投稿者: tohoblog
「幼児期、どのようなことを大切に過ごしてほしいと考えられますか?」 [Ⅱ-186]
2月、中央線沿線合同相談会に参加しました。ご来場のみなさま、ありがとうございました。ご質問のなかに、
「御校へ入学したいと考えていますが、どんな準備をしたらよいかを教えてください。」「桐朋小学校では、幼児期に、どのようなことを大切に過ごしてほしいと考えられますか。」ということなどがありました。幼児期についての考えをお伝えし、保護者のみなさんといっしょに考え合いたいです。
初等部ブックレット『一人ひとりの、幸せな子ども時代のために』(2018年)に書いたことをご紹介します。
●乳幼児期から、心が育つための基盤としての「安心感・安全感」、「自分が自分であって大丈夫」という自己肯定感、わくわく、どきどきする心を大切に育みたいです。感受性は認識のもとになり、乳幼児期より情緒や感受性を育むことが人間形成でとても大切だと考えます。
「「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。子どもたちが出あう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです」(R・カーソン『センス・オブ・ワンダー』)
●一生使う一番の人間力として、「考えるのが大好き」「身体を使っていろいろとするのが大好き」「人とかかわってやる方がおもしろい」など、そうした感覚はできるだけ早い時期から育てていきたい。
●子どもにとって「身体が感じている感情を発し、大人にその感情が承認され、安心する」ことが発達のプロセスにおいて重要と言われています。(中略)乳幼児期から、安定した関係で、泣くこと(例えば、不快な感情を伝え、おさまるうえでなくことは必要なことです)、抱かれて安心すること、不快な感情も承認され、安心してその子自身で抱えられるようになることを繰り返し経験することが大切だと考えます。
●2、3歳の頃は、ことばの獲得をもとにして自分づくりが芽生え、世界を拡げていきます。自分でやりたい、自分の気持ちが通じないと面白くないなど、自我が大きく膨らみます。この時期にじっくりと対象とかかわり、対話し、満足し、自分自身で区切りをつけていくことを大切にします。例えば、人気のブランコでは「もっと乗りたいから交代しない」から「もっと乗りたいけど交代しよう」という子どもの心が見えてきます。心が動く豊かな経験や子ども自身が選びとる力を育てる「間」を保障するような大人のかかわりを大切にします。
●人間は、生きものの一つであり、自然の一部です。ですから、私たちの生き方には生きものたちから学ぶところがたくさんあります。子ども時代に、自然とかかわり、出あい、感動、不思議さ、思い通りにいかなさ、心地よさ、よろこびなどを経験し、感じることを大切にしていきたいと考えます。(中略)子どもを自然がもつ多様さや広さ、奥深さにゆだねること、すなわち自然の中で子どもたちを育むことで、自然がもたらしてくれる刺激によって覚醒された身体となります。そこから湧き出てくる生命の輝きからはじまる不思議、もっと知りたい、□□のようになりたいと学び育とうとする意欲など、子どもの育つ力が育まれると考えます。
脳科学の知見によれば、健康に身体を育て、身体中で感動し、身体中で自然のものを吸収していく。そして脳にきちんと情報を伝達し、精神の根底をつくり出していく。その過程が大切で、子どもの心がつくられていきます。
●現在、私たちは、環境、食糧、エネルギー、貧困と格差、紛争やテロなど、たくさんの問題に直面しています。専門家が何とかしてくれるだろうということでは、地球が滅びてしまう可能性があります。戦争を防ぎ、地球上の不平等をなくし、自然と共存していけるかという地球全体の課題に取り組まなくてはなりません。こうした課題に取り組むためには、小さいうちから自分の気持ちや考えを大切にし、他者と交わることを楽しいと感じる子どもたちに育っている必要があります。一人ひとりの豊かな可能世、感受性、発想力、デザイン力などをていねいに社会の力で育てていくことが大切です。
コンピュータが普及し、考えたり、身体を使うことが少ない「便利」な生活に変化するなかで、幼児期より感じることを豊かにし、身体を動かす、考える、自然や人と交わることなどが楽しい、好きだと思える子を意識的に育てる必要があります。
●長い目で子どもの成長を考えると、幼児期の暗記学習や訓練について心配な点があります。内田伸子氏(発達心理学、認知心理学)によれば、「指示待ちになってしまう」、「自分で判断しなければならない状況や課題に直面したとき、おとなの顔色を見て指示を待つような行動がみられる」、「学びへの興味を失う。問題解決力が身につかなくなる」などです。内田氏らの調査では、小学校高学年になった時、自分なりのイメージを描いてこたえようとする力が弱く、成績が悪かったという結果も示されています。自分自身で考えたり、判断したり、興味を持って取り組んだりという力を奪う危険性があることを捉えておく必要があります。 ※写真は、6年生を送る会(上)、小学生と桐朋高校卒業生のカルタ大会(下)
ようこそ先輩!
先週金曜日、桐朋女子高校三年生のお姉さんたちが、桐朋小学校五年生に中学校・高校の生活や勉強・部活などについてのお話をしに来てくれました。
「一番楽しいのは体育祭です。みんな熱くなって、本当に思い出に残る体育祭になるよ」「部活動は、先輩や仲間達と一緒に作り上げていくとても貴重な時間」「大きいテストは、年に3回あるよ。小学校の宿題やテストでも一緒だけれど、しっかり課題に向き合ってやっていけば、大丈夫だからね」
子どもたちはワクワクしながら話に聞き入っていました。
桐朋幼稚園 2019年3月21日 転編入園考査のお知らせ
こんにちは、コンチェルト♪
『コンチェルト』とは、パン屋さんの名前です。桐朋小学校はお弁当の補完的措置としておにぎりやパンの注文をすることができます。そのパン屋さんの名前が『Bread Gallery Concerto(コンチェルト)』です。
2年生の3学期。総合の時間の学習で、働く人に焦点を当てて、仕事の中身を学んでいます。普段よく知っているパンはどんな風に作られ、どんな風にお店に並んでいるのか、お仕事の大変さや楽しさ、やりがいなどを学びます。
今回は事前に各クラス、自分たちでパン作りにチャレンジしてから、店長さんに学校にお越しいただきました。
お店の中の様子をビデオで見たり、パン作りの歴史を聞いたり、持ってきてくださったパンの生地を触りながら、生地によって触り心地の違いを感じたり、事前に相談して考えてきた質問をしたり、楽しく気さくお話をしてくれ、あっという間の時間となりました。
お話を聞いた後日、パンを注文した子たちの周りでは「あのオーブンでできたやつだ!」「一番人気のパンだ!」など、学んだことを思い出して会話が弾んでいました。学んだあとに目にするパンは、いつも知っているパンとは少し感覚が違う・・・親近感のような、作り手の顔がみえる感覚が芽生えるところが面白いです。
あるクラスでは学んだことを一枚の新聞にまとめています。読み合いながら振り返り、交流しているところです。
藤井輝明さんとのふれあい [Ⅱ-185]
184号の続きです。6年生、3年生が藤井輝明さんと出あい、ふれあいました。また、「きみたちは顔で差別をしますか?」という藤井さんの話を読ませていただいたことからです。藤井さんとのふれあいで感じたこと、考えたことを、一人ひとりが大切にしていってほしいと思います。
◆藤井さんの話より
・2歳の時に突然顔右半分が膨れ変色した藤井さんを、看護師だったお母さまが連れて全国100以上の総合病院を回ってくださった。
・幼稚園にあがる頃は、地域から「土地の値段が下がるからそういう家庭は出て行ってくれ」と言われ、1年生の時、「顔の膨れは気持ち悪い、そんな子は他にいないから学校に来るな」などと、顔のことで大変いじめられたそうです。2年生で編入した桐朋学園小学校では、「先生や子どもたちがあらかじめ病気のことを勉強しておいてくれたおかげで、温かく受け入れてくれ」ました。
・ご両親は、自治会で「息子は病気ではあるがうつるものではない」と説いてまわられた。お母さまは、手製の紙芝居をつくり、「あなたの顔の膨らみはお母さんのお腹の膨らみもお母さんの一部。あなたのことを誇りに思っている。たとえいじめられからかわれても、あなたをこの世に送り出した母親はその顔の膨らみを誇りに思っている。だから応援してくれる人がこの世に二人いる。辛いことがあったらこの二人、お父さんかお母さんの顔を思い出して」と言ってくださったそうです。
・藤井さんが医学の道にすすもうと考えられたのは、病院の原因のことや、「病気の自分で何ができるかを考えていった時に、そういう苦しんだ体験を同じように味わっている人がいて、その人たちのために何かできるのではないかと思ったから」でした。
◆6年生の感想より
・見た目は痛そうだけど、大丈夫でよかったです。私は最近顔がはれたことがあります。その時は、周りにいたのが親せきだけだったから、優しくしてくれました。けれど、病院に行く時などで、人に見られたくなくて冷やしながら顔を隠して行きました。今は治ってよかったけれど、それが毎日だと思うと少しいやです。なのに藤井さんは、自分の顔が好きだと言っていて、えらいと思いました。顔が普通でも、ポジティブにとらえているところを学びたいなと思いました。
・藤井輝明さんの右目のとなりにある海綿状血管腫は、とてもやわらかかった。触ったら指がとけたり、消えたりするなんていう酷いことを言う人がいたら、絶対に私は許さない。実際にそんなことなかったから、怖い病気じゃないと分かった。
・藤井さんがここまで有名になったのは、この顔があったからだと思います。ぼくだったら、顔に異変があっても、そんな勇気はないと思いました。
・藤井さんの友人の木村さんなどが藤井さんといっしょに行動してくれて、いい友人がいると改めて思いました。藤井さんの顔を最初はジロジロ見てしまっていたけど、実際に触ってみてうつるものでもないし、危険なものでもないと思いました。藤井さんには、桐朋小学校に『ワンダー』(2月22日の桐朋小だより参照)のジャックのような存在の友達がいることをうらやましく感じました。
◆3年生の感想から
・私も失敗したりすると落ちこんじゃったりしてマイナス思考になることがある。藤井さんはそこから明るく立ち直ってすごい。
・辛いいじめにあったところから立ち直った藤井さんはすごい。
・もちろんお母さんお父さんもがんばったけど、一番自分自身もがんばったはず。
「お昼ごはんを食べていたときに、〇〇〇が話してくれたんだけど、『もし、私にコブがあったらどうしていたんだろうな?』って。」(担任から子どもたちへ)。しばらく子どもたちはことばが出なかったそうです。(これからも学び、考え合っていきましょう。)
184号で、小柳先生のことばを紹介しました。「自分と違う人を違うと言って嫌ったり遠ざけたりしない。ハンディキャップを含めてお互いの個性を認め合う。これこそ、他者、個性の尊重であり、21世紀の社会がめざすべき平和な社会の姿であろう。」そうした社会をつくり出していきたいです。
『ワンダー』ブッククラブ
6年生の国語の授業では『ワンダー』(ほるぷ出版)のブッククラブを行いました。主人公や登場人物たちの心の動きに自分自身を重ねながら、それぞれの思いを語り合いました。一人ひとりの読み方や感じ方の違いを楽しみながら、作品を味わう時間となりました。
入学関連情報のページ(⇩)を更新しました。
2020年度の学校説明会と学校体験会の日程を掲載しました。詳しい時間や内容については決まり次第随時更新いたします。
中央線沿線合同相談会へのご来校ありがとうございました。
2月17日(日)10:00~15:00 お忙しい中、また数ある学校の中から本校にも足を運んでくださりありがとうございました。ご好評につき学校案内が配布予定数を超えてしまい、お越しいただいたすべての方のお手元に届けられず申し訳ありませんでした。次回本校で行う学校説明会では十分な数を用意しておきます。
相談会で少しでも本校に興味を持ってくださった皆様のご来校をお待ちしています。
藤井輝明さんと小柳敏志先生への感謝 [Ⅱ-184]
先日、藤井輝明さんが来校してくださり、6年生の授業に向けての打ち合わせをしました。私は、藤井さんの著作を題材に、授業を試みたことが何度もあり、いつか藤井さんに来ていただきたいと願ってきました。
藤井さんは、桐朋高校30期卒業生です。2歳の時に「血管腫」という病気になり、顔が大きく腫れあがってしまいました。外に出ると、行きかう人たちの突き刺すような視線や「バケモノ」などという心ない悪口も浴び続けたそうです。転校先の桐朋学園小学校(国立)では温かく迎えられ、桐朋中学高校で学び、自信をつけていったそうです。現在まで、桐朋の仲間と繋がっている喜びを話してくださいました。
1月末に亡くなられた前理事長の小柳敏志先生が、桐朋教育と藤井さんのことを次のように話されたことがありました。
「明日を生きる若者に関わり、教育を行っている者として、まず何よりも、個の尊重すなわち様々な個性と特徴をもったそれぞれが一人ひとりの人間として尊重され、大切にされること。それが何より大事であるという考えを一人ひとりの児童、生徒、学生にしっかり持ってもらいたい。
桐朋の卒業生で医学博士の藤井輝明さんという方がいる。何回も学校に来ていただいているが、その際、藤井さんは、子どもたちに次のような内容の話をされた。
自分と違う人を違うと言って嫌ったり遠ざけたりしない。ハンディキャップを含めてお互いの個性を認め合う。これこそ、他者、個性の尊重であり、21世紀の社会がめざすべき平和な社会の姿であろう。
目の前に苦しんだり、つらい思いをしている人がいる時に、そのことを自分に関係ないと思わずに、自分に何かできないかと問い、できることをする。自分もいつか何かのことで苦しんだりする。その時にこの経験がプラスになってかえってくる。一人で悩まないで仲間がいる、一人じゃないんだという気持ちが生まれる。どんなことでもたった一人の行動からはじまる。そのことが人の為になることであれば、大きな方向性が間違っていないのであれば、勇気を出して一歩を踏み出そう。やがて多くの人の共感を得て広がっていくことだろう。
去年今年貫く棒の如きもの(高浜虚子)
ハンディキャップを含めお互いの個性を認め、尊重され、目の前に苦しんだり、つらい人がいる時は、自分に何ができるかを問い、できることをする。そして他の人の協力を働きかけていく―― こうした積極的な個の尊重こそが、桐朋学園の教育にあたっては、去年今年貫く棒の如きものとして存在するのではないか。いやそうであらねばならないと思う。」
小柳先生からは、小学校改革、幼稚園3年保育の実現など、たくさんの励ましをいただきました。また、社会情勢と教育の課題、そして桐朋教育で大切にすることなどを話してくださり、学ばせていただきました。小柳先生がお亡くなりになり、たいへん寂しい。先生が大切にされたことを実践の課題として引き継ぎ、桐朋学園の教育を少しでも発展させたいと思う。
写真は、20分休みの子どもたち、新しくなるしぜんひろばの様子、美術展の様子。
みんなで上手になっていくぞ!
冬の体育はどの学年も器械運動があります。桐朋小学校の体育では、鉄棒運動、マット運動、跳び箱運動の3つの運動を横断的に学び、それぞれの運動で似た運動や動きを組み合わせて行うことで、よりよく学習することができるように進めています。
2年生では現在、こうもりふりおりに挑戦しています。1年生の時から、鉄棒での逆さ感覚を養ってきました。逆さ姿勢でのじゃんけんや、逆さにぶら下がった状態で少し前後にスウィングを加えてみたりして、自分の身体の動きを自分や友だちとたしかめながら学んできました。こうもりふりは、言わば逆さブランコ。スウィングが大きくなると、風を感じることができるようになります。
跳び箱運動では、横跳び越しに挑戦しています。着地の向きを前方(進行方向)にするのと、後方(跳び箱の方を向く)にするのでは、空中での姿勢、跳び箱に手をついた直後の視線の向きに違いがあります。中には踏切の強さの違いに気が付き、意識する子もいます。こうして、運動をしながら試行錯誤し、友だちと共有することで学びが広がります。
2年生になると、運動の先取りがより可能なってきます。こうするとこうなる。こうするためにこうする・・・といった「こうする」の部分をあらかじめ意図して動きに取り入れることです。
個人差はありますが、上手い下手ではなく、友だち同士で声をかけ合い、一人ひとりの課題に寄り添いながら、学び合いが進んでいきます。「こうするといいよ。」「まずは、こうやってみよう。」「もっとおしりを上げられそう。」「多分いい感じ。」←「いや、手がピーンってしていなかったと思う。」
運動中は、自分の動きを可視できないので、イメージでしかありません。このイメージを自ら高めて運動を向上させていくことも大事な力ですが、ここでも友だちの客観視からのヒントがかなり有効です。(教員が撮影した動画をもとに一緒に学ぶことも取り入れています。)聞いたヒントを頼りにまたやってみて共有する。やってみて確かめ合う。一緒に学んで少しずつ上達していくことが見えやすいこともまた器械運動の特徴です。
「うれしい!」「悔しい!」「来週こそ!」「もっとやりたかった!」 そんな、学び合う姿に学習の魅力があると信じています。