとらえておくようにするもののようだ。上下のあごに歯があると、餌が切れてしまう。下あごに歯が無いのは上の歯に餌を押し付け、ホールドするための構造なのかもしれない。」などと書かれていました。
ニワトリの骨格標本を作り終えた後、その後をどうするか、骨格標本を作るための生き物をどのように手に入れればよいか、家の中で安全に骨格標本にするにはどうするのかなど、「分からない事の方が大きくて先にすすめないと感じていた」と書いています。
そして、大阪自然史博物館の「なにわホネホネ団」との出あい、活動への参加に繋がります。団では、博物館での骨格標本を作る手伝いで、アライグマの皮を剥いだり、アナグマ、タヌキの徐肉をするなどの活動をしていきます。
アライグマ1対の皮を1人ではぐという経験では、10時間集中したそうです。「何かをこんな長時間、集中してやり続けたのは初めてで、次の日も博物館に行きたかったけど体がゆうことをきいてくれないくらい疲れはててしまった。」そうです。「特に大変だったのは指先」で、「何回も自分の指をメスで刺してしまった。野生動物なので、どんな菌があるか分からないこともあり、抗菌作用のある軟膏を湿布してバンドエイドする。気持ちは刺してしまうごとに、やる気がそがれていく気がしたが、もうここまできたらやるしかないと自分を言い聞かせてジャストドゥイットの精神だった。」と、率直な感想も書いていました。
また、自分の研究からの広がり、繋がりについても書いています。「皮を剥ぐ時には、皮や内臓だけでなくついていたマダニも全てビンに入れて保存していた。マダニまでですか? と聞いたら、「何が未来の役に立つか分からないよ。このマダニがついていたというのが環境という視点から研究する人がでてくるかもしれない。もし、すてちゃったらその研究には資料として出せないからね」と話していた」ことや、「飼育されている中で肩が痛そうにしていたが治療には結びつかず痛みを抱えながら別の死因で亡くなったメガネグマが作業にあった。獣医さんの解剖後、ここでさらにみんなが注意しなから除肉作業中に調べることで炎症があることが認められ、飼育していた動物園にちゃんと報告してもらった。」などと、自分の研究が他と繋がり、大切なことだと理解していく様子も伝わってきました。
彼の成長に驚き、嬉しくなりました。彼は幼稚園時代から、好きなことへ没頭していた人だと振り返りました。そもそも生き物がとても好きでした。好きなことを大切にしていたご家庭、幼稚園時代から、学園や社会の中での育ちが繋がります。
彼の姿から、田中さんのいう「本来子どもが持っている力を信じる」「子ども自身が、自分が幸せになるために、なにをどうするのが最も望ましいのかを、自分で感じ、考え、そのこととしっかり向き合えるようになる」ことの大切さを教えられました。彼を支えているご家族は、「子どもに小言を言わず、やさしく接する」ことを続けてこられたと思います。
あらためて、生きていく上で基本となる行為については、「まず好きになる」ことが大切であると思いました。
皆様、2学期もたいへんお世話になり、ありがとうございました。