「人として尊ばれる」ことに[Ⅱー340]

桐朋学園の教育理念は、「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長するというヒューマニズムに立つ『人間教育』」です。1947 年教育基本法の精神をもとにしています。この法は、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」(前文)としたものです。日本国憲法で掲げた理想を保育、教育で実現したいと思います。そのために、不断の努力をしていきます。

  写真はすべて入園式の様子から 
2022 年度、保育現場の虐待(園児を叩く、きつい声かけをするなど)が報道され、「不適切保育」が話題となりました。厚生労働省の調査によれば、「不適切保育」とは、「子ども一人ひとりの人格を尊重しない関わり」、「物事を強要するような関わり、脅迫的な言葉がけ」、「罰を与える、乱暴な関わり」、「子ども一人ひとりの育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり」、「差別的な関わり」と例示されました。そのことを本園、本学には関わりのないことと決してせずに、1947 教育基本法の精神を教育理念とする学園として、初等部ではどうかを問い続けていきます。(2023年4月4日には、「不適切保育 つかめぬ実態  基準なし 指導も調査も後手」朝日新聞に記事掲載)
「不適切保育」を社会の問題として考えれば、「(子どもの数と保育士の数の国の配置基準に対して)基準通りの数では、命を預かる仕事はできない」という現場からの声があがっていることや、教員の長時間過密労働(「教職員勤務実態調査 2022」によれば、「校内での時間外勤務(4週間の平均):71 時間 40 分⇒10年前調査より2時間超増加」「持ち帰り含む時間外勤務の合計:86 時間 24 分」「時間外勤務の上限(月 45 時間)についてみると、59.2%が超えている」「年代別では、30 歳以下の若手の先生たちが最も過酷な勤務実態」「小中では、平日1日あたり3時間以上の超過勤務をしている教職員が約半数」)を改善するなどしていかなくてはならない課題があります。玉川大学の大豆生田教授(保育学)は、「保育士が余裕を持って子どもに関われるような配置基準の見直し」と「保育の質をより高めるための意識や風土」「子どもを尊重する保育にしていく」ことで防ぐこと。また保護者との対話や信頼関係について「子どもを真ん中に置き、園同士で高め合って、親とともに安心して育てられる環境を社会でつくっていくべき」だと述べていました。(朝日新聞2023年 2 月 5 日朝刊)

桐朋幼稚園では、「児童は人として尊ばれる」「社会の一員として重んぜられる」「よい環境のなかで育てられる」「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」など、児童憲章を大切に実践をすすめてきました。あらためて、保育、教育で大切にされているかを考えていきます。

保育、教育活動をすすめるうえで、教育理念や児童憲章、保育、教育目標と大切にしたいことを土台にし、子どもたちとの日々を大切に過ごしていきたいと思います。

いろいろな教室で

入学式にむけていろいろな準備に奔走してた子どもたち。

新年度の決め事や準備などもひと段落して、専科の授業もはじまりました。

美術室では3年生が絵の具で素敵な色を作っていました。

水をたっぷり含ませた筆で作り出したグラデーション。

良く晴れた青空

ロマンティックな夕暮れ

あたたかな日差し

どの画用紙もとっても素敵な色合いです。

自分のパレットで作り出した色は、絵具屋さんに売っていない「自分だけの自然色」!

画用紙一面に広がった大きな空を背景に、春の大きな木の幹を描いていきました。

 

2年生の音楽の授業をしていたら、1年生が校舎の見学で立ち寄ってくれました。

せっかくだから、♪初等部の歌 を聴いてもらいました。

1年生もはやく覚えて、一緒に歌えるようになるといいですね。

 

桐朋幼稚園も、新しい仲間を迎えました。

ズボンの後ろ姿から、さっそく楽しい時間を過ごしたのではないかしら?と想像しました。

みなさん、週末はゆっくり休んで、来週また元気な顔をみせてくださいね!

空にはおひさま!

1年生のみなさん、入学おめでとうございます。

春らしい、とても朗らかなお天気に恵まれましたね。

おうちの方の手拍子にのって、5年生のパートナーと手をつないで第4体育室に入ってきたみなさん。

一人一人のお名前をよばれて、学校の印「校章」をいただきましたね。

これで、みんなは「とうほうっ子」になりました。

はやく一緒にべんきょうしたり、あそんだりしたいなあ、と先生たちも思いました。

それを一番願っているのは、きっと2年生です。

今日もたくさんの素敵なことを見せてくれました。

みんなもやってみたいものはあったかな?

コマ?けん玉?なわとび?

ネコちゃんみたいに、しなやかに体をうごかす体操や、かっこいい荒馬の踊りもありました。

歌も、詩も、2年生の声がとってもかっこよかったね。

♪空にはおひさま、足もとに地球、みんなみんなあつまれ、みんなで歌え!

(『ともだち賛歌』より)

素敵な友だち、たくさんの仲間と出会って、みんなで楽しく過ごしましょう。

今日は残念ながらお休みだったお友だちとも早く会えますように!待ってるよ!

(5年生はたくさん荷物運びをしてくれました。最後までおつかれさま!)

入学式でお伝えしたかったこと [Ⅱー339]

一人ひとりに校章を渡し、「おめでとう」を伝え、握手をさせてもらいました。全員に校章を渡した後、校章の由来や桐朋の名前に込められた願いなどを(以下のことを頭に描きながら)話しました。

校章は、「桐」が描かれています。桐は、本学園が1947年に「桐朋学園」として第二の出発をする際、指導と協力を受けた東京文理科大学、東京高等師範学校の校章に由来しています。一人ひとりを大切にする教育をしていくという願いを込めています。「朋」は、仲間という意味です。

桐朋小学校は、一人ひとりを大切にする学校にしたいと願い、その人その人が「やりたい」を大切にして、お互いの持ち味を大事にしながらみんなで育ち合っていこうという学校です。(※1)


2年生、5年生、いろいろとありがとう! 写真はすべて入学式関連 

保護者の皆さんに(次のことを頭に描きながら)お話しました。子どもたち、教職員は、今日をたのしみにしてきました。(朝、1年生の教室では、5年生が一生懸命に1年生に関わっていました。頼られることで、5年生は成長すると思います。)お子さんのご入学、おめでとうございます。

桐朋小学校は、《子ども一人ひとりを原点にした教育の実現》、《自分自身の人生の主人公となる、社会のつくり手となる根っこを育てる》ことを教育目標にしています。

その教育目標を実現するための11の柱(※2)から2つお話します。

1つ目が、学ぶってたのしい!です。今日の5年生パートナ―との出会い、友だちや先生との出会い、この入学式での2年生の表現(1年生に出会い、1年生に表現をすることで、2年生は成長すると思います。1年生は、2年生、5年生の成長する機会をつくってくれています。)などで、桐朋小学校で過ごすって楽しそうって思えたら嬉しいです。

11番目が、親と教員、親同士のつながりの大切さをあげています。保護者の皆さんとは、子どもの最善の利益とは何かをよく考えて、協働していきたいです。つながりという点では、本来、子どもたちはいろいろな人に見守られ、助けられ、安心して育っていきます。子育ては社会的な営みです。ところが、コロナでつながりをつくるのが難しくなりました。改めて、子どもたちが安心して育つために協働を。親と教員、親同士は、わからない、うまくいかないことも含め、お互いを大切に、つながっていきたいです。

保護者の皆様にとっても、節目となる日です。おめでとうございます。

(※1)学園の教育理念は、1947年教育基本法の精神「一人ひとりの人格を尊重し、自主性を養い、個性を伸長するというヒューマニズムに立つ『人間教育』」です。 

(※2)1.学ぶことは楽しい! 2.子どもたちが共同で学ぶこと、働くこと、遊ぶことを大切にしています 3.子どもの自治的活動を大事にします 4.学びと同じように遊びを大切にします 5.私たちの教育はけっして急ぎません 6.子どもの発達にあわせた教育課程の自主編成教育を行います 7.実際に「行うこと」を追求します 8.遊びの過程や意味を大切にします 9.平和を希求し、一人ひとりの子どもが平和のつくり手として社会に参加できるような根っこを育てます 10.子どもが育つ環境をつくりあげます 11.親と教師、親と親は、子どもの教育のために結びあいます

新しい仲間を待っています

もうすぐ入学式!

新入生がやってくるのを学校中がワクワクしながら待っています。

6年生は、1年生の教室を掃除したり、入学式会場の設営を進めてくれました。

5年生は、パートナーとしての準備はもちろん、教室を素敵に飾ってくれました。

4年生は、入学式会場の装飾を仕上げてくれました。

3年生は、1年生のために、自分達の椅子を貸してくれました。

そして2年生は、学校を代表して歓迎の気持ちを伝えるために、連日体育館でお祝いの表現の練習をしていました。

明日は素敵な一日となりますように。

強い風が吹きましたが、なんとか八重桜は持ち堪えています。

正門脇の藤も満開です!

初等部説明会について

本校にご興味をお持ちくださるみなさま

 

5月13日(土)午後、本学園ポロニアホールにて

初等部(桐朋小学校・桐朋幼稚園)の説明会を行います。

園長・校長の中村博が初等部の教育についてお話しいたします。

 

受付開始は、4月24日(月)を予定しています。

詳細は4月20日以降に本ホームページでお知らせします。

お手数おかけしますが、ご確認よろしくおねがいします。

教務

新年度がはじまりました

2023年度がはじまりました。

濃いピンク色の八重桜が子どもたちを迎えてくれます。

クラス替えの発表があったり、教室のお引っ越しがあって慌ただしい一日でしたね。

緊張したり、わくわくしたり、おなかペコペコでおうちに帰ったことでしょう。

新しい教室、新しい仲間、新しい先生。

進級した実感がじわじわと湧いてくるのは、数日後になるでしょうか。

靴箱も移動しましたね。

明日の朝、うっかり前のところに行く人が何人かいるのではないかしら?

先生たちも、職員室の机の配置が変わって、とまどう場面がありますよ。

すこしずつ、新しい環境に馴染んでいきましょう。

今年度もどうぞよろしくおねがいします。

第4体育室での始業式の風景。それぞれの学年に、進級の拍手を送り合いました。

 

子どもたちとわくわくする活動や学びを [Ⅱー338]

初等部では、職員全員で新学期の準備をすすめています。子どもたちとの出会いをたのしみに、子どもたちと一緒に授業や活動をつくっていこうと、張りきっています。子ども(たち)が(と)夢中になる、もっとやりたい活動や授業を創り出していきます。私たち自身もわくわくする、自分の中に新しい世界を持てるようにと願って取り組みます。どうぞよろしくお願いします。

 4月7日、サトザクラが満開です

子どもたちと学び合う文化、教材づくりを

新学期に向けて「子どもたちとこんなことをしてみたいなあ」をたくさん考えています。子どもたちにぜひ出あってほしい文化、教材を吟味しています。教員自身もたくさん学んで、素敵な文化、教材と出あいたいです。

教員同士が、計画段階から話し合い、授業の計画を相談、共有し、実際の授業を見合い学び合うことを大切にしていきます。学年やブロック、学校として、協働して取り組みます。

子ども(たち)の学びはどうかを大切に

「子どもの学びへの願い(わくわく、ドキドキ、夢中になどを大事に)や姿はどうだったか」、「学ぶことで、身の回りの世界の見え方やそれに対する関わり方が変わったのか」、「学びを通して仲間とつながっているのか」などを大切にすすめます。知識や技能が実生活で生かされている場面や、その領域の専門家の知を探究する過程を追体験し、「教科の本質」をもとに「深め合う」なども大切にしていきます。

授業を見合い、お互いに学び合う

昨年度も、実際の授業や活動を見合うこと、子ども(たち)の姿から学び合うことを大切にしました。今年度も、活動や授業を見合うこと、子ども(たち)の姿からの学びを大切に取り組みます。

 1年生が育てたチューリップも満開です

学ぶことを、「知ってる」「私できる」で止まってしまう場合があります。学ぶってたのしい! もっと学びたい! 人と一緒に過ごすってたのしい! からだを動かすことがたのしい! など、「知ってる」「私できる」を超えていく豊かな活動や授業を創りたいと考えます。私たちが大切にしている試行錯誤や失敗も、学びを深めるために大事なことだと実感してもらう取り組みをしていきたいです。子どもたちの姿から、自身が変わることや、学びによって人とつながるなど活動や授業でどのように行われているのかなどを学んでいきます。

文部科学省の「児童生徒の問題行動」調査結果によれば、子どもたちの育ちの困難さが見られます。『感情コントロールに苦しむ子ども 理解と対応』楠凡之、丹野清彦著)では、「小学校低学年では、同一クラスに落ち着きがなかったり、感情制御の困難な子どもが何人もいるのがフツウの状態になってきている」などいくつもの事例がありました。

著者はその原因として、「大脳前頭葉の機能的な成熟と養育者との安定したアタッチメント(愛着―中村)の関係」の遅れを指摘。また、系列化の獲得による「自己形成視」(「過去に比べたら自らの成長に誇りをもって自覚するとともに、さらにいろんなことに挑戦してみたいという意欲を育んでいく力」と定義)が育まれていないことを指摘しています。他に、発達障がいの(疑い)子もいると書いていました。

対応として、「十分に遊びこみ、様々な活動を展開していく中で、子どもたちの自我・社会性の発達を保障し、結果として子どもたちが落ちついて学習や生活に取り組むための基盤を育てていく、回り道をいとわない教育実践が求められている。」(前掲書)とあります。私たちの学校、学級ではどうなのかを考えていこうと思いました。

2023年度がはじまりました。どうぞよろしくお願いします [Ⅱー337]

3月の終わりに、1年間の振り返りをしました。そして、新年度のことを考えました。今年度は、平和な世界にしていきたい。生きる、育つ、守られる、参加するという子どもの権利が守られ、「一人ひとりが感情や意思を持った人間として尊重され、『なりたい自分』に向かってその子の可能性が最大限に伸ばされるよう応援してもらえるという、子どもの権利条約の考え」が大切にされる世界にしていきたいです。

 写真はすべて1年生が育てたチューリップ。

子どもに学ぶ

ロシアがウクライナを侵略し、1年が経ちました。3年生は、この内容に関連した小学生新聞を読み、考えました。その日の宿題を「この戦争について考える1日にしよう」と呼びかけ、子どもたちは自主学習ノートにTVなどで見たこと、聞いたことなどをまとめました。3月2日の通信にはその取り組み、子どもの表現などが書かれています。

せんそうについて思ったこと   

ロシアがウクライナにしんこうして1年がたったらしい。

ぼくが8才だった時に始まって、もう9才だ。137㎝だったのに、143㎝にのびるくらい。ホームランが打てなかったのに、もう少しでホームランが打てそうだ。

1年間て、とっても長い。こんな長い時間、●●ちゃんと■■くんにとっては、きっと自分が何ができるようになったって考えるより、苦しいやかなしいやさみしい、こわいがいっぱいな1年だと思う。

ウクライナの人がせんそうで七万人は死んだと、ニュースは数しか言わないけど、この7万人は家ぞくがいて、家ぞくみんなが悲しい気持ちになったと思う。/その悲しい気持ちになった人の数は、どのくらいだろう。家族が4人いたとして、7万人の4倍の28万人。両親合わせて、さらに14万人。合わせて42万人。それだけの人を悲しませてしまったせんそうって何の意味があるんだろう。

たしかにぼくも人のものをほしくなっちゃうきもちはわかるけど、それを力ずくで取ることは人にいやなおもいをさせてしまうんだって、今のぼくはわかっているよ。

大人のロシアの国のせんそうを考えている人は、どうしてわからないんだろう。(学級通信3月2日号より)

作者は、ロシアがウクライナに侵略した一年間を自分の成長をもとに振り返り、桐朋小に来てくれた●●さん、■■さん(2人とも小学生)とお母さんのことを考えながら、「苦しいやかなしいやさみしい、こわいがいっぱいな1年だと思う」と想像し、表現しています。

戦争で亡くなった「7万」人から、それぞれに家族やつながりのある人たちがいることを考え、「それだけの人を悲しませてしまった戦争って何の意味があるんだろう」と問います。

それから、「たしかにぼくも人のものをほしくなっちゃうきもちはわかるけど、それを力ずくで取ることは人にいやなおもいをされてしまうんだって、今のぼくはわかっているよ」について、自分の経験と自分の変化を捉えていることが伝わります。経験や変化が自分にはある、だから「大人のロシアの国のせんそうを考えている人は、どうしてわからないんだろう」と問うのだと思います。

担任の先生は作者に向けて、「そのまっすぐな疑問を、大事なことを見失なった暴走する大人たちに問いたい」と応答し、心を響き合わせていました。作者は、一年間、応答される中で、信頼感や安心感を育み、作者自身が、自分は大切な存在なんだと感じられて表現していると考えました。

また、作者は文を書きながら、自分と他者やものごとを発見し、深める、疑問をもつなど、自分の気持ちや考えを自ら伸ばしています。