投稿者: tohoblog
ICT教育について、なぜさまざまな国で見直しが起きてきたのか [Ⅱ-400]
台風が、各地で大雨、河川の氾濫、土砂崩れなどの大きな被害をもたらしました。心配、不安な気持ちで、辛く苦しい生活をされている方がたくさんおられることを考えての2学期のはじまりです。
皆さん、2学期もどうぞよろしくお願いします。
左 職員室前の花壇 右 理工室の水槽。生きものを子どもたちが大事に育てています。
夏に学んだことからです。「作文と教育」2024年8・9月号(日本作文の会編、新読書社)に、「世界で広がる、『ICT教育の見直し』-先進各国の失敗経験と課題から学ぶ」(大阪教育文化センター事務局次長 田中康寛)が書かれており、それを読んで考えさせられました。
この間の私の問題関心の一つは、「GIGAスクール構想」による「一人一台端末使用」の活用で、そのことが子どもの書きことばの獲得、発達にどうかかわっているのかを知りたい、これまで端末でない場合と同じなのか違うのか、どう影響しているのかなどを捉えたいと願って探究をすすめています。
以下、「作文と教育」誌に田中さんが書かれたものからの引用を中心としますが、田中さんの原稿は4ページで、田中さんが論じた背景にある、調査、論文などを確かめる必要があります。それは今後の課題です。
文科省は、「端末の利活用状況調査」を実施しています。その内容は、「授業の活用率」、「家庭への持ち帰り率」、「教師と児童のやりとり率」、「児童同士のやりとり率」などを調査し、都道府県別に比較して、その「率」をあげるように通知したといいます。
海外では、モバイルデバイスの「学校での使用禁止」がひろがっていることを指摘されています。その理由として、「授業への集中、対面での交わり、健康、心理的、社会的に悪影響、依存性、中毒性」をあげられていました。禁止した国(地域)、時期は、
〇フランス2018年9月、〇イタリア2022年12月
〇フィンランド2023年6月、〇イギリス同年10月教育省・新指針、〇スウェーデン同年12月新政権協定で決定
〇オランダ2024年1月、〇オーストラリア2024年新学期から全ての州で
〇アメリカ、スペイン、ポルトガル等では各州で実施
とありました。*「ドイツでは、科学者が、デジタル化の一時停止を呼びかけ」「24年現在ドイツでは、連邦政府と16州の各教育大臣との間で激しい交渉が続いています。」
2023年7月、国連「ユネスコ」報告の研究成果として、ICT教育について分析「2023年グローバル教育モニタリングレポート」を発表。「400ページを超える報告書は、世界各国の利用実態と問題点、課題を明らかにするとともに、「具体的な証拠」をもとに各国政府の「適切な管理と規制の欠如に対して、警鐘をならしています。その中で重大なのは、「デジタルテクノロジーは変化したが、教育を変革したわけではない」「教育におけるデジタルテクノロジーの付加価値についての確固ため証拠はほとんどない」と指摘」。「国際学力調査『PISA』によって提供されるような大規模な国際評価データでは、過度なICT使用と生徒の成績の間に負の関連があることを示唆している。教育テクノロジーは、不適切または過度である場合には有害な影響を及ぼし得る」などが指摘されているそうです。
*田中さんは「歴史地理教育」2024年6月号に「いま、世界で問い直される「教育DX」を執筆され、参照しました。
田中さんは、スウェーデンや他の国々を取り上げて、端末の使用禁止をみていきます。スウェーデンでは、2010年から一人一台デジタル端末を導入し、2014年に実現したそうです。紙の教科書からデジタル教材や学習ツールに移行されました。そして、現在はデジタルからアナログへとなった(「小中学校でのスマートフォンの使用が禁止され、完全にモバイルフリーにすることが合意」)そうです。教科書は印刷された教材と定義し、教科書への生徒の法的権利が明確化。紙の教科書の配布などとありました。(日本では『デジタル教科書 今春本格導入 「学び」は変わる?』朝日新聞「時時刻刻」の記事)
変更の背景には、PISA、PIRLなどの国際学力調査で、スウェーデンの生徒の数学や読解力などの学力が急激に低下。デジタル化、スクリーンの数が増え、本の数を減らし…。などがあると言います。そして、デジタルデバイスの幼児教育への導入を義務付けた教育庁の決定を撤回、6歳以下の子どもに対するデジタル学習を完全に撤廃したとも。「デジタルメディアが生徒に利益をもたらすのではなく、害を及ぼすことに疑いの余地はない。インターネットで資料を検索する生徒は従来の教科書よりも明らかに劣る」、「教室内でテクノロジーを使用する最も良い方法を見つけるためにはさらなる調査が必要」などと書かれていました。
「スウェーデン国民会議、教育法改正案の説明」も紹介されています。それは、「蓄積された科学的権利が経験データと実証済みの経験は、人間関係能力、注意力、集中力、読み書き計算能力などの基本的なスキルは、アナログ活動を通じて最もよく習得できることを示しています。したがって、生徒が紙と鉛筆を使って勉強できるようにすること、そして何よりも、教科書やスタッフのいる学校図書館にアクセスできることが重要です。つまり、低年齢層では紙の本に重点を置くべきであり、デジタル学習ツールは、明確な科学的裏付と文書化された教育的付加価値に基づいて選択的に行われることを条件に、年齢が上がるにつれてのみ使用でき、良い効果を生み出すことができます。デジタル学習ツールは、生徒の学習を促進し、阻害しない年齢になるまで、教育に導入しないことが重要です。したがって、デジタル学習ツールの使用は慎重に、注意深く行う必要があります。」
今後も各国の情報をつかんで、私たちはどうするのかを検討していきたいと思います。そして、自分の課題について学び、まとめます。
ワクワクほくほくジャガイモ料理
2年生ではジャガイモで調理活動を行います。例年行われているお馴染みの活動です。そのために1年生の終わりに種イモを畑に植えておくのです。
今年度は学年で話し合い、ジャガイモを使った郷土料理を作ることにしました。
各ご家庭に相談し、おうちの人が育った地域のジャガイモ料理をインタビュー。教えてもらったジャガイモ料理のレシピを持ち寄ってクラスで何を作るかを話し合いました。 何度も話し合いを重ね、せっかく郷土料理を調べてきたのだから全て食べたい!という子どもたちの思いから全て作ることに。そんなのムリだよ!ではなく、どうしたらできるか?を全員で考え合います。
子どもたちと考え合った結果、各料理の作り方を知っているお家の人に来てもらって教えてもらう。なるべく多くの保護者に来て手伝ってもらう(安全上の観点から)ということになりました。
作ることになったのはいももち(岐阜や北海道)、みそかんぷら、せいだのたまじ、かまぶくなどなど。聞いたことのない名前の料理もたくさんです。調べてきた郷土料理がどこの地域で作られたのか、桐朋小学校からどれくらい離れているのかを地図を見ながら確認しました。
調理実習当日、おうちの人の手を借りながら料理を作り上げました。全ての料理を全員が少しずつ食べることができました。以下で子どもたちの感想を共有して終わります。
「今日3・4じかんめにおりょうりをつくった じぶんたちのはんは ベーコンまきと かまぶくをつくった そしてかまぶくができてぜんぶができた。でもまだじゃがいもがあって ぽてとさらだをつくって 食べて かまぶくとベーコンまきもつくった 今日たのしかった あとすきなかたちでつくれた」
「きょうじゃがいもちょうりじっしゅうをしました。どれもすっごくおいしかったけど、わたしがおいしいとおもったのは、かまぶくです。すごくあまくておもちみたいなかんじでした。たのしかったです。」
「きょう、ちょうりじっしゅうでママがきて、とてもうれしかったけど みそかんぷらとせいだのたまじつくってから みんなにあげたらすぐになくなってとてもにんきで、つくってこうかいしないでよかった。」
「今日、じゃがいもちょうりじっしゅうでいももちができたんだけど ちょうりが長すぎてほかの班が、まだ?まだ?とあつまってくるのであせった。」
「ちょうりじっしゅうもたのしかった。2ばんきぼうの てんころりょうり がたべれてうれしかった。ごまをちょっとかけすぎたけどおいしかったからまたつくりたいなっ!」
「きょうじゃがいものりょうりをつくってたべた ぼくはさいしょせいだのたまじをつくってたけど みそかんぷらにいどうになった さいしょは はーーーーーっておもったけど なべにはいってるじゃがいもをつくるのかがたのしかった それにせいだのたまじはほとんど だれかがやってたから いどうしたほうができた」
体験会・説明会をお申込みくださった皆様へ
台風10号の影響を鑑み、本日の説明会・体験会を中止とさせていただきました。
皆さまには大変ご不便をおかけしました。
私たち教員も、楽しい出会いをつくりたいと準備を重ねておりましたので、とても残念な気持ちです。
参加予定だった皆様には、メールで送らせていただいたweb対応に加えて、
本日の資料一式を以下の方法でお配りいたします。
(資料内容:①2025年度桐朋小学校入学案内 ②学校説明会・入学考査に関わるQ&A ③学校案内 ④冊子『地球市民〜出会ってつながる〜』)
①②③については本ホームページで閲覧可能/④は掲載なしの紙面のみ のものですが、紙媒体でご覧くださる方はお立ちよりください。
【9月3日(火)~9月27日(金)】
8:30~16:20 @総合受付 平日のみの対応とさせていただきます。
【⭐️9月7日(土)は、小学校玄関にて資料をお渡しします。】
※恐れ入りますが、8月31日説明会or体験会にお申し込みいただいた
年長のご家庭のみに限定させていただきます。
9:00~10:30 @桐朋小学校
上記の時間の中で自由にお越しいただき、しぜんひろばも自由見学していただけます。
無理をなさらず、よろしければお出かけください。
※天候/気温によっては配布のみの対応とさせていただくことをご了承ください。
8月31日(土)体験会・説明会にご参加予定の皆様へ
8月31日(土)体験会・説明会にご参加予定の皆様
体験会・説明会へのお申し込みありがとうございます。
明日も台風接近による悪天候が予想されています。
公共交通機関の乱れや皆様の安全を考慮し、明日の体験会・説明会は中止とさせていただきます。
皆様にお会いできるのを楽しみにお待ちしておりましたが、このような対応となってしまい大変残念です。
また、直前の判断、お知らせとなってしまい申し訳ありません。
ご参加予定だった方には個別にメールを配信いたしますのでそちらもご確認ください。(ミライコンパスのログインメールアドレスに配信します。)
桐朋小学校
見た人をほっこり笑顔にするすいか
先日、2年生の畑活動の記事がありましたが、3年生も畑の活動をしました。
夏休み中なので全員参加ではないのですが、この日集まってくれた人とお家の人と力を合わせて短い時間で収穫と草取りをしました。
3年生は自分たちで育てる野菜を決めて、教室脇のテラスや畑で水やりなどのお世話をしてきました。
短い時間でこんなにたくさんの収穫が出来ました。お世話した人たちありがとう。
いくつか野菜が育ちすぎて巨大化していました。びっくり~。
収穫した野菜は、来た人たちで山分けしました。お家でおいしく食べられたかな?
すいかは山分けできないので、その場で食べて山分けしました。
売り物のような大きなサイズではないけれど、大事に育てたことの伝わるすいかです。
すいかを半分に切って3,2,1、ぱかぁ~っと、中を見てみると、真っ赤!!!・・・ではなかったけれど、ひかえめなピンクで初々しく、見た人をほっこり笑顔にするすいかでした。
自分たちで育てたすいかのお味見タイム。お味はどうだった?
短い時間だったけど、ぎゅっと凝縮された時間でした。お家の方もお手伝い、ありがとうございました。
3年生のみんな、ぜひ写真を見て、目で味わってね。
最後に問題です。3年生が育てた野菜はぜんぶで何種類でしょう?正解は写真を見るとわかります。
8/31(土)体験会・説明会にご参加予定の皆様へ
8月31日(土)体験会・説明会にご参加予定の皆様
体験会、説明会への申し込みありがとうございます。
台風10号の接近に伴い、学校体験会および説明会の実施について検討しています。
つきましては、8月30日(金)16時に、
開催の有無をホームページとミライコンパスのメールにて配信いたします。ご確認ください。
直前の判断となってしまうこと、ご迷惑をおかけしますことをお詫び申し上げます。
桐朋小学校
「算数なのに、おいしい~!」
そんな言葉が聞こえてくることが桐朋小学校の算数の授業では、たまにあります。
入学してから、1学期でさまざまなことを学んだ1年生。今日は、「おいしい算数」について紹介します。
おいしい算数と聞くと、食べて終わりなの?と思われてしまうかもしれませんが、しっかり学んでからおいしく味わうというのが、大まかな授業の流れです。
まずは、担任が実際にやったことを絵でノートに描きます。子どもたちが見たものは、
「右手にラムネ2こ、左手にラムネ3こ。持っていたラムネを全部お皿に入れる。」
です。算数の世界では、これが以下のような文章題になるわけです。
「2このラムネと3このラムネを、お皿に入れました。ラムネは全部で何こになりますか。」
さっき現実で見たものと、この「文章題」がつながるかどうかがまず大切です。
つぎに、文章を「算数の式」にします。この場合は、「2+3」です。桐朋小学校では単位をつけることも大切にしているので、「2こ+3こ」と書きます。
最後に、文章題の問いに答えます。この場合は、「5こ」です。1年生の子どもたちにとっては、初めての足し算でした。日常生活の中で自然とやっていたことをあえてやることに算数の授業の意味はあると思います。今まで無意識にやっていたことを、算数を通して理解していきました。この後、子どもたちもラムネを使って、実際に計算をし、答えが出てきたところでおいしく食べました。
このように桐朋小学校では、子どものペースに合わせてゆっくり学んでいきます。具体物を使って、じっくり思考し、時に立ち止まり、現実の世界と文章題をつなげ、式を立て、答えを出します。その1つの手段として「おいしい算数」が位置づいています。
とはいえ、子どもたちにとって「おいしい算数」は、おいしくて学べる一石二鳥の算数であることは間違いありません。子どもたちにも大人気です。2学期は何を食べ…いや、学ぼうかな。
地球を守る取り組みを [Ⅱ-399]
毎日、猛烈な暑さが続きます。今夏、「酷暑日(日最高気温が40℃以上、日本気象協会)」の予報が出た地域がありました。8月18日東京新聞で、目加田説子さんが「米航空宇宙局(NASA)によると、世界平均気温は今年の6月まで13カ月連続で記録更新されており、7月22日に世界平均気温も観測史上最高を更新した。日本でも先月は1898年の統計開始以来、最も気温が高い7月だった」と書いていました。さらに、「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える『パリ協定』の目標を達成するうえで、地球の大気が許容できる二酸化炭素の排出量は2024年時点で、残り約2千億㌧とされる。世界は今、年間400億㌧排出しており、このままでは5年で達する」と、「危機に瀕」していることを述べていました。
私たちは、体調を崩す(命を脅かす)ほどの暑さを過ごしています。ますます酷くなる可能性を予測する中で生きています。個人個人で気候変動対策をしていかなくてはなりません。気候変動に向き合って、保育、教育をすすめていきます。家庭や社会、さまざまな人たちと協同して気候変動対策をすすめていかなくてはならないと考えます。
8月、八ヶ岳高原寮に行って、森を歩いてきました。
1、地球環境を守る
(1)気候変動 -危機の進行
2018年公表の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告に、「1.5℃目標は速ければ2030年ころに突破されてしまう」とあります。そして、「工業化以降の全球平均気温は現在約1℃上昇しているが、今後『パリ協定』において世界共通の長期目標として設定された2℃まで上昇したと仮定した場合、日本国内での猛暑日の年間発生回数は現在の1.8倍になると推定された。これは、我々が過去にほとんど経験したことのないような頻度で猛暑の発生が増加することを意味している」(気象研究所、東大大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チーム、2018年)などを予測しました。現在の「酷暑」は、「過去にほとんど経験したことのないような頻度で猛暑の発生が増加」している現実を生きていると考えます。
2019年9月、日本学術会議会長より、『「地球温暖化」への取組に関する緊急メッセージ』が出されました。はじめに、「私たちが享受してきた近代文明は、今、大きな分かれ道に立っています。現状の道を進めば、2040 年前後には地球温暖化が産業革命以前に比べて『1.5℃』を超え、気象・水災害がさらに増加し、生態系の損失が進み、私たちの生活、健康や安全が脅かされます。これを避けるには、世界の CO2排出量を今すぐ減らしはじめ、今世紀半ばまでに実質ゼロにする道に大きく舵を切る必要があります」と呼びかけられました。「人類生存の危機をもたらしうる『地球温暖化』は確実に進行」しており、「『地球温暖化』抑制のための国際・国内の連携強化を迅速に進めねばなりません」とありますが、その取り組みは十分ではありません。
2023年、気象庁は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第6次評価報告書統合報告書の公表。それは、「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく、1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した。世界全体の温室効果ガス排出量は増加し続けており、持続可能でないエネルギー利用、土地利用及び土地利用変化、生活様式及び消費と生産のパターンは、過去から現在において、地域間にわたって、国家間及び国内で、並びに個人の間で不均衡に寄与している(確信度が高い)。」とありました。また、「大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている。人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている。このことは、自然と人々に対し広範な悪影響、及び関連する損失と損害をもたらしている(確信度が高い)。現在の気候変動への過去の寄与が最も少ない脆弱なコミュニティが不均衡に影響を受ける (確信度が高い)。」などと書かれ、危険がさらに増していることが報告全体から伝えられました。
(2)地球環境を守るために
(1)気候変動危機の進行を、私たちは話し合い、取り組んできたのか。自分自身の反省を込めて、今からでも、私たちができることを最大限取り組みたいと考えます。
➀初等部として(ひろがることを願って)
子どもには子ども時代を謳歌する権利があります。そのための環境が大切です。
私たちは、幼児期、児童期の子どもたちに、地球環境のすばらしさを実感してもらい、大切にする気持ちを育てていく課題があります。園、学校、地域、都内、八ヶ岳(今回の3枚の写真は、八ヶ岳高原寮です)などで豊かで多様な体験を生み出し、その体験から自分(たち)で環境の大切さや意味をつくり出していくことを励ましていきたい。
そのための幼児期、児童期の保育、教育はどうあるべきか、園、学校の役割が問われています。中高学年では、地球環境(危機)を教育課程に位置づけ、学習、具体的な対応、行動をしていくことが必要と考えます。
初等部から、地球環境を守る取り組みをひろげていくことが大きな課題です。
➁地域と共同、地域への呼びかけを
初等部がある調布市は、「調布市ゼロカーボンシティ宣言」として「調布市は2050年『二酸化炭素排出実質ゼロ』を目指しています」。そのために、調布市の「二酸化炭素排出」の割合を「工場が少ない調布市は約8割が住宅やビルなどの『建物』からの排出」、「調布市民一人当たりに換算すると、家庭部門での二酸化炭素排出は年間約1300kg。その重さは深大寺そばに換算するとなんと約4300人前!」と示しています。
取り組みの紹介では、「地産地消(輸送時には多くの二酸化炭素が出ます)」「節電・節水(暖房・冷房のつけっぱなしなど、多くの二酸化炭素を出します)」「移動手段を考えよう!(公共交通機関に)」「リユース品の活用(製品の製造、廃棄の際にも二酸化炭素は排出)」を呼びかけています。市の取り組みとして、「環境に配慮した物品等の選択」「新築のZEB Ready化(50%以上の一次エネルギー消費量削減に適合した建築物)」「公共施設への100%再エネ電力導入」「公用車の電気自動車への切替」が示されています。*現時点での排出量(と削減)はどれほどか? *取り組みによる変化については? など学んでいきたい。
子どもたち、私たちが住んでいる自治体の取り組みを学び、交流して考え合いたい。そして、こうした呼びかけに対して、初等部、さらにひろげて共同していけるように話し合いたい。
今後、家庭や地域との共同も視野に入れた学習と運動をひろげていきたい。その取り組みを初等部通信、外部の方向け掲示板などで知らせていきたい。*その先に、「桐朋学園(初等部)地球沸騰化への取り組み 緊急メッセージ」として、「桐朋学園初等部では、地球沸騰化に対して、…」という取り組みを知らせたい。こうした願いをいだいています。
研究で行った奈良教育大学前の交差点では鹿が歩いていました。
➂気候変動の進行は、人権侵害という捉えもされています。たくさんの人と協同して対策に取り組みたい
「気候危機がもたらす猛暑や水害の増加で命や健康が脅かされているのは人権侵害です」。日本弁護士連合会に人権救済申立てがされています。人権救済を申立てたのは、市民団体「気候訴訟ジャパン」で、水害で家族を亡くした人、高温や豪雨で農業被害にあった人、気温上昇した未来で生きていくことができるのか危機感をもつ人などが、日本政府の不十分な気候変動対策、気候変動による災害、農業被害などで多くの人命、暮らしが奪われていることに対するものです。「政府による強固で具体的な気候対策」「災害や熱中症による被害を人権侵害と定義する法律の整備」「気候変動が人権侵害だとする訴訟の原告になる資格を広める」などを求めています。
世界に目を向けると、オランダ環境NGOが政府に温室効果ガス排出量の削減目標引き上げなどを求め提訴。2019年、オランダ最高裁判所は「未来のリスクではなく現在の危機であり、差し迫った命と人権の問題」とし、政府に温室効果ガス削減の強化を命じています。ドイツでは、ドイツ連邦憲法裁判所が政府の気候保護法が将来世代の権利を侵害していると判決を出し、気候保護法の改正案が閣議決定されました。他にもあります。
私たちは地球市民として、地球環境危機に向き合い、協同して向かいたい。山本良一さんは、『気候危機』(岩波ブックレット)で、「現在の気候危機は、人間活動が原因の温暖化ガスの大量排出が主原因」「地球温暖化により、熱波、豪雨、干ばつなどの極端気象の増加、激化が起こっていること」などを述べた上で、人間活動において世界のCO2排出量を今すぐ減らし、2050年までに実質0にする必要があると述べています。山本は、仮に実質0にしても地球温暖化が続くことから、「人間活動起源の温暖化ガスによる地球温暖化はたとえ排出量をゼロにしても1000年は継続することを考えると、ただちに全員で排出量を削減」することを訴えます。
オランダの気候訴訟では、市民が石油企業に勝利したという報道がありました。2021年5月、ハーグ地裁はNGOの訴えを認め、石油企業に対して、「同社グループのバリューチェーンで排出されるCO2排出量を、30年末までに19年比で45%削減することを命じる判決を下していた」(日経ESG)というものです。この判決は企業に数値目標を示してCO2削減を命じたことに加え、気候変動を人権問題として削減義務を認めたことで世界に衝撃を与えました(が、日本では大きな報道となりませんでした)。人権と命の大事さを訴えての結論に、私は励まされました。
繰り返しますが、私たちは地球環境における「危険」をつくり、健康と命を脅かしています。それを変えていく取り組みをすすめ、地球の現在と未来を大切にしていきましょう。(続きは、別の機会に)
はぬけきねん日~きのうのぼくと きょうのぼく~
朝の時間。教室。Jくんがはなしかけてきた。
「ねえ、きのうのぼくと きょうのぼく どこがちがうでしょう?」
腕を後ろに組み、私の前に立ってなにやらニヤニヤしている。
「んーーーー?どこかなあ。」
しばらく彼の顔や身体をじっくりと見る私。
「じゃーーーん!こたえは、はが ぬけましたあ~!」
J君は、いーーーという口をして抜けた歯のあたりを見せてくれた。
「ほうほう、いい隙間ができたね。はぬけきねん日おめでとう。
ここから、プリンとかゼリーとかにゅるにゅるだせるね。」
などと応えると、
「うん、うん。」
と言いながら満足気に着席していった。
J君が見せてくれた口のなかには、赤ちゃんの頃からお世話になった乳歯が抜けたあとに、出番をまっていた永久歯が顔をのぞかせていた。
低学年の学校生活では、いろんな場面で「あーーー!歯がぬけたあ。」という場面に出会う。小学二年生、8歳(7歳)の現在(いま)を生きている子ども(たち)にとって、抜ける・生え変わることは、特別なことなのだろう。J君の言葉をかりていうなら「きのうのぼく」と「きょうのぼく」がちがうということ。
そんな現在(いま)を生きている子どもたちと、共にいることが出来ることは、なんて尊いことなのだろうかと思いを馳せる。
金色の折り紙入りの小袋に抜けた歯を入れ、「はぬけきねん日おめでとう」と記す。受け取った子どもたちは、うれしそうにはずかしそうに、にかっと笑う。
すき間のできた口を大きく見せながら、にかっと笑う。
私もつられて、にかっと笑う。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」
6年生の総合の授業。隔週で取り組んでいる「プロジェクト学習」。
子どもたちの「やりたい」「深掘りしたい」を大事に、学校で学んだことを活かして、各々でテーマ設定し、それぞれの学びかたで深掘りしていきます。
自給自足プロジェクトでは濾過装置を作ってみたり、火起こしプロジェクトは火が起きる原理を探究したり、チョーク再生プロジェクトは学校中のチョークの粉をかき集め、再生させてみたり。いろんな活動が同時多発的に行われており、活動しながら学び、他のチームの活動を見ながら学び、一つの空間にいろんな学びが広がっています。
畑プロジェクトは育てたい野菜を育て、時には草むしりをし、収穫します。収穫した野菜で調理。やみつき無限ピーマンや、きゅうりの韓国風のり和え、梅ジュースなどを作っていました。トマトはその場で洗ってガブリッ。
歴史料理プロジェクトは、縄文ハンバーグを作ったり、戦時中のすいとんを作ったり。
また、ペットボトルキャップを回収し、粉砕し、アイロンで溶かしてアクセサリー作りに挑戦する人も!
廃棄されるものが、価値あるモノに生まれ変わる瞬間に出会い、子どもたちは感動しています。
最後に子どもの振り返りを紹介。夏休み明けも、子どもの豊かな学びを創造し、一人ひとりの「やりたい」を尊重していきます。
・今週、プロジェクト学習があった。僕は不安だ。だって、本当にあの粉からどうやったらチョークになるのか、分からないからだ。粉の固まりに「水」や「のり」を混ぜた。より細かくチョークの粉を砕いてみた。でも、僕の心の中には(本当にチョークになるだろうか?チョーク再生の意味は何?)そんな”不安”という二文字が僕の頭から離れないのだ。でもチョークの作り方を調べたら面白くない。だから、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」というし、試して試して試しまくれば、いつかは作れる!そう思って誤魔化しているが、いっつも、この事が頭をよぎる(ご飯の時以外)。いつできるか、本当に完成するのか、すごく不安です。