投稿者: tohoblog
6年生の自分史に学ぶ [Ⅱ-183]
毎年、6年生全員に、自分史の課題を出しています。
取り組みを通して、一人ひとりが、かけがえのない命に向き合ってほしい、自分自身の命の尊さを感じてほしいと思います。
保護者の方には、子どもたちがたずねてきたら、時間をとっていただき、お子さんの命の誕生にかかわる出来事や思いを伝えてもらうようお願いしています。具体的には、お腹にお子さんの命が誕生したとわかった時のこと、食事はできたのか、食事や通勤などで苦労したことや気をつけたことはあったのか。どんどんお腹が大きくなってきた様子、お腹を蹴った時のこと、生まれそうになった時や生まれる直前の出来事、生まれた瞬間の様子や はじめて出会えた時のことなど。はじめて家に来た時のこと、食事のこと、しゃべった時のこと、歩いた時のこと、病気やケガなど忘れられない出来事。よく手にしていたもの、よくやっていたこと、思い出の写真や洋服や持ち物など、いろいろな話をしてもらえるようにお願いをしました。
子どもたちは、保護者の方から話を聴き、へその緒、母子手帳、育児日誌、これまで大切にとっているもの(人形、タオル、靴など)、生まれた時の写真やはじめて○○した時の写真などを見ながら、まとめていきます。今年度も、子どもたちは一生懸命に取り組んでいました。
「僕は十二歳になった。体重は、この世に送り出された時の丁度十倍だ。まだ人生の一~三割程度しか生きていないが、例えば三五歳で亡くなったモーツアルトの三分の一は過ぎている。また、難病で苦しみ、生まれてわずかで亡くなる子どもも少なくない。だから、ここまで生きてきていることを奇跡と思い、両親に海よりも深い感謝をしたいと思う。」
「小さいころの自分を書いてきましたが、私は聞いていて結構はずかしかったです。一歳から五歳の記憶はあまり無いので、正直びっくりした部分もありました。長靴をはなさかったり、歌ったり踊ったりした時もあったり、本を自分で読んだり…。でも、お母さんが痛みに耐えながら私を産んでくれたことや名前にすごくうれしい願いをこめてくれたことには、改めて感謝したいなと感じました。やっぱり、こうやって健康に生まれ育つことは、当たり前のことでは無いし、大変なこともたくさんありながら子育てしてくれたことが、私はすごくうれしいです。この『自分史』は命の大切さ、お母さんがとても愛しながら育ててくれたことが知れた、とても良い機会でした。」
「私は何も覚えていないくらい小さな時の出来事ですが、お父さんとお母さんからこの出来事を聞いて、『生きているって当たり前のことじゃないんだな、生きていられることってすごいことなんだな』と思いました。もしその時の影響で、大好きなことが出来なかったり、それどころか学校にも通えず寝たきりになっていたりしたらどうだったろう、と考えると少しこわい気もします。自分の歴史をまとめることで、自分は生きているのではなく、生かされていると思い、大切に過ごしていきたいと思うきっかけとなりました。」
など、子どもたちは、いろいろなことに気づき、すごいなあと思います。
一人ひとりの子(と保護者の方)から、ぼく自身がたくさん学ばせてもらっています。ありがとうございます。(写真はすべて幼稚園での様子から)
”たんぽぽ組”との触れ合い
先日の20分休みのことです。図書の授業から1年生の子どもたちが戻ってくるのと同じタイミングで、幼稚園の先生が教室に来ました。そして、「いま、たんぽぽ組の部屋で“お店屋さんごっこ”をしているから、よかったら来てほしい!」とのことでした。子どもたちが全員戻ってきたところで、この話を伝えると、ほとんどの子どもが「行きたい!」と挙手してくれました。そして、みんなでたんぽぽ組の部屋へ行き、3歳児(4歳児)が遊んでいるところに参加。お客さんとして買い物を楽しみました。買い物をしている途中で、買い物袋が減っていることに気づいた1年生は、「買い物袋作ろうか?」と幼稚園の先生に声をかけ、幼稚園児と一緒に買い物袋を作っていました。作り方を知っている3歳児(4歳児)が1年生に袋の作り方を教えていて、1年生も小さい子の説明を、丁寧に聴いていました。
次の日の朝、1年生から「今日も、たんぽぽ組の教室に行ってもいい?」と聞かれ、2日連続で遊びに行きました。以前から、「小さい子のお世話をしたい!」とクラスの子どもたちは言っていたので、お世話が好きなのはわかっていたのですが、自分より小さい子に目線を合わせ、幼稚園児を楽しませてあげようという気持ちに感心しました!また、幼稚園の先生からは、「絵本の読み聞かせもしてほしい」と言ってもらえたので、また今度、たんぽぽ組との交流の機会を作りたいと考えています。こういった活動ができるのは、この学校ならではだと思っているので、幼稚園児と小学生のかかわりを大切にしていきたいです。
子どもたちが生活する場所の安全を[Ⅱ-182]
桐朋幼稚園、桐朋小学校では、2011年以降、子どもたちが土や砂で遊ぶ、活動する場所の放射線の測定をしています。(水質検査も定期的に行っています。地下100m以上の深さの地下水を使用し、安全な数値を記録しています。)主な測定場所は、幼稚園砂場、畑、しぜんひろば、小学校グランド砂場などです。今月は14日に、放射線の測定を行いました。
・園庭砂場(中央5cm)0.054μSv/h(マイクロシーベルト)、4月~12月まで0.04~0.05μSv/h
・自然ひろば(池中央5cm)は工事のため、11月以降計っていません
・小学校砂場(中央部5㎝) 0.057μSv/h、4月~12月まで0.04~0.06μSv/h
・畑(水場から近くの畑) 0.029μSv/h 、4月~12月まで0.02~0.04μSv/h
・自然ひろば入口メタセコイヤ下 今回は測定していません。4月~12月まで0.03~0.06μSv/h
空間放射線量の値μSv/h×24h×365日で、年間積算の放射線の人体への影響量(Sv/年)を計算します。国の年間放射線積算量基準値=1mSv(1ミリシーベルト)で、今回で一番測定値の高い小学校砂場の年間放射線積算量を計算すると、0.057μSv/h×24h×365日=499.32μSv=0.499mSv(0.499ミリシーベルト)となります。
測り続けているのは、子どもたち、私たちのためにです。福島の子ども、現在も避難をしている子ども、原発事故を忘れない、私たちが使用するエネルギーのことなど、自分自身の問題として考えていこうと思います。
2011年より、福島県渡利にあるさくらんぼ保育園(福島原発から直線で約60㎞)さんと繋がり、少しばかりの支援をすすめました。一昨年、さくらんぼ保育園を訪問した時に、園庭にある線量計の数値は、私たちのところよりもかなり高い値でした。園外散歩では、事故後、いまだに除染されず、通れない道もありました。これはたいへん悲しいことでした。(2018年12月のやりとりでは、除染がすすみ、園外散歩の範囲がひろがったそうです。)原発事故後、福島の子どもたちの子ども時代が奪われた事実と、現在と未来を考え続けていこうと思いました。
また、教務の先生よりいただいた本(『知ろうとすること。』糸井重里、早野龍五、新潮文庫)を読み、驚き、計測を続けようと思いました。本の中で、糸井重里さんが、「(1973年、)当時、東京にいた人たちは、何も知らずにフォールアウトの雨の中にいたんですね。」と語っています。早野龍五さん(物理学者、東京大学教授)は、「はい。ぼくは、当時、その事実に一番最初に気がついた数人の中の一人だったわけです。」、「1973年に中国が大気圏実験をおこない、東京に雨とともに放射性物質が降った。学生だった私はガイガーカウンターで人々の頭髪や衣服などを測定。その数値は、福島の病院で被ばくされた方々と同程度以上、都民の多くが被ばくしたはずだが、それによる健康被害は現在にいたるまで報告されていない。」と。「何も知らずにフォールアウトの雨の中にいた」など、決してあってはならないことだと考えます。
ムクロジの実をとりたい! おちろっ! ムクロジの実の不思議さ、おもしろさを知っている子どもたち。
いろいろカルタを楽しもう!
いよいよ3学期が始まりました。冬休み明けの子どもたちは元気いっぱいで、始業式の日には、目が合った瞬間に笑顔でこちらに駆けつけてきました。また、冬休みの思い出もたくさん話してくれました。そのなかに「おばあちゃんと一緒にカルタで遊んだ」という話があり、せっかくなので、クラスでもやってみました!カルタの種類はたくさんあり、「桐朋っ子カルタ」「江戸いろはカルタ」「ぐりとぐらカルタ」「あっちゃんあがつくカルタ」「お化けカルタ」などから、班ごとにやりたいカルタを選んで持っていき、班の中で読み札も読み、取ることもして、楽しみました。最初から細かくルールを設定してやるのではなく、子どもたち同士で話し合いながらルールを決めていくことで、様々な工夫も見られました。日本の伝統的な遊びに触れながら、読む学習にもつながっていくので、とても貴重な時間となりました。
また、一人の子どもが、夏休みと冬休みをかけて、とても素敵なカルタを作ってきました。オリジナルの「とうほうカルタ」です。私も、読み札と取り札を見せてもらいましたが、入学してからこれまでのことがたくさん書かれていて、私たち大人も振り返ることができました。いくつか、みなさんにも紹介します。どの読み札も取り札も力作で、素晴らしいカルタが完成しました!
転編入試験(2019年4月入学)を行います
2019年4月入学の転編入試験は、以下の学年で行います。
① 新2年生 男子2名
② 新5年生 男子1名、女子1名
いずれも、試験日は2月16日(土)です。詳細は、募集要項でご確認ください。募集要項・入学願書は、1月21日(月)~2月7日(木)、学園窓口にて配布します。(無料)
なお、学園受付にて希望カードを記入されると2019年9月入学の転編入試験の有無についてご通知します。
2019年もどうぞよろしくお願いいたします [Ⅱ-181]
子どもたちから年賀状をいただきました。そこにはたくさんの願いが書かれていました。
☆にじゅうとびを10回れんぞくできるようになりたいです。
☆3がっきはなわとびがたのしみです。
☆私は一りん車が好きです。今年も一りん車をがんばりたいです。
☆はじめての八がたけのがっしゅく、楽しみです。
☆終業式の時のムービーがとっても分かりやすかったです。ぼくもはやく六年生になりたいです。
☆私は、新しい自ぜん広場が楽しみです。新しい自ぜん広場には、チャレンジできるジャングルジム(木)があったらいいな~と思います。
☆ぼくは、新しい自ぜん広場にターザンロープを作ってほしいです。ぼくは新しい自ぜん広場を楽しみにしています。
☆ぼくは、自然広場をよりよい自然広場にしたいです。
☆今年はパートナーです。新1年生が楽しく学校に通えるよう、がんばります。
☆今年はパートナー学年です。僕のパートナーの人みたいに頑張っていきたいです。
☆ことしもがっこうでたのしくすごしたいです。
☆今年は亥年なので、いきおいのある年にしたいですね!
まだまだいっぱいありました。ありがとうございました。
年賀状より、その子の「やりたい」気持ち、自発性が伝わってきました。きっと、失敗しても試行錯誤を繰り返し、活き活きと取り組んでいくでしょう。そして、「やった! できた!」を味わうでしょう。そうした取り組みは、周りの人に伝わっていきます。その子その子の「やりたい」を応援していきたいと思います。
「子どもの権利条約がいきわたる園・学校へ」という願い
2019年は、日本が「子どもの権利条約」を批准してから25年目になります。あらためて、その条約の内容を確かめ、保育、教育をすすめていきたいと思います。
初等部では、「一人ひとりの、幸せな子ども時代のために」ということばを使います。そのことばのキーワードに、人権としての〈安心〉〈自信〉〈自由〉をおきたいと考えます。それは、子どもの権利条約の実現をめざしていることに繋がります。
★「安心」…心が安らかでいられること、虐待、暴力、飢え、命の危険がない
★「自信」…自分を信じて肯定することができること。自分のことを価値ある存在として自分自身で認められること
★「自由」…自分の考えで行動できること
そのために、あせらずゆっくりたっぷり自分らしく子ども時代を過ごすことができるように。一人ひとりが感情や意思をもった人間として尊重され、〈なりたい自分〉に向かって可能性が最大限伸ばされるよう応援してもらえるようにしていきたいです。
また、自分に関係あることについては意見を言える、その意見は考慮されなければなりません(意見表明権)。それは、言ったらすべて受け入れてもらえるということではなく、まず相手にわかってもらえるようにちゃんと自分の考え話す努力をする、そして相手の考えを理解しようと努力することです。意見の対立、受け入れる、譲れないなど「折り合い」をつける努力もしながら成長します。大人になったとき自由な社会の中で自分の発言や行動に責任がとれるように、子ども時代から経験し学んで準備していく、その子にとって何が一番いいかが最優先して考えられる(子どもの最善の利益)などが大切にされていくことです。子どもは社会に「参加」する権利主体です。大人の「パートナー(仲間)」であり、それを保障するのは〈子どもと大人の対話〉です。
こうした考えを、初等部では大切にしていきたいと思います。
★条文紹介
「子どもの最善の利益」(3条、18条など)
大人は、子ども自身の意見やことば、行動による意思表示を読み取ること、子どもの身になって考えること、子どもの本音、内面を読み取ることなどを大切にします。
市民的諸権利として、「表現の自由」(13条)、「思想、良心、信教の自由」(14条)、「結社、集会の自由」(15条)、「プライバシーの保護」(16条)、「マスメディアへのアクセス」(17条)などがあります。
積極的な大人社会への参加の保障として、「意見の表明」権(12条)、「休息、余暇、遊び・文化的生活、芸術」への参加の権利(31条)などがあります。
学年みんなで集う音楽の授業
冬休みが終わり、いよいよ3学期が始まります。
始業の準備をしている大人だけの校舎はがらんとしていて、寒さが身に沁みます。元気なみんなと会えるのが楽しみです。
さて、今日は年末に行われた1年生と2年生の「合同音楽」のことを記します。
桐朋小学校では音楽会を隔年で行っています。でも「今年も音楽会やりたかったなあ」「お家の人に歌を聴いてもらいたいよ!」という子どもたちの声を受けて、学年で歌う会を設けることになりました。
2年生は、いつもみんなが大好きで歌っている11曲を選びました。
いつもの授業の延長ということで、いつもと同じように「さあ、はじめよう!」でスタート。
プレイルームの台に並んだ時はやや緊張気味でしたが、一曲目ですっかりいつもの調子を取り戻し、歌い終わるともう「次の曲をうたいたい!」という表情になっていました。次は「のはらうたシリーズ」で、新見徳英さんが作曲した工藤直子さんの詩集「のはらうた」より、5曲を選んで歌いました。二声に分かれて手拍子をしたり、「すたぱた ととらたと」など面白い言葉を歌で表現したり、あっというまに歌い終わりました。
後半は「2学期の歌シリーズ」です。全5曲でしたが、その中の一曲「自動車になったカメの歌」では、コントラバスが登場しました。大きな大きなコントラバス。みんな興味津々ですが、今回はみんなの歌との「共演」なので、チラッと横目に一生懸命歌いました。歌とピアノとコントラバス、楽しい素敵な時間でした。
最後は「おうちの人も一緒にシリーズ」です。2曲をおうちの人と一緒に歌いました。週末「おうちの人に教えて来る」宿題が出されていたおかげか、会場のみんなで楽しく歌うことができました。
前日に行われた1年生の会でも、大好きな歌を身体全体で楽しんでいる様子がありました。
はじめてプレイルームの段に立って学年全体で歌声を合わせましたが、特に緊張しすぎることもなく、ひとつひとつの言葉をとてもていねいに歌っていた1年生。4月から比べると、からだも声もぐんとしっかりしたなあ、と成長を感じました。お家の方も一緒に楽しんでくださっていて、プレイルームにステキな空気がいっぱい広がりました。
さあ、1年後の12月は府中の大きなホールでの音楽会です。その日をみんなで楽しみに迎えたいと思います。 今年もたくさんの素敵な歌と出会えますように。
2学期を振り返る~パートナー活動「やきいもの会」~
11月中旬に、1年生とパートナーの5年生で、やきいもの会をしました。中休み頃から、お手伝いの保護者の方々が、自然ひろばに焼いも用の舟を出したり、係の5年生がまきを運んだりして、準備を進めていきます。5年生が1年生においもの包み方などを教えたり、交代で火の番をしたりと、活躍していました。昼前にやきいもは出来上がり、1年生と5年生は自然ひろばにお弁当を持ち寄って、おいもをいただきながら昼食となりました。出来上がるまでの待ち時間は、1年生と5年生が一緒に遊び、1年生はとても幸せそうでした。
やきいもの会を終え、残ったサツマイモをどうしたいのか話し合ったところ、「持ち帰りたい」と「クラスで何かを作りたい」の2つの意見が…。その後も話し合いを続け、クラスでスイートポテト作りをすることが決定しました。ただ、スイートポテトを作るとなると、ピーラーや包丁などを使うことになるので、保護者の方にもお手伝いをお願いしました。学級で、そして親子で作ったスイートポテトは、とても美味しく、子どもたちにとって貴重な経験になりました。
≪やきいもの会≫
・パートナーさんと おいもを たべて すごい たのしかったです。パートナーさんと いっしょに おにごっこや サッカーを しました。すごい たのしかったです。
・かようびに、パートナーさんと いっしょに やきいもパーティーを しました。1ばん たのしかったのが、おいもが やける あいだ、わたしのパートナーさんや ほかの 5ねんせいと いっしょに こおりおにを したことです。やきいもは とても おいしかったです。けれど、ひに いれるときに おもったいじょうに あつかったから、ドキドキしました。
≪スイートポテト作り≫
・げつようびに スイートポテトが おいしかったので、また つくってもらおうと おもいます。
・まえ りかしつで スイートポテトを たべて、すごい おいしくて たまらなかった。ひとりで つくったより、みんなで じかんを かけて つくってみたら おいしかったから、また いつか、あのスイートポテトを ぜったい たべる もくひょうに してみたい。
待機していた児童の下校について
16時10分、都営新宿線が再開されました。待機していた児童は、保護者の方に連絡し、下校します。
保育で大切にしていることが、その子の未来にどう繋がっていくのか [Ⅱ-180]
今学期も、桐朋幼稚園編『桐の朋(とも)―2018年度2学期まとめ―』を保護者のみなさんに配布しました。「たんぽぽ組2学期『やりたい! いっしょに!』」、「ばら組2学期末を迎えて」、「ゆり組 これまでの歩み」、「3歳・4歳・5歳が共に育つ」、「幼稚園の子どもたちと関わった小学校の先生より」という題名で、3歳の子どもたちの「やりたい」気持ち、「みんなでやるって楽しいなと感じる経験」、「イメージの世界を共有して『ごっこあそび』を楽しめるように」、「『できない』に向き合う」、「『できない、上手にいかない自分も自分なんだ』と本人自身が受け止められる事で、次なる一歩を踏み出そうとするのでは」、「遊びの中で憧れる」、「お兄さん、お姉さんの存在」などを記しました。
共通するのが、3~6歳の仲間とのかかわりで、〇遊びや生活、活動に夢中になって、共に育つこと 〇意見がぶつかり合うことを通して、自分の気持ちをコントロールすること 〇他者に憧れ、自分に自信をもつこと 〇自分が行動主体であるという主体性の感覚を持つこと などを大切にしていることです。
私は、報告を読みながら、「それでは、私たちが保育で大切にしていることが、その子その子の未来にどう繋がっていくのでしょうか」という問いをたててみました。
アメリカ、イギリス、カナダ、ヨーロッパ各国などでは、幼児期から成人になるまでの「長期的な追跡縦断研究」(以下、長期追跡縦断研究)が行われています。データを分析し、幼児期にどのような育ちが成人後に繋がるのか、子どもと保育、保育政策に何が必要か、その効果の大きさなどを明らかにしようとしています。
今後日本でも、東京大学「発達保育実践政策学センター」が中心(12月、センター長の秋田喜代美教授が桐朋小へ来校されました)となり、研究がすすむことを期待しています。
世界の長期追跡縦断研究について、秋田教授の論をみてみましょう。
「5歳までの幼児教育において培われる自己調整の力や自分が行動主体であるという主体性の感覚が、さまざまな教科や領域の内容についての知識を超えて、生涯にわたる人生後半の生活につながる予測因となること、そしてそれは認知的能力の高さとは独立に影響を及ぼすものであることが明らかにされてきている。つまり、対人関係において自己調整能力や情緒的安定性、意欲や自信をもって行動できる力、そしてスムーズにコミュニケーションをとり、人とうまくやっていける力が、いわゆる知的な能力とは別な力として生涯において重要」
「幼児期の教育において、いわゆる知的な学習だけではなく、他者とともにくらし遊ぶことを通して培われる社会的スキルや、同年代との関わりから学ぶ自分の感情を調整する力やストレスをマネジメントする力が、生涯にわたって重要な働きをすることが欧米での長期縦断研究から明らかにされつつある」(『あらゆる学問は保育につながる―発達保育実践政策学の挑戦』秋田喜代美監修、東京大学出版)
秋田教授が述べられた「幼児期の教育」の中身は、私たちが保育で大切にしていることと重なります。幼児期に、「自己調整の力や自分が行動主体であるという主体性の感覚」を育てる、「対人関係において自己調整能力や情緒的安定性、意欲や自信をもって行動できる力、そしてスムーズにコミュニケーションをとり、人とうまくやっていける力」を育てることを大切にしています。その育ちが、「生涯にわたって重要な働きをする」と検証されることを願っています。今後も長期追跡縦断研究に着目し、検討をすすめます。
年齢を重ね、同窓生と話す機会が増えました。桐朋幼稚園の思い出として、「昔とかわらない自然環境ですね。」、「夢中になって遊んだ。楽しかったし、充実していました。」「どうしたいかを自分で考え、決めて行動することが培われたと思います。」、「卒業後も友だちに相談したり、繋がっています。」などと聴きます。共通するのが、自分の人生を主人公として歩んでいることと、その根っこが園で育まれていることです。このような声を集め、分析していくことで、桐朋における長期追跡縦断研究となるかもしれません。