2025.7.23

地球環境危機に直面する現代 [Ⅱ‐431]

2025年もたいへな暑さが続いています。

世界気象機関(WMO)は、2024年の世界平均気温が、産業革命前の水準と比べて1.55度上回ったと発表しました。気候変動対策の国際ルール・パリ協定で、気温上昇を抑える目標とされる1.5度水準を単年で初めて超えたのです。日本の気象庁によると、日本の平均気温も観測史上最高でした。

 

地球環境危機の進行と保育、教育の課題

近年、特に6~9月に、猛暑のため、外で自由に遊ぶことができない、グラウンドの使用ができない日が多くあります。最上階の暑さが酷いため、教室空調の設定温度を下げて使用をしています。窓には遮熱シートを貼り、風の通りをよくするなどの対応をすすめ、子どもたちの健康を守る取り組みをすすめなくてはなりません。

科学者のヨハン・ロックストロームらに学んで、地球環境危機を9つの視点でとらえると、「気候システム」は「危険ゾーンに突入」し、現時点でも「異常気象の頻度が増加し、その現象も極端になっている」状態です。私たちの現在がすでにそのことを示していると考えられるのではないでしょうか。

2019年、日本学術会議会長より、『「地球温暖化」への取組に関する緊急メッセージ』が出され、その内容は「私たちが享受してきた近代文明は、今、大きな分かれ道に立っています。現状の道を進めば、2040 年前後には地球温暖化が産業革命以前に比べて『1.5℃』を超え、気象・水災害がさらに増加し、生態系の損失が進み、私たちの生活、健康や安全が脅かされます。これを避けるには、世界の CO2排出量を今すぐ減らしはじめ、今世紀半ばまでに実質ゼロにする道に大きく舵を切る必要があります。」というものでしたが、私たちの取り組みは不十分で、危機は進行しています。そして、「いったん上昇した気温を元に戻すことはほぼ不可能なので、このままの状況が続けば『温暖化』では収まらず、まさに『沸騰化』が常態となります」と言われてきました。

私たちは社会の担い手として、地球環境危機の進行に対する取り組みを具体化することとともに、保育、教育においてどのように向き合うのか大きな課題です。

子ども一人ひとりには、子ども時代を謳歌する権利があり、そのための成育環境づくりをすすめなくてはなりません。それは、幼児期、児童期、青年期に、地球環境のすばらしさを実感し、大切にする気持ちや考え、行動を励ましていくことが土台として必要です。園や学校、地域などで豊かで多様な体験を生み出し、その体験から自分(たち)で環境の大切さや意味をつくり出していくことをすすめていきたいと考えています。

1学期、暑さのために時間は限られていましたが、園庭やしぜんひろばの木陰で過ごす気持ちよさ、風の心地よさを感じながら過ごす子どもたちの姿がありました。学園では地下水をくみ上げて使わせてもらっていますが、水の冷たさも感じます。しぜんひろばの川の流れ、いろいろな生き物がそこで暮らしているなども、子どもたちの成長にはなくてはならないものだと思います。

音楽の道に進む卒業生が、「音楽というのは身近な所から感じとれます。例えば、しぜんひろばで耳をすませると、木が揺れる音や葉っぱの擦れる音、鳥の鳴き声や虫が動く音、すべて音楽なんですよ。音の調和があり、波の重なりが奏でられています。」と言っていました。大切な世界がここにある、私たちの過ごす場所だと思いました。

世界では ―グレタ・トゥーンベリさんの訴えから、世界へひろがる声、行動

2018年、高校生のグレタさんは、毎週金曜日に学校を休んで、スウェーデンの国会議事堂の前で座り込み、地球温暖化への対策を訴える活動を1人ではじめました。この活動は世界中に広がり、「地球を守るために僕たち若い世代が自分たちの未来のために動かないといけない」などと、集会やデモで訴え続けています。日本で『未来のための金曜日』など多様な活動がひろがっています。私たちはそうした声と行動に学び、地球環境への責任をもち、対策を行っていかなければなりません。

2019年、国連の温暖化対策サミットにおけるグレタ・トゥーンベリさん(16歳)の演説を読みました。この演説の「あなた方」とは、サミットに参加した各国の代表であり、地球の状況を理解せず、必要な政策、解決策をとっていない私たち大人と捉えれば、この演説より学ぶことの意味は大きいと考えました。 

私が伝えたいことは、私たちはあなた方を見ているということです。そもそも、すべてが間違っているのです。私はここにいるべきではありません。私は海の反対側で、学校に通っているべきなのです。

あなた方は、私たち若者に希望を見いだそうと集まっています。よく、そんなことが言えますね。あなた方は、その空虚なことばで私の子ども時代の夢を奪いました。

それでも、私は、とても幸運な1人です。人々は苦しんでいます。人々は死んでいます。生態系は崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね。

30年以上にわたり、科学が示す事実は極めて明確でした。なのに、あなた方は、事実から目を背け続け、必要な政策や解決策が見えてすらいないのに、この場所に来て「十分にやってきた」と言えるのでしょうか。

あなた方は、私たちの声を聞いている、緊急性は理解している、と言います。しかし、どんなに悲しく、怒りを感じるとしても、私はそれを信じたくありません。もし、この状況を本当に理解しているのに、行動を起こしていないのならば、あなた方は邪悪そのものです。

だから私は、信じることを拒むのです。今後10年間で(温室効果ガスの)排出量を半分にしようという、一般的な考え方があります。しかし、それによって世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません。人間のコントロールを超えた、決して後戻りのできない連鎖反応が始まるリスクがあります。50%という数字は、あなた方にとっては受け入れられるものなのかもしれません。

しかし、この数字は、(気候変動が急激に進む転換点を意味する)「ティッピング・ポイント」や、変化が変化を呼ぶ相乗効果、有毒な大気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして公平性や「気候正義」という側面が含まれていません。この数字は、私たちの世代が、何千億トンもの二酸化炭素を今は存在すらしない技術で吸収することをあてにしているのです。

私たちにとって、50%のリスクというのは決して受け入れられません。その結果と生きていかなくてはいけないのは私たちなのです。

IPCCが出した最もよい試算では、気温の上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は67%とされています。しかし、それを実現しようとした場合、2018年の1月1日にさかのぼって数えて、あと420ギガトンの二酸化炭素しか放出できないという計算になります。

今日、この数字は、すでにあと350ギガトン未満となっています。これまでと同じように取り組んでいれば問題は解決できるとか、何らかの技術が解決してくれるとか、よくそんなふりをすることができますね。今の放出のレベルのままでは、あと8年半たたないうちに許容できる二酸化炭素の放出量を超えてしまいます。

今日、これらの数値に沿った解決策や計画は全くありません。なぜなら、これらの数値はあなたたちにとってあまりにも受け入れがたく、そのことをありのままに伝えられるほど大人になっていないのです。

あなた方は私たちを裏切っています。しかし、若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来の世代の目は、あなた方に向けられています。

もしあなた方が私たちを裏切ることを選ぶなら、私は言います。「あなたたちを絶対に許さない」と。

私たちは、この場で、この瞬間から、線を引きます。ここから逃れることは許しません。世界は目を覚ましており、変化はやってきています。あなた方が好むと好まざるとにかかわらず。ありがとうございました。(出典 NHK news web)

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