「みんなと考えたい、世界のこと」 [Ⅱー453]
6年生との授業「トピックス」で、本校の卒業生 荒ちひろさんにお話をしていただきました。
荒さんは、現在、朝日新聞国際報道部に勤務されています。子どもたちと一緒に、現代社会、世界について学び、地球市民として見方や考えをひろげたいと願って、荒さんに話をしてもらいました。
荒さんは、「みんなと考えたい、世界のこと」をテーマに、以下のことを話してくれました。
➀どんな小学生だったか
「書くことが得意だったの?」「No!むしろ作文は苦手意識が…」。今も苦手な気持ちを持つと話してくれて安心をした人、「私は将来何になりたいかとかまだ決まっていませんが、ちひろさんが言っていたように、将来、自分が考えていなかったような職業につくかもしれないんだなと思いました。」と未来を考えた人がいました。
「海外とのつながりは?」「(当時は)英語は中学から。(自身の)留学が初海外」。留学の時に会話とかはどうしたのかなどの疑問が出され、授業を終えた後も丁寧に応えてくれていました。
私の荒さんの小学生時代の印象は、自身の疑問と、納得をとても大切にされていたこと、ご家族が荒さんを大切に見守り育てておられ、安心して過ごされていたということです。
➁高校留学でアメリカへ
「きっかけは、好きじゃなくて「嫌い」?!」「アメリカの戦争に違和感。でも、アメリカを知らないな…」。荒さんは、同時多発テロの衝撃、そのことをきっかけに考えたことなどの話でした。子どもたちの感想を読ませてもらうと、「ちひろさんの話を聞いて、心に残ったことは、アメリカへ行った理由についてです。最初は好きじゃないのに行ったの? とびっくりしました。が、理由を聞いて、ちひろさんはすごいなと思いました。」「「嫌い」から「知ってみよう」とつながるのを見習いたいです。」と書かれていました。
➂大学院でイスラエルへ
「イスラエルって、どんなところ、どんな人たちが住んでいるの」など、写真とともにそこで暮らす人々の様子を話してくれました。国としてひとかたまりに見て捉えてしまうのではなく、そこにいる多様な人々の話をしてくれました。
荒さんご自身は、朝日新聞ホームページのご自身の紹介欄で、「2001年9月11日の米同時多発テロと、その後の「対テロ戦争」のニュースを見て感じた、「”正しい戦争”ってなんだろう?」という疑問が、その後の諸々につながっているように思います。大学院で「人間の安全保障」を学び、中東、パレスチナ問題への関心から、エルサレムに留学しました。難民・移民問題を通じ、国境を越える人々を通して、「国」とは何かを考えています。」と書いています。
④「報道」の仕事、おもしろそう!
「記者ってどんな仕事?」と問いかけました。「報道は、新聞、テレビ、ラジオ、ネット…など」「世界には報道の自由のない国も」ということには、子どもたちには驚きの声があがりました。
➄記者としてのあゆみ
仙台での勤務、震災から3年目のこと。そして奈良へ。その後、東京社会部、そして世界の国々へと続きます。ニウエの話を詳しく聞きました。「世界で2番目に小さい島のニウエが興味深かった!! モアナみたいな感じって思ったらすごく面白い。1600人の国ってすごい!」「ニウエで誰もいない刑務所や一つしかないポスト、ニウエとその人の名前を書けば手紙が届くというのが面白かった。」など、たくさんの感想がありました。
「大気汚染」取材でバングラデシュへ。「「世界最悪」の大気汚染 バングラデシュで懸念される子どもへの被害」なども話してくれました。子どもたちの健康被害やどうして大気汚染が起こるのか、子どもたちと考えます。対策で示されたこと、写真「黒海沿いの港町コンスタンツァのビーチを彩る「空気をきれいにする壁画」」や「大気汚染に対抗する「液体街路樹」」なども話されていました。
子どもたちは、「まず小中高の時、何かになりたいと思って無くても記者とかになる事もあるんだな! 同時多発テロとかが無かったらアメリカに行ったりしてないかもしれないから、ある日に何かがあって、人生が変わる事があるんだ! 世界に関心を持っていたりする方はめっちゃ多くて嬉しい。」
「やっぱり子どもから卒業しちゃだめなんだなと感じた。完全に大人になって疑問を持たないで社会のおかしいしくみに慣れちゃったら社会が変化しないから、誰かが声をあげないとだめだと思う。嫌いで終わらせない様に知ろうとする努力をしたい。」
「海外について興味を持ったし、もっと外の世界の意見も知りたいし、海外に行って色々な事を知りたい!! 探究心が増えた!! 日本の事を知るより、海外、外の世界について知りたい!! 中略 記者の仕事も、1日体験とかで体験してみたいな!!」
朝日新聞のホームぺージに荒さんが書いた「仕事に限らずですが、何かにネガティブな印象を抱いた時こそ、本当にそうなのか、実は自分が思い違いをしているのではないか、まずはよく知る、学ぶ、実際に触れる、を大切にしたいと心がけています。」ということが、お話全体から伝わりました。
荒さんは、私たちに、「世界には、いろいろな人の「今日」がある」、「ニュースの向こうには、必ず「人」がいる」、「みんなの「気になる」「知りたい」が未来につながる」というメッセージを伝えてくれました。
荒さんが持ってきてくれた本の紹介が時間がなくなってできなくなりました。その本とは、『瓶に入れた手紙』(ヴァレリー・ゼナッティ作、伏見操訳、文研出版)でした。表紙カバーには、「もしかしたらあなたは、この手紙を破いてしまうかもしれない。イスラエルと聞いて、憎しみしか感じないかもしれない。わたしのことをバカみたいだと思うかもしれない。手紙がガザにいるあなたに届くことなんて、ないのかもしれない。でも、もし、この手紙があなたのもとへたどり着き、最後まで読んでくれたとしたら…」と書かれていました。この本も荒さんのメッセージにつながることが書かれていると思います。図書室へ寄贈していただき、ありがとうございました。

ここから話は変わります。荒さんの他にも報道にかかわる卒業生が多くいます。昨年末にお会いした平野雄吾さんもその一人。平野さんは共同通信記者であり、『ルポ入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書)や『パレスチナ占領』(同上)などを出版されています。たくさんの方に手にとってほしい本です。
平野さんは、『パレスチナ占領』の「おわりに」、「日本の入管収容施設と占領地パレスチナという一見異なる現場のあいだに、構造的な共通点」として、「「例外状態」と「剥き出しの生」が存在」すると書いています。「法の枠外に置かれ、権利を剥奪された人々」のことを取材し、「たとえば、二〇二一年三月、名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリの事例では、衰弱したにもかかわらず医療は提供されず、責任者は不起訴となった。国家の管理下で命が失われても、誰も責任を問わない構造」を書いています。世界に目を向ければ、「構造的な共通点」がひろがっていることを学びました。
最後に、「現代という時代が「例外状態」と暴力を容認する道に進むのか、それとも人権と法の支配を取り戻すのか、その分水嶺でもある。全ての市民が自由と尊厳をもって生きられる世界に向かうことを願ってやまない。」と書かれており、私自身の課題として受けとめました。

これからも卒業生から学び、できればその方をお呼びして、できなければその方の書いたものから、子どもたちとも地球市民として学び合い、話し合いたいと思います。