現在を「地球危機」「気候非常事態」と考えて、地球市民としてどう生きるか [Ⅱー357]
(1)「地球沸騰の時代」といわれて
「7月、学校では熱中症予防指数「WBGT31℃より下」の基準を下回らず、野外活動、遊びが出来ないことがたくさんあった」、「今夏はとても暑い」、「この暑さはいつまで続くのだろう」…。
9月2日朝日新聞には、「観測史上最も暑かった今年7月に続き、8月もここ126年で最も暑かった」「地球温暖化に加え、太平洋高気圧の勢力が強かったことなど、気温を上げる多数の現象が6~8月に切れ間なく続き、記録的な暑さになった」などと書かれていた。
8月2日朝日新聞には、「2023年7月、日本の観測史上、最も平均気温が高い。1898年からのデータでは、これまで1978年が最も暑く25.58℃だったのを更新した」とあり、約120年間で、7月の平均気温は1.5℃あがったという。同記事によれば、世界も同じで、世界気象機関WMOと欧州連合EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービスC3S」は、「7月の世界の平均気温が観測史上最も高くなる見込みと発表した」。世界の平均海面水温も通常より大幅に高く、海洋生物への影響などが懸念される。国連のグテーレスさんは「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が来た」という。
この現象は、今年に限ったことではなく、今後も続く可能性が高い。なぜなら、温暖化の原因は、「化石燃料を燃やすことで出る温室効果ガス」であり、1992年「気候変動枠組条約」では「大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」となったが、「2022年にはエネルギー関連の二酸化炭素排出量は世界全体で過去最多の年間約338億㌧になった」など、排出量は増え続けているからである。排出量の8割を占めるのが日本、中国、アメリカなどである。3月国連気候変動に関する政府間パネルIPCCの報告書では、排出を2035年までに60%減らす必要があると報告された。ところが具体的な提案、取り組みは示されず、私たちの大きな課題である。
9月、しぜんひろばより
(2)なぜ現在を問題とするのか。そして2030年度までを問うのか
2009年、気候科学者のケビン・ノーンらが「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)」を発表した。2018年、「気候変動に関する政府間パネルIPCC」は、「2℃の地球温暖化に近づくと、世界中の何億人もの人々に耐えがたい苦痛と経済的困難がもたらされるという強力な証拠を提供」した。
2019年、二酸化炭素排出許容量は大きく、10年以内に「予測不可能で不可逆的な変化の起きる」可能性が高い。現時点で「地球の安定性を保つプロセスは限界に来ている」「地球はすでに危険ゾーンにある」と捉える。(*『地球の限界』オーウェン・ガフニ―/ヨハン・ロックストローム著、河出書房新社、2022年。*『グリーン経済学』ウィリアム・ノードハウス著、みすず書房、2023年を参照)
「地球の平均気温は、過去一万年のあいだで上下にわずか1℃しか変動していないことがわかっている。この安定性が、完新世の特徴である。」「現在、地球の平均気温は1.1℃上昇しており、その影響が見えはじめている。」過去二〇年間に起きた記録的な高温、驚異的な氷の融解、サンゴ礁の死滅などが起きている。
限界値を超え、転換点を超えると、「予測不可能で不可逆的な変化の起きるリスクが高ま」るという。そうなっては遅いのだ。
以下は、『地球の限界』に記述されていた事例。他にも、永久凍土の融解、山火事、干ばつ、大洪水など、いくつも事例があげられている。
・氷に閉じ込められている温室効果ガス。北極圏の永久凍土層には、1.7兆㌧の炭素が含まれている。地球上でもっとも速く温暖化が進んでいる地域。
・グリーンランドは1992年以来、ほぼ4兆㌧の氷を失っている。海面が上昇している。
・アマゾンの炭素貯蔵量は減っている。2030年には、アマゾンの熱帯雨林は炭素の貯蔵源から大きな排出源に変わる可能性がある。
右 広島より被爆アオギリをいただいて、大きく育ちました
(3)私たちは地球市民としてどう生きるか。教育は何ができるのか(ここからは、別の機会に書きます。今年も、実践をしていきます)
①私たちは地球市民としてどう生きるか
危機の解決主体は今社会を担っている大人自身。私たちが本気でこの課題に取り組む。
➁教育は何ができるのか
今年の実践を取り上げたい。
国連子どもの権利委員会は、8月28日、気候変動によって子どもの権利条約で定められた権利が脅威にさらされているとして、各国に、「気候変動がもたらす現在および将来の危害から子どもの権利を保護する措置をとるよう求める指針を発表」した。「子どもが清潔で、健康で、持続可能な環境に暮らす権利がある」のです。
6年生との授業で、この絵本に学びます。この絵本の作者より、学ぶ機会をもつ予定です